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「ムスリム女性はネットのいじめ対象」、「コメントは読まない」。ドラマ『スカム』の主人公が語る

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
ドラマ『SKAM』の主人公サラ Photo:NRK

ノルウェー発の高校生ドラマ『SKAM』の登場人物たちの言動は、現地の若者の間で大きな注目を集めている。

主人公サラを演じるイマ―ン・メスキニ(Iman Meskini)は、オスロ大学に通う女子大生。自身もムスリム(イスラム教徒)であり、日常的にヒジャブを被っている。

ノルウェーでは「ネットいじめ」が問題化しているが、ヘイトスピーチの対象になりやすいグループのひとつがムスリムだ。

国営放送局NRKは3日、ネットいじめの特集で、サラ役として人気のメスキニをゲストとして招待。

メスキニは放送で「自分自身はいじめられているとは感じない。なぜならネットでのコメント欄やVG紙は読まないから」と語る。

結果、「社会的な議論や活動にあまり熱心ではなくなってしまいましたが、自分を守るためにはどうしても必要な手段でした。今、ムスリム女性はいじめの対象になっていると思います。ムスリム女性について書かれたコメントを読んでいると、どうしても精神的に疲れてしまいます」。

「あんなドラマでムスリム女性が演じるべきではない」。批判はムスリムからも届く。

ムスリムではないノルウェー人からも、「ムスリムがテレビにも侵略してきた」、「テロリスト」というような反応もくるという。

「いじめられるのは恥ずかしいことではありません。私たちムスリムは沈黙することをやめるべきなのかもしれません。私がコメント欄を読むのをやめた理由は、コメント欄に溢れているのはムスリム女性に対する批判ばかりだから。もしムスリム女性たちの声がそこにもあれば、私はコメント欄をまた読むようになるかもしれません」。

首都オスロではヒジャブを被っている女性を頻繁に見かけるが、実際の数は国内に住むムスリムは10万~18万5千人、人口の2~4%を占める(SSB統計局)。

昨年12月のDagbladet紙の記事では、「ノルウェーに100人の人がいたとしたら、そこにムスリムは何人いると思うか」という質問がされた。回答者は「12人」と答えたが、実際は3,7人と「人々が思っているほどムスリム人口は多くはない」。

一方で、与党・右翼ポピュリスト政党である進歩党の政治家は、「国内でのムスリム化」に強い警報を鳴らす。その結果、ムスリムや外国人移民に対する「異端者への恐怖心や懐疑心」が国内に広がり始めたと、反対勢力の左派は抗議。

NRKのFacebookでは、今回のメスキニの発言に対して、「ネットでのきつい言葉に耐えられないならば、ネットから離れていろ」という視聴者からの声も届く。それに対してNRKのスタッフは、「あなたのそのような姿勢には、我々スタッフは同意しません」と反論した。

人気ドラマ『SKAM』では、これまでシーズンごとに主人公が入れ替わってきた。最終シーズンで、ヒジャブを被るサナが主人公となった理由に、制作側は「ノルウェーではムスリム女性に対するステレオタイプが広がっており、多くの人がヒジャブを被る彼女たちを“犠牲者”として捉えている」とコメント。ムスリム女性に着目する時がきた、と説明している。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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