梅雨でも美麗な練り切り。名古屋「川口屋」さんの意匠で雨粒に彩られた紫陽花を楽しむ
名古屋の老舗、夜のネオン街に立派な暖簾を掲げる「川口屋」さん。遠方への発送等は行っておりませんが、都内では毎月2回程、夏季を除いて新宿高島屋地下1階銘菓百選にて厳選された和菓子を販売なさっているんです。
今回は鮎や紫陽花を模した六月らしい上生菓子が揃い、梅雨のじめじめとした空気ではなく、雨粒をアクセサリーのように纏った意匠がお目見え。
その中からいくつかご紹介。
「紫陽花きんとん」の、三色のきんとんにそっと乗せられた透明な錦玉。光を湛えた雨粒に、雨上がりの日差しとまとわりつくような蒸し暑さを演出なさっているよう。ねっとりとしたきんとんに忍ばせた紫蘇入りの道明寺に、どこか清々しさをも感じます。まろやかなのにすっきりとした贅沢な味。
紫陽花についた水滴を上から覗くと、こんな感じの世界が広がるのでしょうか。色分けをして染め上げられた白餡が織り成す色彩美にうっとり。「花の露」は、まるで水の玉を口にいれたような涼と弾けるような瑞々しさがあふれる、軽やかに口の中で踊る葛。滋味深い味わいの中では、楚々とした甘味のこし餡がじんわりじんわりと広がっていきます。
とろけてしまいそうなほど柔らかい鮎。潤いをたたえた焼き皮に、小豆入りの道明寺がたっぷりとはさまれている「若鮎」。求肥ではなく、道明寺というのがまた珍しく川口屋さんらしいですね。道明寺の粒立ちを舌先で味わい、ほんのり塩気を感じられるのでいくでも食べられそうな味わいです。
思い火という薯蕷饅頭も端午の節句とは異なり、くびれのあるスタイルに。相変わらずねっとりとした皮で美味しくいただきました。
次回川口屋さんのお菓子を都内で購入できるのは、9月の新宿高島屋さんで。その頃にはどんな意匠が揃っているか楽しみです。
季節の上生菓子も楽しみですが、実は同じくらいもしくはそれ以上に薯蕷饅頭も楽しみな私。定番商品であれど、季節によって形や焼き印が異なるのでそこがまたより愛おしく思うのは、マニアならではでしょうか。
ちなみに、新宿高島屋さんでは事前にお取り置きを承ってくださいます。確実に、とい
う方は予めお電話もしくは店頭でお伺いしたほうがよろしいかと。
<川口屋>
愛知県名古屋市中区錦3-13-12
052-971-3389
月~土 9時30分~17時30分
定休日 日・祝・第三月曜日
市営地下鉄東山線・名城線「栄」駅1番口より徒歩3分