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オンライン授業は非常時だけの措置とした文科省の通知で、学校と教員は新たな負担を強いられる

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 文科省は19日、オンラインを活用した家庭学習の取り組みについて都道府県の教育委員会などに通知した。それによれば、オンライン授業は「感染症や災害などによって、子供たちが登校できないような非常時に限った『学びの保障』措置」だという。

 つまり、非常時だけの特例措置としてしか認められないわけだ。家庭でのオンライン授業が日常的に活用される道は、これで閉ざされたことになる。

 それでも1人1台ICT端末が実現すれば、それを家に持ち帰ることも可能となる。せっかく持ち帰ったICT端末を有効に活用するために、オンライン授業の可能性をもっと探ってみてもいいのではという気もするが、文科省は早々と家庭でオンライン授業を受ける選択肢を潰してしまった。

 ICT端末の持ち帰りを否定しているわけではない。通知には、「非常時を想定して」として「自宅等においてもICT を活用して学習を継続できるよう環境を積極的に整えることが重要」と明記されている。

 非常時に備えて、ICT端末を使える家庭環境を整えるように求めているわけだ。ICT端末については、家への持ち帰りを認めるのか、学校で保管するのか議論があった。それには、決着をつけたかたちである。

 平時のオンライン授業は正式な授業とは認めないが、非常時に備えて「訓練」しておけというわけだ。新たに「訓練」のための時間を確保し、手間をかけなければならないことになる。

 そうした時間と労力の捻出を、文科省としてはどう考えているのだろうか。そこは、またもや学校や教員への「丸投げ」なのだろうか。

 非常時におけるオンライン授業については、「学習の状況や成果は、学校における学習評価に反映することができる」としている。非常時に学習評価に反映できるのなら、平時でのオンライン授業も学習評価に反映させることは不可能ではないはずだ。

 せめて「訓練」が学習評価に反映できる授業として認められれば、授業のほかに「訓練」という余計な時間を設ける必要はなくなる。

 今回の通知は、文科省が新たな負担を学校と教員に強いることにしかならないのではないだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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