高騰続くレトロゲーム基板を専門店に売ってみた 「難あり品」も意外な価格に
80~90年代に発売された懐かしのアーケードゲームが、近年はNintendo Switchをはじめプレイステーション5、4や復刻ゲーム機などに次々と移植されている。
しかも、発売当時に大ヒットしたタイトルだけでなく、よほどのマニアしか知らないであろうマイナーな作品もどんどん移植されており、そのラインナップの充実ぶりには目を見張るものがある。
そんな状況にありながら、以前に拙稿「貴重な基板は『御神体』 進まぬアーケードゲームのアーカイブ化、問題点は?」でも紹介したように、過去に何度も移植されたアーケードゲームの基板であっても、今なお中古市場で高値で取り引きされている。
また、最近は円安が進んだこともあり、海外からも熱心なマニアがわざわざ日本に足を運んでは、高額の基板でもどんどん買っていると聞く。
そこで筆者は、実際に基板がどれだけ高騰しているのかを検証すべく、かつて自宅でやり込むために専門店で購入した私物の基板4枚を、実際に持ち込んで査定、および買い取りを依頼してみた。
買い取りをお願いしたのは、上記の記事でもご協力をいただいた、東京・秋葉原にあるアーケードゲーム基板の専門店「KVC lab.(けーぶいしーらぼ)」。倉庫の奥で長年眠り続けて古ぼけた基板に、はたしてどれだけの値打ちがあるのだろうか?
1:「奇々怪界」(タイトー/1986年)
初めに査定を依頼した基板は「奇々怪界」。ヒロインの巫女、小夜ちゃんを操り、御札と御祓い棒を駆使して敵の妖怪を倒していくアクションゲームで、小夜ちゃんだけでなく、敵の妖怪たちも可愛らしく描かれているのが特徴だ。
これはあくまで私見だが、過去に何度も家庭用に移植された作品であっても、主人公が女の子のタイトルは総じて熱心なファンが多い印象を受ける。なので、きっと相応の値段がつくのではと思い、本作を真っ先にチョイスした。
「KCV lab.」の佐々木好光店長の査定は、何と35,000円。筆者が本作を(中古で)購入したのは2002年頃、値段は13,000円だった。よって、差し引きの収支は22,000円もプラスになる驚きの結果になった。
2:「忍者くん 阿修羅ノ章」(UPL/1987年)
2枚目には、同じく80年代に登場したコミカルなアクションゲーム「忍者くん阿修羅ノ章」をチョイスした。
本作は、主人公の忍者くんを操作して、手裏剣や爆弾などの武器を使って敵の黒子やダルマ、カミナリ小僧などを倒していくアクションゲーム。まるで幼少期の郷愁を誘うかのような、メロディアスなBGMのインパクトも強烈な作品だ。
筆者が事前に動作確認をしたところ、経年劣化のためBGMや効果音が正常に再生されず、キャラクターの一部が画面に表示されない故障が発生していた。佐々木店長に原因を調べてもらったところ「電池が切れていて、部品の一部が壊れていますね」とのことだった。
しかし、それでも査定の結果は25,000円。この基板は1997年頃、12,000円で購入したので、故障中にもかかわらず13,000円のプラスとなった。ちなみに佐々木店長によると、もし状態が良ければ40,000~50,000円での買い取りになるというからこれまた驚きだ。
3:「TATSUJIN」(東亜プラン/1988年)
3枚目に選んだのは、ショットとボンバーを装備した自機を操作して、敵を倒していく縦スクロールシューティングゲームの「TATSUJIN(タツジン)」。ショットとボンバーの演出がとにかく派手で、敵を倒したときの爽快感がとても高いのが特徴だ。
今も昔も、シューティングゲームには狂信的なファンがおり、また本作は「イーグレットツー ミニ」と「アストロシティミニV」の両復刻ゲーム機に相次いで収録されたことから、現在も人気を維持しているだろうと読んで買い取りを依頼した。
こちらの基板は異常がなく、査定の結果は45,000円。筆者が基板を買ったのは1999年頃、価格は8,000円だったので、実に6倍近い値段に跳ね上がったことになる。
4:「ASO」(SNK/1985年)
最後の1枚は、今回持ち込んだ基板の中では最も古い、1985年発売の縦スクロールシューティングゲーム「ASO(エーエスオー)」。自機は対空、対地ショットに加え、ファイア、ニュークリア、パラライザーなどのパワー・アーマーを装着すると、さらに強力な攻撃が繰り出せるアイデアが、当時としては斬新だった作品だ。
37年も前に発売された古い基板ゆえ、これも経年劣化のためか、残念ながら背景のマップが正しく表示されない故障が発生していた。佐々木店長によると、正常に動く場合は20,000円以上になるとのことだったが、筆者の基板は14,000円の値が付いた。
それでも、筆者が1998年頃に購入したときの値段は12,000円だったと記憶しているので、こちらも2,000円のプラスとなった。
決済:望外の査定結果にびっくり
以上、4枚の基板を持ち込んだ結果、合計119,000円で買い取っていただいた。
今から30年以上も前に作られた基板が、しかも何度も家庭用に移植された作品であっても、こんなに高い値札が付くとは正直思わなかった。古い基板であっても、まだまだ需要があることを改めて証明したように思う。
蛇足で恐縮だが、今回買い取っていただいた基板は「KVC lab.」を通じて、今後はレトロゲームコーナーを設けているゲームセンター、あるいはゲーム愛に満ちあふれ、いつまでも大事にしていただける方の手に渡ることを願ってやまない。