木村花さんの悲報、SNS書き込みが「凶器」か--ネットいじめの社会問題--
■木村花さん悲報、SNS書き込みが“凶器”に
一人の若い女性が命を失いました。
■世界もネットいじめと問題視
とても痛ましい出来事ですが、この問題は木村花さん一人の問題ではありません。世界も、日本で起きた悲劇に注目しています。
ネットいじめ、ネット上の誹謗中傷で悩んでいる人が、世界中にたくさんいます。
■有名人へのネット上の悪口は自由か:ネットコミュニケーションの特徴
有名人が、活動に関して批判されるのは当然です。政治家は政策に関して批判されます。プロ選手も、怠慢プレーで喝(かつ)を入れられることはあります。小説家も映画監督も、作品が批評されるのは当然です。
有名人がプライバシーを売り物にしているなら、報道されたくないプライバシーが報道されるのも仕方がありません。結婚式をマスコミに公開して人気を集めようとするなら、離婚が大きく報道されるのも、我慢しなくてはなりません。
「有名税」などとも言われますが、世の中に名前を出すのは、リスクが伴います。
けれども、有名人に対してなら、何をしても良いわけではありません。
ネット上の匿名の誹謗中傷に関して、以下は全て言い訳になりません。
「表現の自由」
「ネットだから良い」
「相手が有名人なら良い」
「みんながしているから良い」。
私的なおしゃべりなら、構いません。居酒屋のおしゃべりで何を話しても、社会的問題にはならないでしょう。しかし、ネットは公の場です。個人の発信でも、本質的にはテレビや新聞と変わりません。責任が伴います。
それは自動車の運転と同じです。18歳の免許取立ての青年が、小さな中古車に乗っていたとしても、事故を起こしたときの責任は、高級車に乗っているベテランドライバーと同じです。
ネットの発言は、世界に開かれた公の場での発言であり、可能性としては、世界の人が見ますし、本人が見ることもあります。
ところが、ネットは公の場なのに、まるでプライベートの場のような気がしてしまうのが、ネットコミュケーションの特徴です。
リアルな場で、実名と所属をきちんと出し、本人の目の前や、テレビに出演してでも言えることでなければ、ネットでも言ってはいけません。
お笑い芸人が、テレビで熱湯風呂に逢っているからといって、街で出会った時に熱湯をかけてはいけません。テレビで、「はげ!」と相方に言われているからと言って、あなたが街中で言ってはいけません。
芸人が、ステージ上でバナナの皮で滑って転べば、大笑いして結構です。しかし、駅の階段でその人が転んだ時には、笑わずに、手を差し伸べて助けます。
悪役が正義の味方にパンチされるのは、リンクや物語の中だけです。
■人間関係とネットコミュニケーションの基本:どんなに有名な人にも、どんな悪人にも
たとえばヤフーも、表現の自由を守りつつ、表現の自由は無制限ではないと語っています。
ヤフーニュースのコメントポリシーで禁じられている投稿内容の一つが、次のような「公序良俗に反する内容」や「悪質な批判」です。
公序良俗に反する内容としては、「特定の個人(公人を含みます)に対する人権侵害、誹謗・中傷に該当しうるコメント」が禁止です。
悪質な批判としては、「被害者・被害者の親族、加害者・加害者の親族および関係者などに対する人権侵害、誹謗・中傷に該当しうるコメント」「根拠のない批判や全否定的なコメント」は、禁止です。
政治家のような公人に対してですら、正当な批判はOKですが、人権侵害や誹謗中傷は公序良俗に反し、禁止です。事件の加害者に対してですら、同様です。
これは、ヤフーがネット上の表現を制限してるわけではありません。ヤフーの外で、自分のサイトで自分の責任で発言するなら、ヤフーのコメントポリシーに縛られることはありません。
しかし、ネット上でも、友人相手でも有名人に対してでも、どんなに悪い人だとあなたが思う相手に対しても、公の場で言って良いことと悪いことがあります。
ヤフーのコメントポリシーは、これがネットの基本であり、人間関係の基本です。
マスメディアの発信は、二重三重のチェックを受けています。そして場合によっては、自分たちが訴えられることを覚悟の上で、情報発信しています。
以前なら、一般の人が公に情報発信することはできませんでした。しかし今や、私たちはネットという強力なツールを手に入れました。でも、私たちはみんなネットの使い方に慣れていません。
自動車の運転の仕方はわかり、誰でも運転が許可され、高速道路もできた。でも、安全教育を受けておらず、事故を起こした際の責任も覚悟もない。そんな人たちがみんなで車の運転をしたら、悲劇が起こるのも当然です。
ネットも自動車も、便利な道具で、人の命も救います。けれども、一歩間違えれば、恐ろしい凶器になるのも、同じでしょう。
大きな事件があるたびに、規制の話題も上がります。しかし問題解決に必要なのは、長い目で見た教育です。交通事故も、交通安全教育によって激減してきました。インタネットの未来を左右するのは、私たちネットユーザーです。
ワシントンポスト紙は、語っています。
「木村さんは、実在の人物で、物語上の角の人物ではないことに気づいてほしい」。
追記:今度は、山里亮太さんなど番組関係者への誹謗中傷が始まりました。5/30