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VW新型ポロGTIを、南仏ニースで試す。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

まもなく日本上陸を果たす、新型ポロの最強モデルに早くも触れた

 フランスのニースで、まもなく日本でも発売が予定されているVWポロの最強バージョンであるポロGTIを試したので早速レポートしたい。VWポロGTIは、ポロとしては6世代目となる新型に、つい最近本国でラインナップされたモデル。日本ではこの春から発売が始まると言われる新型ポロだが、今回試したのは最近追加された最強バージョンであるスポーツモデル。それだけにまずは、今回試乗したGTIを語る前にベースとなる新型ポロそのものについて少し触れる必要があるだろう。

 実際に今回、ポロGTIの試乗と合わせて、1.0Lの3気筒ターボTSIを搭載するノーマルモデルにも試乗することができたのだが、このノーマルモデルの出来がまず圧巻だったのである。というのもポロといえば、セグメント的には欧州Bセグメントに属すモデル。日本のコンパクトカーでいえば、トヨタのヴィッツやスズキのスイフトなどと同じクラス、である。しかしながら、その仕上がり具合はひとつ上のセグメントと比べた方が良いのでは? と思えるほど優れた完成度を示していたのだ。もっともこうした印象は、先代ポロに初めて触れた時にも感じた印象とほぼ同じなのだが、今回はさらに先代の印象を更新し、もはや1クラス上のクルマ? と思えるほどの進化を果たしていたのだ。

新世代のアーキテクチャを採用

 そうした進化に貢献しているのが、今回のポロで初めてVWの新世代アーキテクチャであるMQB A0(=ポロクラス用)が採用されたことだろう。実際、ありとあらゆる部分の完成度が極めて高いのが特徴だ。さらにボディサイズでみれば新型ポロはもはや、かつてのゴルフ4と同等以上にまで成長しており、そこからもクルマとしていかに進化したかが分かるというものである。

 例えば内外装は写真からもわかる通りで、外装に関してはこのクラスとは思えぬ精緻なキャラクターラインが入り、いかに高い技術でパネルが作られたか=お金がかかっているかがわかる。室内を見ると、ダッシュボードにはしっかりソフトパッドがおごらられる上に、エアコン吹き出し口等にもメッキパーツを入れるなど、徹底して高品質を感じさせる作りが実現される。

 走り出すとさらに驚く。まず、乗り心地がとても良い。フラットな姿勢を常にキープして、操作に対するクルマの反応が上級クラスを思わせる落ち着きを感じさせる。加えて静粛性も高く、今回はスタッドレスタイヤを履いていたにもかかわらずロードノイズは少なく、スタッドレスタイヤ特有の振動等もしっかりカットしていた。加えてゴルフ譲りの、相変わらずのステアリングフィールの滑らかさとしっかり感。それだけにこの時点でもう、「ゴルフを超えた?」と思えたほどだった。そんな具合で圧倒的な進化を見せる新型ポロGTIに、期待は当然高まる。

 ポロGTIの内外装に関しては、実際に動画を参照していただくのが早いだろう。またその走りに関しても、動画で確認いただければ幸いだ。

ついに2.0Lの直噴ターボエンジンを搭載

 今回最大のトピックは、搭載エンジンが実に2.0Lの排気量を持つ直列4気筒直噴ターボのTSIを採用したこと。今回のエンジンはEA888型の第3世代にあたり、現在のゴルフGTIに搭載されているものより世代が新しい。最高出力は200psを4400〜6000rpmで発生し、最大トルクは320Nmを1500〜4400rpmで発生する。トランスミッションは現時点で6速DSGとなるが、今後は6速MTも用意するという。ちなみに現在の6速DSGとの組み合わせでは、0−100km/h加速を6.7秒でこなし、最高速は237km/hに達する。それでいながら、燃費性能は欧州複合モードで5.9L/100kmだから、日本的にいえばリッター16.9kmと、かなり燃費にも優れているエンジンである。

 走りの印象は再び動画に譲るが、今回の試乗車はオプションで用意されるアダプティブダンパーを備えた“スポーツセレクト”仕様のサスペンションが備わっていたのがポイント。これは電子制御でダンパーの減衰力を可変するものだが、ゴルフGTIに装着されているDCCのように動的に可変するものではなく、ノーマル/スポーツの2種類の減衰力切り替え式となる。またこのスポーツセレクト仕様では、アダプティブダンパーが備わる他に、フロントのスタビライザーがノーマルよりも大径となる他、フロントのステアリングロッドやリアアクスルのコントロールロッドも強化され、車高が15mm低く設定される。ちなみに標準のスポーツサスペンションは、ノーマルのポロに対してスプリング、補助スプリング、ショックアブソーバー、アンチロールバーに専用のチューニングが施される。車高は同じく15mm低く設定されている。

 さらにシャシー関係ではゴルフGTIと同じように、高速でコーナリングした際にトラクション性能を最適化してくれるXDSディファレンシャルロックが標準装備されている。加えて装着されるミシュラン・パイロットスポーツ4は215/45R18サイズ。ついにポロGTIにも18インチが装着される時代になった。しかしながら18インチ化されたポロGTIは、日常性を犠牲にせずに楽しめるクルマという、GTIグレードとしての流儀を感じる仕立てとなってる。

日常を犠牲にしないスポーツモデル

 実際に今回、様々なシーンで走らせてみて感じた僕の印象の多くを占めるのは、「とても良いクルマになった」というもので、決して痛快なスポーツモデル、という印象ではない。しかし面白くないかというとそうではなく、実に高いレベルの快適性を担保しつつも、高いスポーツ性を備えており、かなり上質なスポーツモデルに仕上がっていると評価できる。とはいえ、ゴルフGTIなどと比べるとやはり弟分だけあって、よりキビキビとした身のこなしの軽さはあるし、コンパクトであるがゆえの楽しさ気持ち良さは失われていないことも付け加えておきたい。

 そして結論づければ、今回ポロGTIを試して感じたのは、VWが築き上げてきた「GTI」というブランドというものが、より確固たるものとなった、ということ。それはつまり、「日常を犠牲にしないスポーツモデル」を、確立したことの証。日常生活での足としての扱いやすさをキープしつつ、いざ走りを楽しもうと思ったときには存分に「走る曲がる止まる」という自動車本来の魅力を味わえるモデルであり、それを送り出すブランド。そんな風に思わせるのが新型ポロGTIであり、VWにおけるGTIと感じたのである。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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