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ノルウェー最大手ファッション誌初、ヒジャブを被ったドラマ『SKAM』の女優が表紙に 

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
ノルウェー最大手のファッション誌『COSTUME』

今日、自宅の郵便受けを開くと、購読しているファッション雑誌『COSTUME』9月号が届いていた。表紙を見て、驚いた。なんとノルウェー発の高校生ドラマ『SKAM』でサナ役を演じたイマ―ン・メスキニ(Iman Meskini)さん。

ノルウェー最大手のファッション雑誌で、ヒジャブを被るイスラム教徒が初めて表紙を飾った。

ノルウェー人であり、ヒジャブを被ったムスリム女性が、ノルウェー最大手のファッション誌の表紙を飾ることは歴史的です。インタビュー記事を読めば、これがどれだけ伝説となるようなことか、きっとわかるでしょう。境界線を越えようとする彼女は、若い女性にとって、力の源となるでしょう。

出典:編集長ハッツ

12ページにも及ぶ特集ページでは、様々な色やデザインのヒジャブを被ったメスキニが、笑顔でインタビューに答えている。カラフルな北欧ファッションブランドに身を包んだ彼女の姿は、ドラマで黒い色の服をまとっていた女子高生サナとは異なる。

「これまでテレビでヒジャブを被った女性は見たことがなかったから」、ドラマのオーディションに受かるとは予想もしていなかったこと、イスラム教徒であることを誇りに思っており、イスラム教徒という生き方は自分が選んだライフスタイル、ファッションは自分を表現する手段など、これまで語られることのなかったメスキニさんの考えがたっぷり詰まった内容となっていた。

最大手ファッション誌の表紙をヒジャブを被った女性が飾ったことは、ノルウェー国営放送局NRKもすぐに報道。「ヒジャブを普通のものにしようとしている」という批評家の言葉などを紹介している。

報道した国営放送局のFacebookコメント欄では賛否両論

NRKのFacebookページには3000以上の「いいね!」がつくが、同時に150件ほどのコメントの中にはイスラム教やヒジャブに懐疑的な人々の声もあった。

嫌悪感を示す人々からは「平等を重んじる国、西洋社会ではヒジャブは標準化されない。国営放送局は恥を知れ」、「女性を抑圧する服装がこのように注目を浴びることは悲しい」、「テレビ局はヒジャブが何かわかっていないの?」、「この服装は禁止されるべき」という声が。

一方、「コメント欄の荒れようがすごいね」、「イマ―ンは私のロールモデルです!大人たちはもっと自分たちがネットで何を書いているのか自覚をもったほうがいい。こうして子どもは、いじめというものを学ぶのよ」、「なんて勇気のある女性」という後押しする声もある。

雑誌のInstagramでは読者から絶賛するコメントが相次ぐ

『COSTUME』のインスタグラム@costumenorgeには、5000以上の「いいね!」がつき、「今までで最高の表紙」と称賛するコメントが相次いでいる。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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