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「おひさまとえんぴつ」 聴覚障害の少女が持つ才 インスタで「いいね!」1000万超の話題作

河村鳴紘サブカル専門ライター
「おひさまとえんぴつ」の1シーン=実業之日本社提供

 さまざまなマンガがありますが、あまりの数に何を読めば良いか迷う人もいるでしょう。そこで実際に読んで、心を動かされた作品を取り上げてみます。今回は、羊の目。さんのマンガ「おひさまとえんぴつ」(実業之日本社)です。

 「おひさまとえんぴつ」は、生まれつき耳の聞こえない聴覚障害があるものの、読書好きな少女・由良沙希のお話。自分の世界を育むようになった沙希は、周囲の理解もあってか、才能を開花させるコミックエッセー。「音のない世界」は不利と考えがちですが、強みになる視点に心を動かされました。そしてオチも見事で、読後感も抜群です。

 主人公の沙希以外にも、沙希を温かく見守る姉の明日香、運動神経抜群で手話もできる親友・絵那、図書館のお姉さんなど、誰もが魅力的です。なお個人的には、最初こそ意地悪をするものの、沙希にひかれていくたかし推しです。成長する子の姿は素敵ですね。

「おひさまとえんぴつ」の1シーン。謝罪のときに真摯さが伝わってきます=実業之日本社提供
「おひさまとえんぴつ」の1シーン。謝罪のときに真摯さが伝わってきます=実業之日本社提供

 作品はネットで公開され、人気を受けて書籍化が決定。インスタグラムで1000万を超える「いいね!」を獲得しています。東京で作者のサイン会を実施すると、地方から深夜バスに乗ってきた親子もいたそうです。テーマは「少女が夢を追いかける」と「手話」で、映画「Coda コーダ あいのうた」に触発されたことを作者が明かしています。

 同作の根底にあるのは、人間賛歌であり、人とのかかわり、コミュニケーションの大切さを説いていることでしょうか。同時に人間の欲求、悩んだ時に原点に返ることの大切さも説いていたりします。

 便利なSNSですが、何かと炎上があり、怪しげな情報が飛び交い、キツイ言葉が飛び交うなど他者へ配慮は顧みられない面がある現代。同書を読めば、荒れた心が少しだけでも癒されるかもしれませんね。

「おひさまとえんぴつ」=実業之日本社提供
「おひさまとえんぴつ」=実業之日本社提供

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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