「アイマス」「オレカ」「マイクラ」の新作に期待 「アミューズメントエキスポ2024」レポート
一般社団法人日本アミューズメント産業協会(JAIA)が主催する、アーケードゲームの展示イベント「アミューズメントエキスポ2024」が、11月15(金)~16(土)日の2日間に掛けて東京ビッグサイトで開催された。
本イベントには、アーケードゲームおよび景品の製造、販売メーカーを中心に全51社が出展し、2日間合計で13589人が来場した(※人数はJAIA発表による速報値)。
今年もプライズゲーム中心の展示に
昨今のプライズゲーム人気を受け、今年のアミューズメントエキスポも新旧クレーンゲームと新作景品を出展するメーカーが目立っていた。加えて大手メーカーのブースでは、昨年と同様に最新のクレーンゲームだけでなく、各社が運営するオンラインクレーンゲームのPRも盛んに行っていた。
無料で遊べて、スタッフが景品を獲得するまでアシストしてくれる「クレーンゲームフリープレイ」コーナーは、今回も終日大盛況。今年から新設された、主催者企画の「クレーンゲーム検定」コーナーも、ピーク時は約90分待ちになるほどの人気を博していた。
7社合同で出展した「プライズフェア」コーナーには、例年どおり各社から数え切れないほどの新作アイテムが展示されていた。可愛らしいぬいぐるみ、精巧に作られたフィギュア、お菓子や生活雑貨などバリエーションも実に豊富で、ただ見ているだけでも実に楽しかった。
期待の新作3タイトルは、いずれもカードゲーム
プライズゲーム系のにぎわいとは対照的に、かつての花形ジャンルだったシューティング、対戦格闘などビデオゲームの出展は、exA-Arcadia(エクサ・アルカディア)ブース以外はほとんどなかった。
今回の出展タイトルのうち、プライズゲーム以外で筆者が特に注目した新作は、バンダイナムコアミューズメントの「アイドルマスター TOURS」と、コナミアミューズメントの「モンスター列伝 オレカバトル2」「Minecraft Dungeons Arcade(マインクラフト ダンジョンズアーケード)」の3タイトルだ。
昨年に続き2度目の出展となった「アイドルマスター TOURS」は、プレイするごとに「ステージ衣装」「アクセサリー」などのカードが排出されるアイドル育成ゲームで、稼働開始は来春の予定。今年も開場直後から、ステージイベントも含めて多くの来場者が集まった。
先日、現在大人気のスマホ版「学園アイドルマスター」のアイドルが本作にも登場すると発表されたこともあり、普段はゲームセンターを利用しない「アイマス」シリーズのファンを、本作が少なからず呼び込んでくれることだろう。
「モンスター列伝 オレカバトル2」と「Minecraft Dungeons Arcade」の両タイトルも「アイドルマスターTOURS」に劣らない人気を集めていた。
「オレカバトル2」は、2012年に稼働を開始した「オレカバトル」の後継作。自分だけのオリジナルモンスターがプリントされたカード、「オレカ」を作成してバトルや育成が楽しめるキッズ向けのカードゲームだ。
「Minecraft Dungeons Arcade」は、その名のとおり「マインクラフト ダンジョンズ」をアーケード向けにアレンジしたアクションゲーム。最大4人同時プレイが可能で、プレイするごとに排出される「近接武器」「スキン」などのカードを使用して、キャラクターの装備をいつでも変更できるのが特徴だ。
「オレカバトル2」は12月から稼働予定で、「Minecraft Dungeons Arcade」は本日、11月20日より稼働する。両タイトルにより各地の店舗が、特に10代以下の若いプレイヤー間で盛り上がることを大いに期待したい。
好評を博した主催者企画
「AMUSEMENT MUSIC FES 2024」と「アミューズメント業界研究セミナー」の両主催者企画も好評だった。
「AMUSEMENT MUSIC FES 2024」はコナミアミューズメント、セガフェイブ、タイトー、バンダイナムコグループが参加し、各社の音楽ゲームに収録された楽曲などを披露するライブイベント。ライブを見るためには、本イベントの入場料とは別にライブチケットの購入が必要だがチケットは完売、約800人の観客がステージを盛り上げた。
