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2018年5月、レ・オルメが来日。名盤2作を再現、伊プログレッシヴ・ロックの伝統と熱気に満ちたライヴ

山崎智之音楽ライター
Le Orme

2018年5月、ゴールデンウィーク明けの日本をイタリアン・プログレッシヴ・ロックの叙情の風が通り抜ける。

レ・オルメはヴェネツィア本島の対岸にあるマルゲラで1966年に結成。半世紀以上のキャリアを誇るベテラン・バンドだ。厳密な意味でのオリジナル・メンバーは現在のラインアップにいないものの、1968年のデビュー・シングル「Fiori e Colori」発表後に加入したドラマー、ミキ・デイ・ロッシがバンドの象徴的存在として舵を取り続けている。

2012年4月に“イタリアン・プログレッシヴ・ロック・フェスティバルVol.2”での初来日公演は、驚きと喜びをもって迎えられた。その一方でファンというのは貪欲なもので、イ・プーとの2バンド・ショーだったことで演奏時間がやや短く、「もっと長いフル・ライヴを見たかった!」という声もあった。

そんなファンの要望に100%以上の形で応えるのが、2018年5月の来日公演だ。東京・マイナビBLITZ赤坂(通称・赤坂ブリッツ)での2デイズ。初日の5月8日(火)は『包帯の男 Uomo di Pezza』(1972)、9日(水)は『フェローナとソローナの伝説 Felona E Sorona』(1973)という彼らの2大名盤をそれぞれ完全再現するという日替わりの構成である。

レ・オルメを代表する名盤2作として甲乙付けがたい評価を得ているのが『包帯の男』と『フェローナとソローナの伝説』だ。

包帯の男(1972)
包帯の男(1972)

デビュー当時はサイケなビート・サウンドを志向していた彼らだが、セカンド『コラージュ Collage』(1971)でよりプログレッシヴな方向性に開眼。同作がイタリアの国内チャートTOP10入りを果たしたことで、さらにその路線を突き詰めたのが『包帯の男』だった。バッハをモチーフとした「ノーヴァ」から叙情派の「子供たちの遊戯」、聴く者の焦燥感を煽る「精神錯乱」まで起伏に富んだこのアルバムは何と国内チャートでナンバー1の座を獲得している。

フェローナとソローナの伝説(1973)
フェローナとソローナの伝説(1973)

『フェローナとソローナの伝説』はさらに“プログレッシヴ”なアプローチを前進させた作品だった。惑星フェローナと惑星ソローナの物語を描いたコンセプト・アルバムである同作はさらにインストゥルメンタル・パートを強化。少なくないファンから“最高傑作”と評価されており、オリジナルのイタリア語ヴァージョンだけでなく、世界進出を視野に入れてピーター・ハミルが歌詞を提供した英語ヴァージョンも発売された(ただ正直、英語ヴォーカルはしっくり来ない)。2016年には再レコーディング・ヴァージョン『フェローナとソローナの伝説2016』も作られた。

興味深いのは、両作のジャケット・アートワークの色彩が文字通りアルバムのカラーを決定していることだ。『包帯の男』ジャケットのぬいぐるみ男(uomo di pezzaのpezzaはbambola di pezza=ぬいぐるみを指す。よって“包帯の男”という訳は正しくない...という説もある)は暖色のオレンジ色で、音楽性もヒューマンな暖かみを感じさせる。それに対して『フェローナとソローナの伝説』には凜とした緊張感が全編みなぎっており、ブルーのジャケット・アートが似合っている。

両作とも音楽とジャケットが共鳴しあい、高めあっている。もしピンク・フロイド『原子心母』のジャケットが牛でなかったら、かなり印象は異なったものになっていた...とはよくいわれるが、レ・オルメの2大名盤についても同じことが言えるだろう。

Michi Dei Rossi
Michi Dei Rossi

2日間のライヴはそれぞれ“第一夜:『包帯の男』再現公演+ヒッツ”と“第二夜:『フェローナとソローナの伝説』再現公演+ヒッツ”と銘打たれている。おそらく“ヒッツ”には、その日再現演奏されないアルバムからの曲も含まれるだろうし、現時点で最新スタジオ・アルバムの『シルクロード〜東方に馳せる夢 La Via Della Seta』(2011)からの楽曲も披露されるかも知れない。

ミキ・デイ・ロッシ(ドラムス)、ミケーレ・ボン(キーボード、ヴォーカル)、アレッシオ・トラペラ(ベース、ヴォーカル)という布陣で、2018年3月にはデヴィッド・クロス(元キング・クリムゾン)とのイタリア・ツアーも敢行。レ・オルメの日本公演は、イタリアン・プログレッシヴ・ロックの半世紀におよぶ伝統と、現役バンドの熱気を兼ね備えた2夜となる。

【LE ORME Japan Tour 2018】

会場:東京・マイナビBLITZ赤坂

●第一夜:「包帯の男」再現公演 + ヒッツ

5月8日(火)  開場18:00/開演19:00

●第二夜:「フェローナとソローナの伝説」再現公演 + ヒッツ

5月9日(水)  開場18:00/開演19:00

公演公式サイト M&Iカンパニー http://www.mandicompany.co.jp/LeOrme.html

【関連リリース】

レーベル日本公式サイト ヴィヴィッド・サウンド・コーポレーション http://www.vividsound.co.jp/item_show.php?lid=4540399262659

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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