自由研究は「立ち寄り」社会科見学でばっちり ~ 東海編
いよいよお盆休み。自由研究も、このお盆休み中に片づけちゃいましょう。今回は東海編です。
今回は、自由研究のコツは、「身近なもの」を取り上げること、ということで、「まちづくり」と「缶詰」。
小学生の自由研究には、「名古屋の道路はなぜ広いのか」とか、「日本で最初の缶詰はなに」とか、判りやすいお題を保護者の方が出してみるといいかもしれません。
・名古屋のまちづくりを学ぶ 名古屋都市センター (名古屋市・金山)
名古屋の街を訪れると、広い道路に感心する人が多いようです。名古屋市は、第二次世界大戦中の激しい空襲によって、名古屋城をはじめ市内の広い範囲が焼失してしまいました。 名古屋市だけではなく、戦争の被害の大きかった国内の大都市では、これを奇禍として新しい都市づくりが計画されます。しかし、多くの都市では批判や反対も多く、実現できなかったのに対して、名古屋市では当時の助役であった田淵寿郎氏が、近代的都市づくりを推進し、現在の名古屋市の街を形成していきました。田淵氏は、土木工学者であり、道路だけではなく土地区画整理、地下鉄など鉄道、名古屋港の港湾整備などにも活躍し、名古屋市の名誉市民第一号に選ばれたほどなのです。
このように名古屋の近代的な都市づくりは、全国の先進事例として取り上げられてきたのです。その都市づくり、まちづくりを判りやすく展示し、関係する資料を集めた図書館が利用できるのが、JR・名鉄金山駅前にある名古屋都市センターです。
ボストン美術館やANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋と同じビルの中にあるので、あまり目立ちませんが、意外におもしろい展示や資料があるのです。駅チカ、美術館、ホテルも併設のまさに「立ち寄り」社会科見学にぴったりなところです。
一階からはエレベーターでまずは11階のまちづくり広場へ。大きなガラス窓に囲まれていて、名古屋市内を一望できるスペースは、子どもだけではなく大人も大満足のはずです。
そして、ここの目玉は精巧な名古屋市内のジオラマです。実は、一番上で紹介している画像。これもジオラマなのです。名古屋市内に住んでいる方なら、自分の家を探すのも楽しいでしょう。このフロアには、名古屋市のさまざまなまちづくりに関しての展示がされています。
少し詳しく調べたくなったら、12階のまちづくりライブラリーへ行きましょう。7万冊を超える都市やまちづくりの本が揃っています。ここは研究者なども訪れるスペースですから、子どもたちにはしっかりと図書館の使い方を教えましょう。どういう本を探しているかなど、係の方に相談すると、アドバイスしてくれます。
お勉強に疲れたら、11階には喫茶コーナーもあります。名古屋市内を一望にコーヒーやお茶を楽しめます。
この都市センター、子どもたちの自由研究にも、大人がちょっと立ち寄るにもとても素晴らしい施設なのですが、意外と知られていない場所。駅からもすぐですし、この夏、子どもたちの自由研究のついでに寄ってみてはどうでしょう。夏休み中も、月曜以外は開館しています。
・清水港の名物は? 缶詰! 缶詰記念館・フェルケール博物館 (静岡市清水区)
静岡市清水と言えば、清水次郎長親分とちびまる子ちゃん。今回紹介する缶詰記念館は、次郎長ゆかりの清水港船宿記念館「末廣」や、ちびまる子ちゃんランドのすぐそばにありますから、観光ついでに「立ち寄って」、社会科見学も済ませてしまいましょう。
清水港にあるフェルケール博物館は、立派なホテルのような外観の建物です。聞きなれないフェルケールとは、「交通」「交際」を意味するドイツ語で、正式名称を清水港湾博物館と言います。
このフェルケール博物館だけでも、充分に社会科見学になる場所です。この博物館は、地元の清水港を中心に、港や船についての展示している「港の博物館」なのです。
この博物館では、特に明治以降、近代化の進む日本における船や港の役割や技術の進歩、さらに世界有数の海運国家となった昭和初期から、輸出大国となり海運業の発展すると同時に大型タンカーなどの登場などでの輸出の増加など、様々な歴史と船、港の役割が判りやすく展示されています。実物や模型などの迫力ある展示がされていて、子どもたちはきっと喜んで、缶詰記念館に進んで行かないかもしれません。
実は、缶詰記念館は、このフェルケール博物館に併設されているのです。港湾関係の展示に気を取られて、缶詰記念館に気が付かない入館者もいるようです。いったん外に出ると、かわいい洋館が建っています。これが缶詰記念館です。
この建物は、日本初の「ツナ缶」製造会社である清水食品株式会社(現・SSKセールス)の本社として、1929年(昭和4年)に建設されたものを、移築してきたものです。
日本の缶詰産業は、清水港のマグロ漁から始まります。豊富に採れたマグロを缶詰にして、アメリカに輸出する計画を立て、研究、開発の末に1930年(昭和5年)にツナ缶の製造・輸出が始まります。しかし、マグロ漁は夏場だけで、冬場は工場が遊んでしまいます。そこで考えられたのが、静岡名産のミカンの缶詰。同年の冬にはミカン缶詰の製造販売も開始し、缶詰製造は一大産業として成長していったのです。
缶詰記念館には、様々な種類の缶詰やその製法、ラベルなどが展示してあります。もしかしたら、今の子供たちは「缶切り」という道具も知らないかもしれませんね。お父さんやお母さんが説明しながら見て回るのも、おもしろいでしょう。
缶詰は、日本の第二次世界大戦後も盛んに海外に輸出され、特にツナ缶は世界中に行き渡って、食文化を変えたと言われるほどの商品になりました。日本の高度経済成長を支えてきた一つなのです。輸出が盛んだったころのラベルも、レトロ感満載です。
ちなみにフェルケール博物館には、清水港から盛んに輸出されていったもう一つの産品であるお茶の輸出用ラベルも展示されています。
缶詰の歴史というテーマも、おもしろい自由研究になるでしょう。食品の輸出入ということを調べるのも、良いでしょう。身近なテーマだけでに、ここで勉強して、家にある缶詰などを調べてみると色々と発見もあるのでは。
自由研究のコツの一つは、「身近なもの」をテーマにすることです。「まちづくり」と「缶詰」。身近なんだけれども、普段、あまり意識していない二つをテーマにしてみるのは、いかがでしょうか。