今週末から週明けの西日本は三兄弟の末っ子・台風14号に警戒 台風の特異日といわれた9月17日
台風14号の接近
沖縄県先島諸島を暴風に巻き込んだ台風12号が東シナ海を北上し、中国大陸で温帯低気圧に変わりそうですが、小笠原近海の台風14号が西進して沖縄や西日本に接近しそうです(図1)。
台風が発達する目安とされるのが海面水温27度ですが、台風14号は29度以上の暖かくてエネルギー源である水蒸気が多い海域を進む予報です。
最低中心気圧970ヘクトパスカル、最大風速35メートル、最大瞬間風速50メートルの強い台風にまで発達して接近の見込みです。
図2は、各地の台風14号による暴風域に入る確率です。
暴風域に入る確率のピーク値からみると、鹿児島県奄美地方に台風14号が最接近するのが9月17日(土)夜遅く、鹿児島市は18日(日)の朝、長崎市は18日の夜遅く、高知市は19日(月)朝ということになります。
昔、台風の特異日として、9月17日と9月25~26日が言われていましたが、2つの特異日の中間の、18日夜~19日に九州に上陸するかもしれません。
台風上陸の特異日
一年のうち、ある特定の日に、その前後の日と比べ、偶然とは思われないほど特定の気象状態になることがあります。
これを特異日といい、原因がわかっていないものも多いのですが、大気の大きな流れが連続的に変化しているのではなく、急に変わることによるものといわれています。
この現象は昭和初期(1930年代)にドイツのシュマウス(A. Schmauss)が研究し、中には偶然に現れる特別な意味がないものがあっても、少なくともいくつかは統計的に有意性が高いことを確かめています。これが特異日(英語ではsingularity)です。
日本の特異日には、正月の好天(1月4日~5日)や、秋晴れ(11月3日)などがいわれていますが、台風の特異日(9月17日と9月25~26日)というのもあります(表1)。
ただ、この中で、台風の特異日(強い台風が襲来しやすい日)というのは少し異色です。
というのは、特異日はもともと統計の話です。多数の例数がないと統計的に意味がある結果がでません。強い台風が襲来して大きな被害が発生した台風が上陸した日に特異日があるかどうかということを議論するには、例数が少なすぎます。
ただ、昭和34年(1959年)の伊勢湾台風が襲来すると、10年前の洞爺丸台風の上陸日が同じ9月26日であるなど、当時の大災害をもたらした顕著な台風の上陸日は、9月16日から17日と、9月25日から27日に集中しており、この頃の特定の日が「台風の特異日」と言われだしました(表2)。
ただ、資料が集まってくるにつれ、特定の日に集中しているわけではないことがわかり、台風の特異日という考え方はなくなっています。
ただ、防災効果はあります。過去に大きな被害が発生したことを思い出し、防災関係者だけでなく、多くの人が防災活動をするという効果です。
例えば、昭和36年(1961年)に室戸台風によく似た第2室戸台風が襲来した時、特異日の頃の9月16日に上陸ということから、防災関係者だけでなく、多くの人々が危機感をもって台風に備えています。
第2室戸台風は、大阪湾に大きな高潮が発生するなど、室戸台風並みの物的被害がでましたが、死者は202名と人的被害は大きく軽減されました。
第2室戸台風直後の週刊誌(サンデー毎日)に、「まだ不十分の点もあるが、今回はまずまずの採点が与えられる。不意に室戸猛台風に襲われた時代に比べると夢のような進歩といえる」という記事があります。
若い時に先輩の予報官から「大きな台風が来たら4桁の死者は覚悟した」と聞いたことがあります。
今から見ると、200名以上の死者は、とんでもない数字ですが、当時は、夢のようと感じた数字だったのです。
タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:気象庁ホームページ。
表1の出典:饒村曜(平成8年(2000年))、気象のしくみ、日本実業出版社。
表2の出典:「新田尚監修、酒井重典・鈴木和史・饒村曜編集(平成27年(2015年))、気象災害の事典、朝倉書店」をもとに筆者作成。