蓄電池電車「ACCUM」の走るJR烏山線 10月22日まで開業100周年ヘッドマークを付け運行中
宇都宮ライトレールが開業し注目を集めている栃木県宇都宮市。そんな宇都宮市近郊の宝積寺駅と烏山駅を結ぶJR烏山線が2023年4月15日に開業100周年を迎えたことを記念して、烏山線の列車には10月22日まで記念ヘッドマークが取り付けられている。記念ヘッドマークは全部で8種類あるといい、車両によって異なるヘッドマークが掲出されている。
烏山線を走る蓄電池電車「ACCUM」
烏山線は、日本初となる蓄電池電車EV-E301系「ACCUM」が運行されている路線として鉄道ファンには有名な路線だ。「ACCUM」は、JRグループ初の蓄電池電車として老朽化したキハ40系気動車の置き換えを目的として開発された車両で、2014年3月のダイヤ改正から運転を開始した。
主な運転区間は宇都宮―宝積寺―烏山間。電化されている東北本線の宇都宮―宝積寺間はパンタグラフによって架線から集電して走行。非電化区間となる烏山線の宝積寺―烏山間は車両に搭載したリチウムイオン電池から給電を受け走行し、終点の烏山駅では専用の充電設備によって急速充電が行なわれる。
1800年代後半から鉄道建設が計画されていた烏山線
烏山線の開業は、今から100年前の1923年4月15日だ。烏山への鉄道建設計画は1890年代後半から存在したが、いったんは頓挫。その後、1911年に東北本線と常磐線方面を結ぶ連絡路線として再度計画され、1923年に烏山線として宝積寺―烏山間が開業し現在に至っている。
宇都宮ー烏山間で「ACCUM」に乗車
宇都宮14:38発 烏山行
筆者が烏山線に乗車したのは、宇都宮ライトレールの開業前日の2023年8月25日。この日の宇都宮は、開業を翌日に控えたライトレールの関係者試乗会を行っており、ライトレールの乗り場がある宇都宮駅東口に行くと、すでに関係者を乗せた試乗会電車が走行していた。せっかく宇都宮に来たことから、午後からは蓄電池電車の走る烏山線に乗ってみようと思い烏山に行くことに決めた。
宇都宮駅を14時34分に発車する烏山行の普通列車は、烏山駅までの32.1kmを48分で結ぶ。途中、宇都宮から宝積寺までの11.7kmはパンタグラフを上げ、架線から給電を受けながら東北本線を走行。宝積寺駅に到着するとパンタグラフを降ろし蓄電池駆動で非電化路線の烏山線に入り、烏山駅までの20.4kmを33分かけて走行する。
車内はオールロングシート仕様であるが、座席がほぼ埋まる程度の乗車があり、平日日中にもかかわらず利用者は多い印象だ。
なお、宝積寺ー烏山間の烏山線内はSuicaなどのICカード乗車券が使えないことから、乗車の際にはあらかじめ紙の切符を購入しておくことが必要だ。万が一、ICカード乗車券で乗り通してしまった際には、降車時に現金での精算が必要となる。
列車は、東北本線と烏山線の分岐駅である宝積寺駅を発車すると、東京方面からやってきた東北本線の下り貨物列車に追い抜かれながら東北本線から分岐。右方向に曲がりながら下り勾配の切り通しの中を進んでいく。
切り通しを抜けると車窓がひらけ、線路の両脇には水田が広がった。宝積寺駅から水田地帯まではそれなりの高低差があるようで、宝積寺駅は丘の上に立地していることを感じさせた。
烏山線内の最高速度は65km/hに抑えられていることから、列車の速度は一気に落ちのどかな風景の中をゆっくりと烏山に向けて進んでいく。烏山線は全区間が単線路線であるが、途中の大金駅のみ列車交換が可能となっていた。大金駅到着の際に烏山方面からの列車交換を期待したが、この時間帯は交換列車はなく大金駅をそのまま発車した。
烏山駅到着は15時22分。列車は駅に到着すると充電ゾーンですぐにパンタグラフを上げて急速充電を開始した。烏山駅の折り返し発車時刻は15時38分で充電時間はわずか16分である。烏山駅の充電ゾーンはちょうど車両1両分にあたる箇所のみに架線が張られ、車止めの先には給電のための変電設備が設置されていた。
筆者の乗車した車両は、烏山方がキハ40形とEV-E301系「ACCUM」の絵入りヘッドマーク、宇都宮方がシンプルな緑地に「100周年 烏山線」の文字ヘッドマークだった。
(了)