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鉄板上の空論か? ソルベから読み解くグランド ハイアット 東京の鉄板焼「けやき坂」夏メニュー

東龍グルメジャーナリスト
グランド ハイアット 東京「けやき坂」

今年もかき氷に注目

「なぜアイスモンスター(ICE MONSTER)は爆発的な行列となっているのか?」でもご紹介したように、昨年に続いて今年もかき氷がブームとなりそうです。

「【最高級かき氷】ザ・リッツ・カールトン東京 ドンペリニョン ロゼのかき氷はどのようにして生まれたか?」でもご紹介したように、かき氷は広がりを見せており、天然氷を使ったり、高級になったり、珍味を合わせたり、巨大になったり、24時間営業したりと実に様々なものが現れています。

珍しいかき氷

珍しいかき氷と言えば、例えば以下のようなものがあります。

  • 遊食豚彩 いちにぃさん「白くま」

鹿児島県名物の「白くま」

  • 天野屋「氷甘酒」

甘酒を使ったかき氷

  • なごかふぇ「アボカドマンゴーかき氷」

アボカド入り

  • かき氷工房 雪菓「納豆きなこかき氷」

納豆のかき氷

  • セバスチャン「ドルチェかき氷」

ティラミスやレアチーズ入り

  • マンゴーチャチャ「モテキ」

台湾かき氷

  • 大江戸あられ「黒蜜きな粉」

あられをトッピング

このように、かき氷は様々なものがありますが、今度は同じ氷菓のソルベでも新しいものが現れています。

それは、「グランド ハイアット 東京「けやき坂」の鉄板焼はどこが新感覚なのか?」でもご紹介したけやき坂の7月から提供されるソルベなのです。

かき氷とソルベの違い

まず、かき氷とソルベがでてきましたが、この2つの違いは何でしょうか。簡単にまとめると以下の通りとなります。

  • かき氷

氷の固まりを細かく削って、シロップをかけたもの

  • ソルベ

シロップやお酒を合わせて軽く凍らせたもの

作り方や食感などは異なるものの、熱い日に食べたい氷菓ということでは似たような存在と言ってよいでしょう。

鉄板焼でソルベを

けやき坂 ソルベ
けやき坂 ソルベ

では、けやき坂のソルベは何が新しいのでしょうか。

けやき坂は鉄板焼レストランですが、この熱い鉄板カウンターでソルベを作るところが、新しいのです。

広報 藤井三喜氏は「マイナス79℃のドライアイスを使って、鉄板カウンターにいらっしゃるお客さまの目の前で作る。ドライアイスはとても冷たいので、隣で焼いていても影響しない。凍ったばかりのできたてを食べていただけるので、生ソルベとご紹介している」と説明します。

これを受けて、料理長 本多良信氏は「オレンジジュース、オレンジ、レモンピールに加えて、シャンパーニュを贅沢に使う。ゆっくりと凍らせていき、途中で季節のフルーツを入れる。見ていても楽しく、清涼感もあるので、夏にとてもおすすめ」と述べます。

確かに目の前で凍らせていけば、最高のできたてソルベを提供することができるでしょう。鉄板焼のデザートとしてソルベが提供されるのは普通のことですが、鉄板カウンターでソルベを作るという発想には驚かされます。

安定剤は不使用

難しかったところを尋ねると、本多氏は「安定剤を入れていないので自然な味わいを楽しめるが、その分だけ溶けるのが早い。テラス席でゆっくりと過ごしていただきながらも、ソルベはできたてのうちに召し上がっていただければ嬉しい」と答えます。

けやき坂には開放的なテラスがあり、デザートはそちらに転卓して食べます。鉄板カウンターで生ソルベができる過程を目で楽しんでから、気持ちのよいテラス席で食べられるのは贅沢なことでしょう。

高級食材のオマールブルーも

オマールブルー
オマールブルー

けやき坂は本多氏が料理長になってから、本格的な鉄板焼を引き続き提供しながらも、鉄板焼らしからぬメニューを考案してモダン鉄板焼を切り拓いていますが、他には新しいメニューはあるのでしょうか。

本多氏は「ソルベは特に体験していただきたいが、夏に向けたメニューをたくさん考えている。7月からは、味が濃厚で食味が素晴らしいオマールブルーを、生きたままお客さまの目の前で調理する。尻尾と爪で味や食感が異なるので、食べ比べていただきたい」と、早速メニューを挙げます。

オマールブルーと言えば、「【ミシュラン/最高級食材】ピエール・ガニェールのオマール・ブルーづくしコースとは?」でもご紹介したように、高級フランス料理で高級食材として初夏に食べられるものですが、鉄板焼で食べられるというのは聞いたことがありません。

それについて触れると、「通常、海の高級食材として鉄板焼では伊勢海老や鮑が使われることが多い。しかし、鉄板焼でも、フランス料理でも使われているオマールブルーもおいしく食べられる。幅を広げたいということもあり、ご提供することにした」と述べます。

中国料理との融合

椎茸の肉詰めフォアグラ添え 黒酢ソース
椎茸の肉詰めフォアグラ添え 黒酢ソース

他にもまだ新しいメニューがあります。

「エッグベネディクトやビーフシチューでフレンチとの融合を果たしたので、今度は中国料理のエッセンスも取り入れることができないか考えた。小籠包をイメージした『椎茸の肉詰めフォアグラ添え 黒酢ソース』を既にご提供している。豚の挽肉、黒酢、針生姜で小籠包の風味を表現しているだけではなく、フォアグラを載せてロッシーニ風に仕上げた」と紹介します。

ハマグリ
ハマグリ

点心と鉄板焼を融合しているので、どのようなものになるかと思っていると、鉄板焼でも花形となっているフォアグラを載せて、しっかりと鉄板焼のメニューらしく整えているのです。

また「夏が旬の味覚といえばハマグリ。火入れしたエイヒレも加えて、少し特徴をだしている」と王道のメニューについても紹介します。

鉄板焼の枠を超えて

実は以前、本多氏に「かき氷が人気となっているので、鉄板焼で実現できたら面白いが、それは難しいだろう」と話したことがあります。

鉄板焼で氷菓を提供したら面白いと考えることはいくらでもできますが、問題となるのは、その実現方法やプレゼンテーション、日々のオペレーションです。こういった課題を乗り越えて、鉄板焼でソルベを作って提供するまでに至ったことに価値があります。

北海道 白老牛
北海道 白老牛

グランド ハイアット 東京のようなラグジュアリーホテルの鉄板焼となると、けやき坂でも人気の高い神戸ビーフや北海道の白老牛、伊勢海老や鮑を思い浮かべますが、冒頭でご紹介したようにかき氷ですら多様化し、昨年はブラジル料理が、今年はテクスメクス料理が流行しているように、あらゆる食が融合と派生を繰り返していく日本の中では、本多氏が「鉄板焼の枠を取り払って考えていかなければならない」と力強く述べる通り、小籠包やオマールブルー、そしてソルベでさえも、鉄板の上で実現されるのは至極当然のことであると私には感じられるのです。

情報

詳しくは公式サイトをご確認ください。

参考

レストラン図鑑にもけやき坂が詳しく掲載されていますので、ご参考にどうぞ。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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