「ドラクエ3」世界出荷数200万本の評価は?
ドット絵と3DCGを組み合わせたグラフィックでリメークされた「ドラゴンクエスト3」(PS5、ニンテンドースイッチ、PCなど)の世界出荷数(ダウンロード数を含む)が200万本を突破したことが発表されました。しかし、この数字をどう評価して良いのか分からないという人もいるようです。考察します。
◇スーパーファミコン版の数字を超える
世界出荷数200万本の内訳も気になるところです。発売直後の11月中旬、スクウェア・エニックスの広報室に、出荷数やハード別・地域別の内訳などを質問すると「現時点で公表はしてない」とのことでした。
ちなみに1988年に発売されたファミコン版(オリジナル)の出荷数は380万本で、スーパーファミコンのリメーク版は140万本とのことでした。
二つの数字を基準にすると、今回のリメーク版は「成功」でしょう。特にスーパーファミコン版の数字を超えたのは好材料。複数のゲームプラットフォームで発売した効果が出ています。200万本は現時点の数字であり、積み増しも期待できます。
◇課題は海外の売れ行きか
一方で気になることもあります。海外で売り上げが伸びたように思えないことです。地域別の出荷数は明らかでないため、推測します。ゲーム雑誌「ファミ通」が毎週発表するランキングによると、日本国内のパッケージ版の推定販売数(現時点)は、PS5とニンテンドースイッチ版を合わせて現時点で約95万本となります。
そこからランキングに計上されない分のダウンロード数を推測します。出荷数と推計販売数の差、各社の決算短信(パッケージとダウンロードの売上比率)や、ライトユーザーの多さ(パッケージ版の購入比率がアップする)などを踏まえると、40万~60万本といったところでしょうか。すると国内の出荷数(パッケージとデジタルの合算)は、推定140万~160万本となり、スーパーファミコン版と似た数字になります。
発売後のSNSの盛り上がりなども相当でしたから、やはり「ドラクエ」は日本での人気が圧倒的に高いのでしょう。ですが国内で売れるほど、海外の比率が低くなります。市場の大きな海外で売れないことが課題に見えてしまうわけです。ともあれドット絵の需要は若い層、海外でも評価されている側面もあり、引き続きの「HD-2D」の展開は期待したいところです。
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◇ソフトの売れ方“二極化”
そして今回の出荷数200万本のニュースは、ヤフートピックスに採用されませんでした。そもそも最近、ゲームソフトの出荷数のニュースが採用されなくなった実感があります。基本無料のリッチなスマホゲームがある中で、かつ厳しい経済情勢で7000円台の商品がこれだけ売れたのは立派なのですが。
一方で、取り上げづらい理由も理解できます。ゲームソフトが世界商品になり、「ポケモン」のように数千万本を売るソフトと、特定地域でのみ売れるソフトの“二極化”が進んだことです。大手メディアだと、前者の方が数字映えが良い分、後者の数字が低く見えるからです。
「ドラクエ」は、日本市場で圧倒的な強さを誇り、「東京五輪」でもBGMが流れるほどの作品で、日本を代表するコンテンツであることに異論はありません。そして日本国内で売れることは大切です。しかし現在のゲームビジネスは、世界で売れるソフトの方が、経営的な評価は高くなります。
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それだけに「世界でもっと売れてほしい」「売れるはず」という期待が大きいとも言えます。今回の出荷数は、評価が難しい「メディア泣かせ」なのです。
ですが、少子高齢化が進み、購買力が落ちる日本市場を主軸にして、リメーク版で200万本を売ったとも考えることができます。そうなると余計に評価が難しくなるわけです。
賛否両論はあったものの、これだけ売れて話題にできたわけです。2025年発売予定のリメーク版「ドラゴンクエスト1&2」にもつながりますし、シリーズ最新作「ドラゴンクエスト12」(発売時期、対応ハード未定)のプラスにもなりそうです。人気シリーズだけに、ファンからの“ご意見”はやむことはないでしょうが、多様な挑戦を続けてほしいと願っています。