『鬼滅の刃』の煉獄さんはどれだけ速いのか? 切り裂き魔に「お前は遅い!」と言い放った身体能力を考察!
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。
10月10日から始まった「テレビアニメ『鬼滅の刃』無限列車編」が、期待どおりに面白い!
第2話では、炭治郎、善逸、伊之助と煉獄さんが、無限列車で眠らされてしまった。この後、いったいどうなるのか!? ……って、お話の流れはもう知ってるから、切なさが増すばかりですなあ。
そこで本稿では、第1話「炎柱・煉獄杏寿郎」で描かれた煉獄さんのすごさを考察してみたい。
この話は、煉獄さんが無限列車に乗るまでを描いた完全オリジナル編で、優しさと頼もしさがじんわり伝わってくる名編だった。
そのうえ、マンガや劇場版アニメで、煉獄さんが大量の弁当を食べていた理由まで明らかにされて、筆者はもうビックリ。車中で、マンガでは11個、劇場アニメでは13個の弁当を食べていて、それは煉獄さんの豪快さを示す誇張表現だと思っていたのだが、ちゃんとワケがあったのだなあ。
煉獄さんが食べていたのは「上等牛鍋辨當」で、お値段は36銭。三菱UFJ信託銀行の「お金の、育て方」というサイトによると「大正時代の1円は現在の4千円程度」(2020年10月7日の記事/監修:吉野裕一)ということなので、すると36銭とは1440円。筆者お気に入りの「深川めし」1000円より高い。それを13個買うと1万8720円。なかなかの金額ですな。
筆者がさらに気になるのは摂取カロリーで、ボリューム感などから、吉野家で販売されていた「牛すき鍋膳」と同じと考えると、1個あたり982キロカロリー。13個だと1万2766キロカロリーとなって、それは成人男性5日分の摂取カロリーと同じなんですけど!
◆青い鬼もすごい!
このままだと、延々と弁当についての考察を続けてしまいそうなので、本題に入りましょう。
第1話に登場したのは「切り裂き魔」と呼ばれ、かなりのスピードで動き回る青い鬼だった。その速い動きで整備工場の工員を人質に取ったり、お弁当屋の少女を襲おうとしたり……と卑劣なことをする。
こいつは、整備工場から線路沿いに走って、少女のいる駅を探し当てた。
大正時代の代表的な蒸気機関車8620形は、時速95kmというオドロキの最高速度を誇るが、鬼の走りはそれよりもだいぶ速い印象だ。
そして、まるで通過する特急列車のようなスピードで駅のホームを駆け抜けた……と思いきや、弁当の匂いに気づいて、その駅で足を止めた。
この行為はちょっとすごい。仮に鬼の体重が80kgで、こいつが時速100kmで走っていたとして、制動距離1mで停止したと仮定するなら、鬼の足は6.3tのブレーキ力を発揮し、体にも6.3tの衝撃がかかったはずなのだ。
それで平然としているのだから、卑劣なヤツながら大した運動能力といわねばなるまい。
煉獄さんは、ケガをした工員の応急手当を済ませると、この鬼を追った。
初めは普通に走っていたが、「全集中の呼吸」と唱えると、スピードが上がっていく。足音も「タッタッタッタッ」から「タタタタタタ!」とどんどん速くなる。やがてオレンジ色の炎の渦を残して、煉獄さんの姿は見えなくなった。
これ、どれくらいのスピードだったのだろうか?
たとえばウサイン・ボルトの場合、世界記録を出したレースで、自分の身長の1.24倍の歩幅で走った。この比率が同じなら、身長177cmの煉獄さんの歩幅は2.2mとなる。
「タタタタ」のペースが1秒に5回なら時速40km、10回なら時速79km、15回なら時速119kmだが、そのうち足音は筆者にはもうカウントできないほど速くなった。
◆煉獄さんのスピードは?
そこで、別のシーンから、煉獄さんの走る速度を求めてみよう。
第1話に、煉獄さんが蒸気機関車から飛び降りる場面がある。汽車に乗っていた煉獄さんは、目指す無限列車が近くの工場で整備中と知らされると「ならば、俺もここで降りるとしよう!」と言うなり、走行中の列車の最後尾から飛び降りたのだ。
周囲の状況から、列車は時速60kmほどで走っていたとみられ、普通なら時速60kmで地面に叩きつけられるところである。
もちろん、煉獄さんはそんなことにはならず、弁当多数を両手に持ったまま高々と跳躍すると、6.2秒も宙を舞い、ふわりと着地した。
着地点は、筆者の目測だが、乗っていた汽車の線路からは100mほども離れているようだ。ジャンプした方向は、これも推測だが、後方30度くらいだろうか。
話を単純化するために、離陸点と着地点の高度を同じと仮定すれば、煉獄さんは、列車から見て仰角59度、時速128kmで跳び出したことになる。そして3.1秒後に、なんと高度47mまで達した後、その3.1秒後に着地したはずだ。
汽車が時速60kmで走行中だったことを加味して計算すると、着地の速度は時速127km。走る汽車から絶妙な角度で後方へ跳んだために、わずかながら着地速度を落とすことに成功している。
さて、ここから煉獄さんの走るスピードが推測できる。
筆者は、高校生の垂直跳びの平均記録から離陸速度を計算したことがあり、その際「離陸速度は、50m走の平均のほぼ半分」という結果を得た。
つまり、時速128kmでジャンプできる人は、その倍の速度で走れる。ってことは、煉獄さんは少なくとも時速256kmで走れるのだ! なんと新幹線なみ!
蒸気機関車が普及していった時代に、煉獄さんは新幹線レベルの速度で走った。快速が自慢の鬼に「お前は遅い!」と叱りつけていたが、この炎柱には確かにそう言える資格がある。なんとすごい人であろうか。