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6月を子宮体がん啓発月間に 増加する子宮体がんに危機感 国際婦人科癌学会が呼びかけ

片瀬ケイ在米ジャーナリスト、翻訳者、がんサバイバー
6月は子宮体がん啓発月間。更年期前に知っておいて。(画像はIGCS作成、提供)

子宮体がんを忘れないで

 同じ子宮のがんでも、子宮体がんと子宮頸がんは大きく違うって知っていますか? HPVワクチンで予防できるのは子宮頸がんで、また自治体が行っている子宮がん検診も、子宮の入り口にできる子宮頸がんを見つけることが主なターゲットです。

 子宮上部のふくらんだ部分は「体部」と呼ばれ、その中にできるのが子宮体がんです。ほとんどは内側の子宮内膜から発生するので、子宮内膜がんとも呼ばれます。

 子宮体がんは世界的にみて女性が罹患するがんとしては6番目に多く、北米や欧州など先進国では婦人科がんの半数近くを占めているのだそうです。2020年には世界中で約41.7万人が子宮体がんを発症し、9.7万人が死亡しています(注1)。

 また子宮体がんの罹患率、死亡率ともに増加傾向にあるため、今年から6月を子宮体がん啓発月間に設定して、全世界で子宮体がんをもっと知ってもらう取り組みを行うことを国際婦人科癌学会(IGCS、藤原恵一会長)が提唱しました。

 子宮体がんは主に閉経後の人に発症するので、40歳代後半から増えはじめて50歳代から60歳代が発症年齢のピークとなります。子宮体がんの発症には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっているといわれ、脂肪細胞はエストロゲンを分泌、貯蔵するので肥満がリスク要因の一つです。

 そのほか、糖尿病、乳がんや卵巣がん、大腸がんの既往歴や家族歴、また初経が早かったり、閉経が遅かったり、妊娠期間がなかったりしてエストロゲンの影響を受ける期間が長期化することなどもリスク要因となります。遺伝子変異によるリンチ症候群の場合も、大腸がんと子宮体がんを含む婦人科がんを発症するリスクが高くなります(注2)。

増加が続く子宮体がん

 アメリカがん協会によれば、米国では2016年から2020年までに子宮体がんへの罹患率は、50歳未満の女性で毎年2%、50歳以上の女性で毎年1%の割合で増加し、死亡も毎年0.7%増えています。日本でも子宮体がんの罹患率および死亡率は増えており、「最近40年間で子宮体癌の罹患率は10倍以上になった」(藤原IGCS会長)そうです。

 日本の国立がん研究センターの統計では、2019年には子宮体がんの新規罹患が1万7880件で、人口当たりの罹患率は10万人に対して27.6例でした。子宮頸がんの罹患率は10万人に対して16.8例なので、子宮体がんの罹患率の方が子宮頸がんの罹患率より高いのです。さらに2025年から2029年には子宮体がんの罹患件数が2万6940件に増えるという推計もあります(注3)。

 子宮体がんの主な初期症状は不正出血で、がんが子宮内にとどまっている範囲で手術をすれば8割以上は治癒を期待できます。それでも罹患者数が増加していることや、診断時にすでに進行していたり、子宮体がんの2割程度を占める悪性度の高いタイプだと治療が難しくなったりすることもあり、日本でも子宮体がんによる死亡件数は増加の一途です(下のグラフを参照)。

画像制作:Yahoo!ニュース
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 閉経前後の女性はいろいろな体の変化を経験するので、おりものに血がまじってもあまり深刻に考えなかったり、忙しい日々の中で婦人科に足を運ぶのがおっくうになったりする人もいるかも知れません。検査は子宮の内部に細い器具を挿入して子宮内膜の細胞採取するのが一般的で、婦人科の外来でできるので、気になることがあれば躊躇せずに医師に相談しましょう。

こんな時は婦人科へゴー

 受診のめやすについて、埼玉医科大学国際医療センター・婦人科腫瘍科 客員教授、国際医療福祉大学・産婦人科 特任教授でもある藤原恵一IGCS会長は、次のようにアドバイスします。

 子宮体癌の初期症状は、不正性器出血です。閉経後に出血があった場合は必ず婦人科を受診してください。

 閉経前でも、月経以外の出血が長く続いたり、断続的に続くような場合は、必ず婦人科を受診してください。その際、婦人科医からはホルモン異常の診断を受けるかもしれませんが、その治療を行ったにもかかわらず症状が続く場合は、そのことを婦人科医に伝えて、子宮体癌の検査をしてもらってください。

 また、子宮体癌の診断は、一度の検査で判らない場合もあります。繰り返しているうちに見つかることもあります。1回子宮体癌ではないと言われても、出血が続く場合にはそのことを伝えて、検査を繰り返してもらい、必要なら婦人科腫瘍専門医に紹介してもらってください。

 子宮体がんは不正出血などで早期発見がしやすく、早期に治療すれば治癒するがんです。この6月、特に更年期のことが頭をかすめる年代の女性には、ぜひ子宮体がんについて同世代の女性たちと話題にしてほしいと思います。

 家庭のこと、仕事のこと、親のことなど、みんなの面倒をみてとかく忙しい年代ですが、自分の体のケアを後回しにしてしまうと、あとで大変なことになりかねません。

 IGCSと世界各国の婦人科がん患者支援団体もこの6月、世界中で子宮体がんについて啓発を促し、子宮体がんの検査や治療の向上に向けたさらなる研究の必要性を訴えています(注4)。

IGCSの子宮体がん啓発資料 IGCS提供
IGCSの子宮体がん啓発資料 IGCS提供

参考リンク

注1 IARCのCancer Today統計サイト(英文リンク)

注2 がん情報サービス 子宮体がん

日本産婦人科学会 子宮体がん

日本婦人科腫瘍学会 子宮体がん

注3 国立がん研究センター がん情報サービス がん種別統計情報 子宮体部

将来推計を含む、各種集計表

注4 国際婦人科癌学会(IGCS)子宮体がん啓発キャンペーンのウェブページ(英文リンク)

在米ジャーナリスト、翻訳者、がんサバイバー

 東京生まれ。日本での記者職を経て、1995年より米国在住。米国の政治社会、医療事情などを日本のメディアに寄稿している。2008年、43歳で卵巣がんの診断を受け、米国での手術、化学療法を経てがんサバイバーに。のちの遺伝子検査で、大腸がんや婦人科がん等の発症リスクが高くなるリンチ症候群であることが判明。翻訳書に『ファック・キャンサー』(筑摩書房)、共著に『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)、『夫婦別姓』(ちくま新書)、共訳書に『RPMで自閉症を理解する』(エスコアール)がある。なお、私は医療従事者ではありません。病気の診断、治療については必ず医師にご相談下さい。

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