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米TV視聴、地上波・CATV初の50%割れ 動画配信過去最大 ニールセン調査

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米調査会社のニールセンによると、米国ではケーブルテレビ(CATV)と地上波放送のテレビ視聴時間の合計シェアが初めて5割を切った。その一方で、米ネットフリックス(Netflix)などのインターネット動画配信は過去最大を更新した。

CATV、地上波の視聴時間、過去最低を更新

これは米国における2023年7月のテレビ視聴時間を調査したものだ。それによると、CATVの視聴時間シェアは29.6%へ、地上波は20%へと低下し、いずれも過去最低を更新した。一方、ネット動画配信は前年同月比7.2ポイント増の38.7%となり、ニールセンが21年6月に月次データを公表して以降、最大のシェアとなった。

米国では近年「コードカッター」と呼ばれる、CATVを解約する人が増えている。数百チャンネルが用意される高額な受信契約をせず、好みの映画や番組だけを安価に利用できるネット動画配信を選ぶ傾向にある。

米CNBCによると、CATVの減少ペースは、動画配信の利用が急増した新型コロナウイルス流行初期以降、加速し続けている。

米コムキャストや米チャーター・コミュニケーションズといったCATV大手は四半期ごとに加入者数の減少を報告している。2社は23年4〜6月期に、それぞれ54万3000人と20万の加入者を失った。

豪投資銀行マッコーリーグループのシニアメディアテクノロジーアナリストであるティム・ノーレン氏は最近のリポートで、「従来型テレビ(放送時間に従って視聴するテレビ)の指標はすべて芳しくない」と指摘した。

マッコーリーのリポートによると、各CATV事業者の加入者数は平均で前年比9.6%減少した。これは約440万世帯に相当する損失だという。加入世帯は一貫して減少し続けている。

米国における23年4〜6月期のCATV加入世帯数は4100万世帯。22年の4500万世帯、21年の5000万世帯から減少した。また、ニールセンによると、CATVの視聴率は前年同月比で12.5%減少、地上波は同5.4%減少した。

動画配信、加入者の増加率鈍化

従来型テレビの不振は、動画配信の台頭が要因だと言われている。ネットフリックスや、米ウォルト・ディズニーの「Disney+」「ESPN+」、ディズニーとコムキャストが共同運営する「Hulu」、米ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの「HBO」、コムキャスト傘下NBCユニバーサルの「Peacock」などだ。

ディズニー、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー、コムキャストなどはCATVの業績が悪化するなか、動画配信でシェアと利益を確保すべく奮闘中だと、CNBCは報じている。

ただし、動画配信も最近は加入者数の増加が鈍化しており、収益を増やすために相次いで値上げを実施している。米ウォール・ストリート・ジャーナルは23年8月15日、利用者が広告なしで視聴する費用が約1年で25%近く上昇していることが分かったと報じた

米動画配信の首位はYouTube

ニールセンによると、23年7月における米動画配信の視聴時間シェアは、米グーグルの「YouTube」が9.2%で首位だった。2位は、ネットフリックスで8.5%。3位は、ディズニーとコムキャストのHuluで3.6%。

この後、米アマゾン・ドット・コムの「Prime Video」(3.4%)、ディズニーのDisney+(2.0%)、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのHBO(1.4%)、米フォックス・コーポレーションの「Tubi」(1.4%)、NBCユニバーサルのPeacock(1.1%)と続いた。

  • (本コラム記事は「JBpress」2023年8月22日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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