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網戸にへばりついて「家に入れて」と懇願した野良猫の予想外な事実が明らかに

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:Cultura/イメージマート)

カジちゃんが当院へ来たのは、去年の暮でした。まるでUさんのところでずっと飼われていたようにキャリーケースに入っていました。

Uさんのところでは、先住猫のみゅーちゃんがいるので、カジちゃんを入れるのに躊躇されたようです。みゅーちゃんは、高齢(この子も野良猫だったので年齢は不明です)で慢性腎不全も患っているので、カジちゃんと一緒に飼うとストレスにならないかと不安だったのです。

それでもカジちゃんは奥の手を使い、飼い猫になりました。その奥の手と予想外な事実とは?

網戸にへばりついて「家に入れて」と懇願

筆者が撮影 診察に来ているカジちゃん
筆者が撮影 診察に来ているカジちゃん

Uさん家族は、全員が猫好きなので外で猫が歩いているだけでもすぐに気がつきます。猫に関心がない人は、目の前を猫が通り過ぎても目に入りません。そんなUさんの庭に、カジちゃんがやってきたのです。ちょっと外にいる猫にしてはきれいな子だなと思ってUさん一家は眺めていたそうです。

そのうち、どこかに行くだろうと思ってカジちゃんを見ていると、自分から「家に入れて」とアピールするようになったのです。

Uさんが室内にいると、網戸にへばりついてギャーギャーと鳴くのです。それを見てかわいそうになり家に入れることにしました。

カジちゃんは、当然、飼ってもらえると思っていたらしく、Uさんの息子さんが抱きあげようとしたときは逃げようともせず素直に抱っこされたそうです。

めでたく、カジちゃんは野良猫から家猫になりました。

写真をご覧になるとわかりますが野良猫には見えないですね。実は、カジちゃんは「ブリティッシュショートヘア」という猫だったのです。この子は迷子の猫だと思い、警察と保健所にカジちゃんを保護したことを届けました。

元の飼い主がペットショップで購入されたのか、カジちゃんはマイクロチップが入っていました。マイクロチップのコードを読み取り問い合わせをしてもらいました。

Uさんと筆者は血統書の猫だしマイクロチップまで入っているので、飼い主はさぞ心配して探しているだとうと思ってマイクロチップの事務所からの連絡を待っていました。

ところが、予想外の事実としてカジちゃんは登録がされていなかったのです(マイクロチップを入れただけではダメで、手数料を払って飼い主が登録をしないといけないのです。ペットショップなどではそのことを代行してくれるところもありますが、きちんと確かめてくださいね。登録が完了すればハガキで飼い主のところに通知がきます)。

Uさんは、カジちゃんの飼い主を見つけることはできず、なぜ、こんな子が迷い猫になるの腑に落ちませんでした。しかし、いまではすっかりカジちゃんはUさんちの子になっています。

ブリティッシュショートヘアは、まだ珍しい猫なので、少し紹介します。

ブリティッシュショートヘアとは

写真:PantherMedia/イメージマート

ブリティッシュショートヘア(英:British Shorthair)という名前からわかるように、イギリス原産の短毛の猫です。この品種のブルー(灰色)の毛色は「ブリティッシュブルー」の呼び名がつくことほどブルーが多いです。いまではブルー以外の猫もいます。

体格は骨太で厚く幅の広い胸部を持っています。そして大きい丸い顔をしています。

性格は、控えめで静かな性質で従順でおとなしいです。その一方で、あまり触れられるのが好きではありません。飼い主と同じ空間にいるのは好きですが、そっと守ってほしいタイプの猫です。

カジちゃんが診察へ

筆者が撮影 レザー治療のためサングラスをかけているカジちゃん
筆者が撮影 レザー治療のためサングラスをかけているカジちゃん

約10月経ったある日、鼻に血が混じるということで来院されました。以前に猫ウイルス性鼻気管炎を患っていたらしく、朝晩の気温が急に下がったので猫ウイルス性鼻気管炎のヘルペスウイルスが活発になりなってこのような症状が出たようです。

写真は、鼻にレザー治療をしたところで目を保護するためにサングラスをしています。

もう野良猫ではなく室内飼いの猫なので、数回の治療で完治しました。このようにカジちゃんは、病気になるとすぐに連れてきてもらえるような環境下で元気に暮らしています。

カジちゃんは捨て猫なのか?

写真:PantherMedia/イメージマート

カジちゃんは、ブリティッシュショートヘアなので、ブリーダーかペットショップで購入されたのでしょう。一般的な値段は20万円以上するのですが、マイクロチップの登録もされていなし、迷子になったときに警察や保健所に届けていないところを見ると捨てられたのか、と推測されます。コロナ禍でペットを飼う人は増えていますが、飼育放棄をしている人がいて問題になっていますね。

しかし、カジちゃんはUさんちなら僕を飼ってくれるという動物的な勘で飼い猫という立場を仕留めたようです。野良猫もこの人は、飼ってくれるというのがわかるのか、猫好きの人に寄るっていき餌をねだったりしますね。人が出すニオイで猫好きかどうかわかるようです。

カジちゃんは、先住猫のみゅーちゃんとも仲良くして猫生を楽しんでいるようです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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