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9月15日、歴史的カード放映! NHK杯2回戦・藤井聡太七冠-西山朋佳女流三冠

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月15日。第74回NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦・藤井聡太七冠-西山朋佳女流三冠戦が放映されます。

 棋士の頂点に立つ藤井七冠と、女流タイトルホルダー西山女流三冠の顔合わせは、歴史的なビッグカードと言えるでしょう。

女性プレイヤーの目覚ましいレベルアップ

 NHK杯では1993年度から女流棋士が出場してきました。(近年では奨励会在籍中に女流タイトルを保持し、出場した女性も含まれます)

 過去の女性出場の中で男性の棋士のタイトルホルダーと対戦したことがあるのは、2004年度の中井広恵女流二冠(現女流六段)だけです。中井女流二冠はこのとき、佐藤康光棋聖を相手に勝勢の局面まで持ち込みながら、惜しくも逆転負けを喫しました。

 その前の2003年度、中井女流三冠(当時)は畠山鎮六段、そして当時A級に在籍していた青野照市九段に勝利。3回戦でレジェンド中原誠永世十段と対戦しています。

歴史的な顔合わせ

 西山女流三冠は今期NHK杯1回戦で元タイトルホルダー木村一基九段と対戦。見事に勝利をあげ、2回戦へと勝ち上がりました。

西山「現在、序列1位の先生と指せるということで、いい内容の将棋を求めてがんばりたいなと思います」

 藤井七冠は前々期、本棋戦で初優勝。前期は2年連続決勝で佐々木勇気八段と対戦し、今度は敗れて準優勝となりました。

 今期も2回戦からの登場となります。

 藤井七冠がはまだ七段だった2018年、棋聖戦一次予選で里見香奈女流四冠(現福間女流五冠)と対戦したことがありました。

 藤井七冠が棋士になってから、公式戦で女流棋士と対戦するのは、このときの里見戦以来となります。

西山女流三冠、棋士編入試験で幸先よく1勝

 西山女流三冠はNHK杯1回戦の木村九段戦勝利なども含めて、一般公式戦で13勝7敗の好成績をあげ、棋士編入試験の受験資格を得ました。

 試験の五番勝負は先日9月10日におこなわれ、高橋佑二郎四段を相手に132手で大熱戦を制し、大きな1勝をあげています。

 西山女流三冠はあと2勝で女性として初めて棋士の資格を得ます。

2016年三段リーグ、藤井三段-西山三段

 藤井現七冠と西山現女流三冠は同じ時期に奨励会に在籍していました。

 両者は2016年度前期三段リーグ最終戦で対戦。藤井三段(12勝5敗)が西山三段(10勝7敗)に勝てば四段昇段を決めるという大一番でした。

 西山三段が後手で中飛車に振ったのに対して、藤井三段は中段に二枚の銀を押し上げます。西山三段が穴熊に組もうとしたところで開戦し、藤井三段がリード。終盤では西山三段も藤井玉に迫りますが、最後は藤井三段が西山玉を即詰みに討ち取り、96手で勝利を収めました。

 この結果、藤井三段は13勝5敗で1位通過を決めました。

実は、それまで藤井先生とは私の2勝0敗なんです。かなり前、関西奨励会のときに香落ちと平手で指しています。だから、周りに「相性がいいから」と豪語していたんですけど……。最終戦はボロ負けになってしまって。
出典:小島渉「西山朋佳女王インタビュー」#2「文春オンライン」2019/10/31

 藤井三段は2016年10月1日付で四段に昇段。このとき14歳2か月で、史上最年少での棋士昇格となりました。その後の信じられないような活躍は周知の通りです。

 西山三段はその後の三段リーグで次点を取るなど、四段昇段まであと一歩というところまでいきました。

 しかし、奨励会在籍時には、棋士昇格、四段昇段はかないませんでした。

 時は流れ、両者は棋士と女流棋士、それぞれの立場でタイトルホルダーとなり、NHK杯という注目される大きな舞台で、再び対局することになりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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