なぜレアルは好調を維持しているのか?ベリンガムの爆発とアンチェロッティの梃入れ。
現有戦力で、十分に戦えている。
レアル・マドリーが好調をキープしている。チャンピオンズリーグではグループステージ全勝でベスト16に進出。リーガエスパニョーラにおいては、ジローナとタイトルレースを繰り広げている。
■冬の補強はゼロ
マドリーは今冬の移籍市場で補強に動かなかった。
今季のマドリーは負傷者が続出している。シーズン序盤にGKティボ・クルトワ、エデル・ミリトンがひざを痛め、昨年12月にはダビド・アラバが同様に長期離脱を強いられた。
1月のマーケットで補強をーー。誰もが、そう思った。だがカルロ・アンチェロッティ監督はアントニオ・リュディガー、ナチョ・フェルナンデス、オウレリアン・チュアメニをローテーションで回して困難な状況を乗り越えようとしている。
マドリーは冬のマーケットで動かなかった。ただ、それは初めてのことではない。
マドリーが冬、最後に補強したのは2019年1月だ。ブライム・ディアスをマンチェスター・シティから獲得。さらに遡れば、2015年1月にマルティン・ウーデゴールを獲得している。だがいずれも即戦力級の選手ではなく、未来への投資を意味する補強だった。
■機能するチーム
マドリーが補強に動かなかったのには理由がある。当然、チームが機能しているためだ。
アンチェロッティ監督は今季に入り【4−3−3】から【4−4−2】へと布陣変更を行った。中盤ダイヤモンド型のシステムで、トップ下に新加入のジュード・ベリンガムを嵌めた。
そして、その采配は的中した。
ベリンガムは、今季、公式戦27試合で18得点7アシストを記録している。これまでダブルボランチの一角あるいはインサイドハーフでプレーしてきたイングランド代表MFだが、マドリーで得点能力を開花させている。
■守備の負担と課題
一方で、アンチェロッティ監督は課題を抱えてもいた。「ディフェンス面では、ベストのシステムではない。このチームは、中盤がダイヤモンドになる形で、守備をするのに慣れていない」とはアンチェロッティ監督の弁だ。
そこで、アンチェロッティ監督は梃入れを行った。ベリンガムを左MFに回して、安定感を得られるように試みたのだ。
マドリーは今季、ここまでリーガ20試合で13失点を喫している。昨季(38試合26失点)と比べ、守備面での改善が見られる。守護神がクルトワではなくケパ・アリサバラガとアンドリュー・ルニンだという事実から顧みても、その変化は明らかだろう。
■ヴィニシウスの成長
システムと戦術の変更で、恩恵を受けたのはベリンガムだけではない。
2トップの一角に入り、躍動しているのがヴィニシウス・ジュニオールだ。スーペル・コパ決勝のバルセロナ戦では、ハットトリックで勝利に貢献。個の能力を見せ付けた。
「ヴィニシウスには、常にサイドに出るのではなく、中央の部分でスペースを見つけさせている。それがゴールに繋がるからだ」と語るのはアンチェロッティ監督だ。
今季、負傷に苦しめられてきたヴィニシウスだが、 ここまで20試合で11得点をマークしている。アンチェロッティ監督の“実験”は効果をあげていると言える。
また、中盤では、トニ・クロースが存在感を発揮している。シーズン序盤、若い世代の突き上げで出場機会を減らしていたクロースだが、徐々にパフォーマンスを上げてきている。
クロースは今季、公式戦29試合に出場している。気付けば、ルカ・モドリッチ(25試合)、チュアメニ(23試合)、エドゥアルド・カマヴィンガ(24試合)、ベリンガム(27試合)より試合に出ている。
前述のように、アンチェロッティ監督はシーズン半ばからベリンガムを左MFに配置している。その際、ダブルボランチシステムを採用し、クロースとフェデリコ・バルベルデをそこに据えた。
ハードワーカーのバルベルデを横に、クロースは配球に専心。左落ちする得意な形で、ビルドアップに参加して、後方からの球出しを助ける。左サイドでフェルラン・メンディ、ベリンガムとスムーズな連携を見せ、相手のプレスの的を絞り難くしている。
先日の『デロイト・フットボール・マネー・リーグ』の発表によれば、マドリーは2022−23シーズン、欧州で“最も稼いだ”クラブだ。レアル・マドリー(8億3100万ユーロ/約1245億円)、マンチェスター・シティ(8億2600万ユーロ/約1240億円) 、パリ・サンジェルマン(8億200万ユーロ/約1200億円)がトップ3である。
そういったクラブでありながら、冬の補強はゼロだった。守備陣に負傷者が相次いだが、パニック・バイに陥らない。それが、逆に、マドリーの強さを表している気がするのである。