オートバイのあれこれ『カワサキ最速の系譜の始まり・マッハⅢ』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今朝は『カワサキ最速の系譜の始まり・マッハⅢ』をテーマにお話ししようと思います。
ニンジャH2R、ZZR1100、GPz900R…。
カワサキは、いつの時代も世界最速を目指したオートバイを生み出してきました。
今回は、そんな“最速のカワサキ”の始まりとも言える存在『500SSマッハⅢ』をご紹介しましょう。
マッハⅢは、1969年(昭和44年)にデビューしたオートバイになります。
60年代にアメリカで流行していたドラッグレースからインスピレーションを受けたカワサキは、アメリカ人好みの“直線でカッ飛ぶバイク”としてマッハⅢを開発。
カワサキは新開発の2ストローク3気筒エンジンを投入し、目標としていた〈60ps〉〈トップスピード120mph(約200km/h)〉〈ゼロヨン加速12秒台〉を全て達成、その圧倒的なパフォーマンスを以てして、マッハⅢは見事世界最速のオートバイとなりました。
しかし、直線の速さばかりを追ってしまった結果、マッハⅢは見過ごせないウィークポイントも孕むようになります。
まずは、車体の重量バランス。
カワサキは、真ん中のシリンダーが冷えにくいという3気筒エンジンの課題をクリアするため、マッハⅢのエンジン搭載位置を後ろへ下げました(走行風が当たるのを阻害する前輪から、エンジンをなるべく離すという考え方)。
すると、重量物が車体の後方に偏ってフロント周りが軽いので、マッハⅢは何気なくアクセルを開けただけで簡単にウイリーするようになってしまったのです。
また、フレームの強度やブレーキ性能がエンジンパワーに見合っていなかったことも、マッハⅢの欠点として挙げられます。
開発陣はエンジンの性能追求に没頭してしまい、その他の部分にまで手が回らなかったのかもしれません。
結果的にマッハⅢはその速さこそ認められたものの、「曲がらない」「止まらない」「まっすぐ走らない」と評されてしまうことになってしまいました。
しかしこの極端なキャラクターが、後々マッハⅢを特別な存在たらしめることになります。
「あの“じゃじゃ馬”を乗りこなしたい!」
一部のバイクマニアにとって、憧れの的となったのです。
一筋縄では乗れない(乗れなさそう)というイメージが逆にバイクファンたちの関心を集め、マッハⅢはいつしか後世に語り継がれるカワサキの名車となったのでした。