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山本由伸を逃したジャイアンツは、平均球速100マイルのリリーフ投手を手に入れ、先発投手として起用

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョーダン・ヒックス Aug 28, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サンフランシスコ・ジャイアンツは、山本由伸を手に入れることができなかった。山本は、ジャイアンツと同じナ・リーグ西地区のロサンゼルス・ドジャースと契約を交わした。

 また、逃したのか、手を引いたのか、手を出さなかったのかは不明ながら、今永昇太がシカゴ・カブスに入団する直前に、MLB.comのマーク・フェインサンドは、ジャイアンツが最有力と報じていた。

 年明け早々、ジャイアンツは、ミッチ・ハニガーアンソニー・デスクラファーニの2人と交換に、シアトル・マリナーズからロビー・レイを獲得した。このトレードについては、こちらで書いた。

「3年前のサイ・ヤング賞投手を放出し、3年前に39本塁打の外野手と防御率3.17の先発投手を獲得する」

 レイは、2021年のサイ・ヤング賞投手だ。けれども、昨年5月にトミー・ジョン手術を受けた。復帰は、夏頃になるだろう。一方、ハニガーは外野手だが、デスクラファーニは2023年の前半に先発17登板で防御率4.44を記録した。

 2024年の前半に限ると、デスクラファーニがいなくなって、レイは欠場する見込みなので、先発投手の人数はマイナスとなる。

 ジャイアンツは、FA市場からリリーフ投手を迎え入れ、先発投手に転向させるようだ。1月12日、ESPNのジェフ・パッサンは、ジョーダン・ヒックスと4年4400万ドルの契約で合意、とXで報じた。そこには、27歳のヒックスはキャリアの大半をブルペンで過ごしてきたが、先発投手として投げることを期待されている、と記してある。

 通算212登板のうち、ヒックスが先発マウンドに上がったのは、2022年の8登板に過ぎない。2023年は、セントルイス・カーディナルスとトロント・ブルージェイズで投げ、65登板の65.2イニングで奪三振率11.10と与四球率4.39、防御率3.29、12セーブと13ホールドを記録した。

 スタットキャストによると、2023年のシンカーと4シームは、どちらの平均球速も100マイルを超えていた。100.1マイルと100.3マイルだ。シンカーの最速は、104.3マイルに達した。投球の割合は、シンカーが64.4%、スウィーパーが19.8%、4シームが10.7%。あとの約5%は、スライダーとチェンジアップだ。

 先発投手として投げることにより、速球の平均球速は下がるだろう。短距離走と長距離走のようなものだ。それでも、ハードボーラーであることは変わらないはず。打者をねじ伏せる可能性はある。

 前回の先発転向はうまくいかず、先発7登板で防御率5.84を記録したところで前腕を痛め、1ヵ月後に復帰してからはリリーフ投手として――最後の先発1登板はオープナーとして――投げた。だが、恋も2度目なら…ではないが、2度目の転向も失敗するとは限らない。

 ヒックスが加わっても、ジャイアンツのローテーションは万全ではない。現時点では、ローガン・ウェブロス・ストリップリング、ヒックス、カイル・ハリソンキートン・ウィンの5人が有力だが、彼らのうち、2023年に先発15登板以上はウェブだけだ。

 ストリップリングは、スウィングマンとして、先発11登板とリリーフ11登板の89.0イニングで防御率5.36。ハリソンとウィンは、シーズン途中にメジャーデビューした。2人合わせても、先発12登板とリリーフ4登板で77.0イニングだ。151.1イニングで防御率3.87のアレックス・カッブは、10月に腰の手術を受け、少なくとも1ヵ月は出遅れる。

 2023年のサイ・ヤング賞投手、ブレイク・スネル――2018年にも受賞――を手に入れる可能性も、まだありそうだ。デス・スターが完成あるいは完成間近のドジャースに太刀打ちするには、それくらいの補強が必要な気もする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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