3.11から10年、捨てない備蓄と賞味期限 コロナ対策に有用な「ローリングストック法」#あれから私は
東日本大震災が発生した2011年3月11日から10年が経つ。「節目」「区切り」とは言われるが、被災者の方からすれば、ただの通過点なだけ。このあとも、変わらず日常は続いていく。
筆者は誕生日のこの日に震災が起きたことに運命的なものを感じ、当時勤めていた食品メーカーを辞めて独立した。独立してから10年の年でもある。
10年経って、変わったこともあれば、変わっていないこともある。あらためて、この日に強調しておきたいことは、「備蓄をすぐに捨てないで」ということだ。
賞味期限は「おいしいめやす」
賞味期限は、品質が切れる日付ではなく、おいしさのめやすに過ぎない。きちんと保管してあれば、賞味期限を超えても食べることができる。
消費期限と混同し、備蓄の賞味期限が切れたら、即座に捨ててしまう人もまだ多い。混乱する自治体が、備蓄しておいた水や食料を配ったところ、賞味期限の管理が不徹底だったために過ぎており、市民から苦情を受けて謝罪し、それを報道機関が報じる・・・というニュースもいまだに目にする。
2021年3月4日に国民生活センターが発表した調査でも、65%以上の人が「備蓄の賞味期限切れを経験した」とあった。
きちんと賞味期限が管理できればいいが、やむなくできていなかったとしても、もし直射日光を避け、高温高湿などに置かれていなければ、十分に飲食できる可能性はある。ただでさえ食品が不足する災害時に備えて、一律に捨ててしまわないでほしい。これは家庭も自治体も企業も同じだ。
新型コロナ感染症対策にも有用な「ローリングストック法」とは?
先日、食品ロスに関する講演をおこなった際、参加者の50代女性から次のような質問があった。
コロナ禍のため、食材の買い物をまとめてしていますが、冷蔵庫に埋もれてしまい、使いきれないことがあります。使いきりのコツを教えてください。
確かに、食材は備蓄しておきたいし、そうはいっても冷蔵庫がパンパンになってしまうと、どこに何があるかわからなくなり、管理できなくなってしまう。冷蔵庫に入れる食材は、冷蔵庫の容量のうち、50%から70%程度におさめるのがちょうどよい。棚の奥が見渡せるくらいが目安だ。
そこでお勧めしたいのが、できるだけ「常温保存できる食品」を買いだめしておくこと。缶詰などは3年間の賞味期限があるし、乾麺(パスタ)も同じくらい賞味期限が長く、冷蔵庫の外で保管することができる。ほかにもパックご飯や、レトルトカレーなどもお勧めだ。
そして、その常温保存の食材を、「ローリングストック法」で循環させていく。使ったら、使った数量の分だけを、次の買い物で買い足していく方法だ。長年、置きっぱなしにして、気づいたら賞味期限が何年も過ぎていた・・・ということがなくなる。
そして、普段から食べ慣れているものを備蓄しておくこと。こうすれば、備蓄は非常時だけのものではなく、日常使いできて、賞味期限の管理もたやすくなる。
子育て世帯は、日常の忙しさもあり、なおさら管理が難しいと思うので、ぜひ、缶詰などを備蓄するローリングストック法を取り入れていただきたい。
まとめ
賞味期限は、おいしいめやす。過ぎても一律にすぐ捨てないで。
備蓄は便利なローリングストック法で。
ぜひ参考にしていただきたい。
参考情報
65%「賞味期限切れ経験ある」備蓄の廃棄を防ぐには? #あれから私は(井出留美、2021年3月6日)
災害時に備えた食品ストックガイド(平成31年3月、農林水産省)
災害に備えた食品の備蓄に関する実態調査 ‐いざというとき、困らないために‐ 報道発表資料(2021年3月4日、国民生活センター)
3.11を迎え防災を考える 日本の食品ロスにカウントされない備蓄食品の廃棄、5年で176万食、3億円(2017年3月11日、井出留美)
7年目の3.11 防災備蓄食品を「食べずに捨てる」から「おいしく食べる」で食品ロスを減らす取り組み(2018年3月11日、井出留美)
「死ねば楽になる」3.11から8年、半壊家屋に住み食べ物もないお年寄り 大量の食べ物を捨て続ける矛盾(2019年3月11日、井出留美)