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エルニーニョ終わっても 天候不順続く

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
長崎県に猛烈な雨を降らせた線状の雲域(7月20日午前10時、ウェザーマップ)

 長崎県に大雨特別警報(午後4時10分に解除)。この夏の記録的な日照不足に、豪雨が重なる。エルニーニョ現象は終息したが、インド洋の海面水温が高いため、今後も天候不順が続く可能性が高い。

今年初の大雨特別警報

 7月20日(土)午前10時過ぎ、長崎県の五島と対馬市に大雨特別警報が発表されました(五島は午後3時10分、対馬市は午後4時10分に解除されました)。

 原因は九州の西の海上を進んだ大型の台風5号です。台風が巻き込む非常に湿った空気と太平洋高気圧の縁を流れる湿った空気が合流し、線状の雨雲が発生しました(タイトル画像参照)。

 線状の雨雲は動きが遅いため、同じ場所で猛烈な雨が長く降り続く特徴があります。長崎県新上五島町有川(ありかわ)では20日午前10時までの12時間に、7月としては最大の344.5ミリの雨量を観測しました。

日照時間は平年の半分以下

 7月21日は関東甲信地方の梅雨明けの平年日です。昨年の今頃は夏空が広がっていましたが、今年は湿りがちの毎日です。

 この1か月間の日照時間を全国で調べてみると、806地点中67地点で日照時間が平年の半分以下でした。その多くが関東地方です。

 こちらは30日間合計日照時間が平年の50%未満だった気象台等を示した表です。

【日照時間】30日間合計(6月20日-7月20日、平年比50%未満の気象台等、著者作成)
【日照時間】30日間合計(6月20日-7月20日、平年比50%未満の気象台等、著者作成)

 意外に思ったのは梅雨が明けている沖縄や奄美でも日差しが少ないこと。今年は太平洋高気圧=夏の高気圧が弱いようです。

エルニーニョが終わっても

 昨秋に発生したエルニーニョ現象はこの春に終わりました。当初は夏まで続く予想でしたが、赤道付近を吹く貿易風(東風)が強まり、ペルー沖の海面水温は徐々に下がっています。

 世界規模で異常気象を引き起こすとされるエルニーニョ現象、日本では冷夏の心配はなくなったのでしょうか。

インド洋熱帯域の月平均海面水温の基準値との差の先月までの経過(折れ線グラフ)と エルニーニョ予測モデルから得られた今後の予測(ボックス)、気象庁ホームページより
インド洋熱帯域の月平均海面水温の基準値との差の先月までの経過(折れ線グラフ)と エルニーニョ予測モデルから得られた今後の予測(ボックス)、気象庁ホームページより

 エルニーニョ現象が終わっても、その影響は続きます。主役がエルニーニョ現象からインド洋に移るのです。

 エルニーニョ現象が発生するとつられてインド洋の海面水温も上昇します。インド洋はエルニーニョ現象よりも3か月ほど遅れてピークを迎えます。つまり、エルニーニョ現象が春に終わっても、インド洋は夏まで海面水温の高い状態が続きます。

インド洋と日本の夏

 インド洋の海面水温が高いと日本では天候不順となりやすいことが知られています。海が暖かいといつも以上に雲が活発に発生するため、風の流れに影響します。大規模な風の変化が太平洋高気圧の勢力に影響を及ぼすのです。

インド洋の海面水温が高いと日本は天候不順な夏になる(模式図、矢印は風の流れを示す、著者作成)
インド洋の海面水温が高いと日本は天候不順な夏になる(模式図、矢印は風の流れを示す、著者作成)

 少し専門的に言えば、日本の夏の天候に影響が大きいフィリピン付近の対流活動が弱くなるため、太平洋高気圧の日本列島への張り出しも弱まるという考えです。

 今後10日間程度、北・東日本太平洋側では日照不足が続く見通しです。

【参考資料】

気象庁:長崎県に特別警報発表(報道発表資料)、2019年7月20日

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.322) 、2019年7月10日

気象庁:北・東日本太平洋側の日照不足に関する全般気象情報 第2号、2019年7月19日

【追記】

長崎県の五島に出されていた大雨特別警報は7月20日午後3時10分に解除された。

長崎県に出されていた大雨特別警報は7月20日午後4時10分にすべて解除された。

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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