VW最小のGTI登場! UP!GTIをニースで試す。
前回お届けしたポロGTIの弟分
前日に前回お届けしたVW新型ポロGTIを試乗し、その翌日にUP!に追加されたGTIをニース〜モナコで試乗した。UP!は現在のVWでは最もコンパクトなモデルだが、そのGTI版であるUP!GTIは、初代ゴルフGTIとほぼ同じボディサイズや性能を有しているという。初代ゴルフGTIが登場したのは1975年と今から43年前のこと。当初のゴルフはVWで最もコンパクトなモデルだったが、43年の間にポロ、そしてUP!というさらにコンパクトなモデルが用意され、ゴルフは今や大衆車の領域にギリギリ踏み止まる上級モデルともいえる存在となった。そうして今回UP!に追加されたGTIが初代ゴルフGTIとほぼ同サイズなのだから、時代はいかに自動車を成長させ大型化してきたかも分かる。
話はそれたが実際にUP!GTIの開発スタッフは、初代ゴルフGTIを意識してきたようだ。かつてのゴルフGTIは大衆車ながら、高級車の独壇場だったアウトバーンの追い越し車線を走れる高い性能が与えられたことで、アウトバーンに民主化をもたらしたと言われる存在。そんな初代ゴルフGTIのスピリットが、現代のスーパーコンパクトにもオマージュされている。
UP!GTIはひと目みてVWのGTIであるエレメントがそこかしこにちりばめられている。この辺りは動画で一目瞭然だが、例えばGTIのロゴやバッチ、赤いストライプ等が与えられる他、フロントグリルは専用の造形であり、その他大径ホイールやルーフエンドのスポイラーなどの専用装備が与えられる。一方インテリアでは、おなじみのチェック柄のスポーツシートに始まって、各部へのレッドステッチが施されるなど、GTIの設えが展開されている。
ついにガソリンエンジン用粒子フィルターを装着
そんなUP!GTIに搭載されるエンジンは、ポロやゴルフにも搭載されている999ccの3気筒直噴ターボTSI。最高出力は115psを5000〜5500rpmの間で発生し、最大トルクは200Nmを2000〜3500rpmの間で発生しており、これに6速MTが組み合わされている。
またこのエンジンはガソリンエンジン用粒子フィルターを装着した最初のモデルでもあり、粒子排出量を最大95%も削減しているという。つまりガソリン・エンジンにもさらなるクリーンな性能が求められるようになり、今後自動車メーカーはこれに対応していくということである。加えて燃費性能だが、新たなWLTP値で約17.5km/Lとされており、これは今までの欧州複合モード換算では、約20.8km/Lに相当するものとなっている。一方で0−100km/h加速は8.8秒、最高速は196km/hを実現している。ここからもコンパクトながらヤンチャな性能が与えられていることがわかる。
そんなUP!GTIを走らせての第一印象は、想像以上にコンフォート! ということ。この辺りは動画を参照にしていただけると良いだろう。さらにエンジンでユニークなのはエグゾーストノートが3気筒独特のビートが重低音を伴って届けられること。その様はどこかV8エンジンにも似たようなドロドロとした響きが加わっている。この辺りも動画で確認いただきたい。
ハンドリングもスポーツドライビングから街乗りまでをこなす味付けで、実に絶妙なところに落としどころを見つけている。先に意外なほどにコンフォート性能が高いと記したが、その乗り味は全体的にスパルタンさよりも質の高いスポーティさが追求されており、それはエンジンにもいえる。単に高性能というより、どこからでも使えるフレキシビリティとスポーツテイストを兼ね備える。そしてこの感覚はどこかで感じたものと考えると、同時に試したポロGTIや、GTIの元祖であるゴルフGTIに共通するテイストであると気づくわけだ。
GTIブランドの確立
UP!GTIは、VWのGTIの中では最もヤンチャな1台ではあるけれど、他のGTIモデル同様に、キッチリと「日常性を犠牲にしないスポーツモデル」を実現していた。
そして結論づければ、今回ポロGTIとUP!GTIの2台を試して、VWが築き上げてきた「GTIブランド」が、より確固たるものとなった、と感じたこと。つまりUP!、ポロ、ゴルフと3台でGTIを設定したことによって、「日常を犠牲にしないスポーツモデル」というGTIのフィロソフィーが、しっかり確立できたわけだ。
普段使いを厭わずに、いざ楽しもうと思うと存分に自動車の魅力である走る曲がる止まるを味わうことができる1台。VWはそうしたGTIブランドを確立することで、スポーツモデルのブランド価値を高めていくのだろう。