『ジョジョの奇妙な冒険』承太郎のスタンド・スタープラチナはどれほど強いのか?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。
『ジョジョの奇妙な冒険』といえば、気になるのは「スタンド」だ!
スタンドは物語の最初から出てくるわけではなく、登場するのは第3部『スターダスト クルセイダース』から。ジョセフ・ジョースターによれば、それは生命エネルギーが作り出す「パワーある像(ヴィジョン)」で、「そばに現れて立つ」ことから「スタンド」と名づけられたという。
スタンドには、次のような特徴があるようだ。
①1人につき、スタンドは1体。スタンドを操る人を「スタンド使い」という
②スタンドは特殊な能力を持ち、その姿は人間、動植物、乗り物などさまざま
③スタンド使いから離れるほど、スタンドの能力は弱くなる
④スタンドが傷つけば、スタンド使いも傷つく
⑤スタンドを倒せるのはスタンドだけ。一般の人にスタンドは見えない
なかでも注目のスタンドは、もちろん空条承太郎のスタープラチナだ。
すごいパワーとスピードと、正確な動きの持ち主。射程が短いので、いつも承太郎の近くで「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」と雄叫びを上げて活躍する。
「承太郎はやかましくないの?」と心配になるけど、いま考えたいのはそれではない。「最強のスタンド」ともいわれるスタープラチナの能力である。
◆海に落ちる前に殴り倒す!
筆者が目を見張ったのは。そのスピードだ。
たとえば「暗青の月(ダークブルームーン)」というスタンドが、人質を抱えて帆船から海に飛び込もうとしたとき、承太郎はスタープラチナを出現させた。
スタープラチナは、海に向かって落下中の「暗青の月」に追いつくと、パンチを連打! 敵のスタンドを海面に叩きつけ、海に落ちる前の人質を救った。
恐るべき行為である。「甲板から海に落ちるまで」という短い時間に、相手のスタンドをボカスカ殴りつけたのだ。「暗青の月」のスタンド使いも「ら……落下するより早く こ 攻撃してくるなんて……」と驚いていたが、まったく同感だ。
この場合、落下の時間はどれほどか? 帆船の乾舷(海面から上甲板までの高さ)を5m、手すりの高さを1mとするなら、「暗青の月」は、手すりを越えてからわずか1.1秒で海面に落ちる。
承太郎が状況を把握するのに0.5秒、スタープラチナの出現に0.1秒かかったとしたら、残りは0.5秒しかない。しかも承太郎は手すりから10mほど離れていたから、スタープラチナは海面までの6mと合わせて16mも移動したことになる。
ここから計算すると、「暗青の月」に追いついた瞬間の速度は時速230km。加速の勢いは、自由落下の13倍だ。そんなスピードで現れたヤツに、ボカボカぶん殴られたら、そりゃあ「暗青の月」もたまらんでしょうなあ。
◆いったい何発殴ったのか?
スタープラチナで印象的なのは、やはり「オラオラオラ」と叫びながらの連打である。マンガのコマにはたくさんの拳が描かれ、フキダシには「オラオラオラオラ」の文字がいっぱい躍る。
卑劣な「鋼入り(スティーリー)のダン」を殴ったシーンの「オラ」を全文引用すれば「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーッオラアアアアアアアアァァァァァオラオラオラオラオラオラオオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーッ!!」。少なくとも53回は「オラ」と言っています。
しかし声だけでは、どれほどの攻撃をしたのか判然としないので、拳の描写に注目しよう。
1コマに描かれた拳がもっとも多いのは、意外にも弱そうなヌケサク(女子に化けて近づくようなヤツ!)との戦いで、拳の数は16個もあった。
これを「残像によって、それだけの拳が見えている」と考えるなら、人間の目に残像が残る時間は0.1秒といわれるから、ヌケサクはたった0.1秒間で16発も殴られたことになる。0.1秒とは瞬きする時間と同じであり、1発のパンチにかかる時間は160分の1秒だ。
筆者の体の動きを元に、スタープラチナの身長を2m(身長195cmの承太郎より一回り大きい)と仮定して計算すると、その拳は67cm動くと思われる。
するとパンチの平均速度は67cm×160=秒速107m。パンチのように止まった状態から動く場合、最高速度は平均速度の2倍となって秒速214m=時速772km! スタープラチナの体重が150kgなら、パンチ1発で直径1m13cm、重量2.1tの岩が砕け散る。そんなパンチを、瞬きするあいだに16発も!
ということは、スタープラチナのラッシュが1秒続いたなら160発! 10秒続いたなら1600発! いかにヌケサクとはいえ、ここまでやられると気の毒である。
◆ピストルの弾丸を止めた!
そして科学的に考えるなら、スタープラチナのオラオラはもっと速い可能性がある。注目は、第3部の冒頭のシーンだ。
警察の留置場に収監されていた承太郎は、警官の拳銃を奪うや、自分の頭に向かって発砲した。が、弾丸が承太郎の頭に当たる直前、スタープラチナは親指と人差し指でそれを挟んで止めたのだ! これは本当にすごい。
銃口と頭は5cmほどしか離れていなかったから、止めた場所が、銃口から3cmのところだったとしよう。このピストルが「ニューナンブM60」だった場合、初速は秒速288m。その弾丸が3cmの距離を飛ぶ時間とは、0.000104秒だ。
スタープラチナが発射後0.00005秒で反応し、残る0.000054秒で手を50cm動かしたとしたら、手を動かした平均速度は秒速9230m=マッハ27。
すると最高速度は2倍のマッハ54であり、その場合0.1秒で1376発もオラオラできるはずである。1秒殴り続けたら1万3760発オラオラで、10秒連打したら13万7600発オラオラ!
いやもう、アキレるほど強いスタープラチナの「オラオラオラオラオラオラオラオラ」なのだ。「最強のスタンド」といわれるのも当然であります。