今年が初開催となった「アミューズメント業界研究セミナー」は、業界を志望する就活生向けのセミナーで、当初の定員を大幅に上回り200人を超える学生が参加した。
本セミナーにはラウンドワン、共和コーポレーション、コナミアミューズメント、システムサービス、泉陽興業の5社の社員が登壇し、それぞれの業務内容を説明後、学生たちの個別の質問にも応じていた。さらにクレーンゲームの体験プレイと、ゲームセンター店長によるトークセッションも実施した。
特に、共和コーポレーションのようなディストリビューター(※ゲーム機や景品の卸売り業者のこと)の情報は、長年取材を続けている筆者でも聞く機会が滅多になく、学生にとっては業界の仕組みを学ぶ貴重な場になったことだろう。
今後の課題:業界全体で未来に向けた方策を
プライズ系の展示がにぎわう一方で、今回筆者が最も気になったのは、前回まで主催者企画として実施されていた「メダルゲーム体験コーナー」がなくなっていたことだ。
メーカーのブースには、いくつかの新作が出展されていたとはいえ「実は、メダルゲームって面白いんだ」と、来場者がアーケードゲームならではの面白さを体験できる機会を提供することは、業界の発展のためにも必要不可欠だろう。
アーケードゲーム業界は、プライズゲーム以外の新作タイトルのリリースが減って久しい。しかも近年はメダルゲームを撤去し、代わりにプライズゲーム、あるいはゲーム機ではないガチャガチャコーナーに切り替えた店舗が増えている感がある。
だからこそ、1人でも多くの人に興味を持ってもらうためにも、本コーナーの運営は継続すべきだ。
前述のとおり、今回の来場者数は2日間合計で13589人で、前回の8957人を上回った。ただ内訳を見ると、一般来場者数は5922人(前回は5816人)で、ほぼ横ばいであった。あるスタッフによると、会場を以前の幕張メッセから東京ビッグサイトに変えて以降、近隣に住む来場者が減ったという。
だが、それ以上に筆者が危惧しているのは、本イベントの関連記事を掲載するメディアが、近年はゲーム専門メディアでもめっきり少なくなり、ネット上で話題になる機会が減っていることだ(※あくまで筆者独自の見解だが)。一般の来場者数が伸びなかったのは、本イベントのメディアへの露出も知名度も、東京ゲームショウなどのゲーム系イベントに比べて低いのが原因であるように思えてならない。
知名度向上のためには、本イベントの公式サイトを通じてメディア、あるいは一般のゲームファン以外にも興味を持ってもらえる情報の発信が必要不可欠だ。しかし、サイトの開設当初から現在に至るまで、掲載されている情報の量も魅力も物足りないというのが、筆者の率直な印象だ。
例えば、コナミアミューズメントブースで行われたステージイベントのように、ストリーマーをPR大使として起用する手が考えられる。若い世代に人気のストリーマーの協力を仰ぎつつ、メディアへの訴求を図るとともに、ストリーマーたちのチャンネルも利用して話題を拡散してはどうだろうか。
前回のアミューズメントエキスポを取材したうえで掲載した拙稿「新生『アーケードゲームの祭典』 現地で見た展望と課題」でも指摘したが、会場に展示された各種ゲームや乗り物、アトラクションなどが実際に遊べる店舗、すなわち「ゲームセンター」の存在が、今回の会場でもまるで感じられなかった。
業界全体での市場規模は、2022年の時点でコロナ禍以前の数字にほぼ回復した一方、ゲームセンターの店舗数は減少し続けている。近所の店に出掛けても遊びたいゲーム、とりわけビデオやメダルゲームがない、もっと言えば生活圏に店そのものが存在しない人も、今では数多くいることだろう。
よって、稼働中および近日稼働する予定のタイトルは、設置店舗を来場者に知ってもらう仕掛けが必須であるように思われる。プライズゲーム人気に沸く今のうちに業界全体の力を結集して、将来を見据えた布石を打っておきたい。
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