なぜチェルシーはポッターを解任したのか?大型補強と必要な結果のバランス。
結果が伴わなければ、変化というのは必要だ。
チェルシーが、グレアム・ポッター監督の解任を決めた。チェルシーは現在、プレミアリーグで12位に位置。チャンピオンズリーグ出場圏内にいる4位マンチェスター・ユナイテッドとは勝ち点12差で、大きく引き離されている。
「クラブの全員の名前をもって、ポッターに感謝を伝えたい。彼のこれまでの貢献に感謝したい。監督として、人として、彼のことをリスペクトしている。常にプロフェッショナルな振る舞いをしてくれた。この結果を残念に思う」とはオーナーのトッド・ベーリー氏の言葉だ。
「シーズン終了まで、我々はファンと共に(後任のブルーノ・)サルトールを全力でサポートする。プレミアリーグの10試合とチャンピオンズリーグの試合が残されている。できるだけ良い形でシーズンを終えられるように、これからの試合に全力を尽くす」
■シーズン途中に2度目の監督交代
チェルシーで、今季、2度目の監督交代だ。
チェルシーはシーズン序盤にトーマス・トゥヘル監督(現バイエルン・ミュンヘン)を解任している。プレミアリーグで6試合を消化して6位に位置していたチーム状況で、監督交代が行われた。
チェルシーはブライトンからポッター監督を引き抜くために、違約金の2000万ユーロ(約28億円)を支払った。これは当時、バイエルン・ミュンヘンがユリアン・ナーゲルスマン前監督を招聘するために支払った2500万ユーロに次いで、史上2番目のレコードの額だった。
だがチェルシーの調子は上向かなかった。
チェルシーは、前述の通り、プレミアリーグで低迷している。FAカップとカラバオ・カップでは早期敗退。実質的に残されているタイトルはチャンピオンズリーグのものだけだ。
ポッター監督はチェルシーで、31試合で指揮を執った。戦績は12勝8分け11敗。ブライトンを素晴らしいチームに仕立て上げたポッター監督だが、チェルシーでは苦しい流れを断ち切れなかった。
■大型補強の成果
チェルシーは今夏、オーナーが交代した。ロマン・アブラモビッチ氏がロシアとウクライナの政治情勢の影響でクラブを去り、新たにベーリー氏が就任した。
チェルシーはベーリー氏の下、大型補強を敢行している。今冬のマーケットでは、移籍金1億2100万ユーロ(約169億円)でエンソ・フェルナンデスを、移籍金1億ユーロ(約140億円)でミハエル・ムドリクを獲得した。
チェルシーは2022−23シーズン、補強費として6億1100万ユーロ(約855億円)を投じている。これだけの額を使っているのだ。結果が求められるのは当然かもしれない。
とはいえ、スター選手をひとつのチームで的確なピースとして嵌めていくのは簡単ではない。
「結果が付いてこないというのは、非常に困難だ。周囲の人々は、私(監督)が問題だと考えているだろう。それは完全に正しいわけではないが、理解できるものだ」
「私が驕っていると受け取って欲しくはない。だが、私の仕事はチームを助け、難しい時期を乗り越えられるように、努力することだけだ」
これはポッター監督のコメントである。
難しい時期――。指揮官が言及したように、チェルシーは過渡期を迎えている。オーナーの交代、監督の交代、大型投資…多くの変化があるなかで、結果を出さなければいけないというジレンマがある。
しかし、状況は待ったなしだ。フットボールは止まらない。チャンピオンズリーグでは、準々決勝で欧州王者レアル・マドリーと激突する。後ろを振り返る間もなく、チェルシーは前に進む。