「イングランドはファウルを取らない」。ニューカッスルで初先発の武藤嘉紀が語るドイツとの違い
ニューカッスルの武藤嘉紀が、公式戦4試合目で初の先発出場を果たした。
8月29日に行われたノッティンガム・フォレスト(イングランド2部)とのリーグ杯2回戦で、武藤は4−4−2の2トップの一角として先発。192センチの長身FWホセルと2トップでコンビを組んだ。
しかし、予想に反して試合を優位に進めたのは、2部のノッティンガム・フォレストだった。チームを率いるのは、レアル・マドリード在籍時代にジョゼ・モウリーニョ監督のアシスタントコーチを務めたスペイン人のアイトール・カランカ監督。積極的なプレッシングを前に、ニューカッスルは開始2分で先制ゴールを許してしまう。その後もチグハグで噛み合わないプレーが目立ち、なかなかチャンスを作れなかった。武藤は振り返る。
「先制点もそうだけど、集中して入れてなかった。前半はひとりひとりのミスも多かった。失点したにもかかわらず、(中盤以下の選手が)引いていた。俺とホセルは前から(プレスに)行きたかったけど、後ろがついて来ない。もうどうしようもない感じになって孤立した。後半になって、監督から『前から少し行け』と。監督は『前から前から(プレスに)行け』と言うけど、後ろがついて来ない。そして、2トップと中盤の間を使われて、簡単に抜かれ、ロングボールを入れられた」
その中で、武藤自身も難しさを抱えていた。スペースに流れたり、DFラインの背後に抜けようとするも、なかなかパスが出てこない。クロスが自分に入らず、両手を上げて苛立ちを露わにする場面もあった。前線にボールが入らないことから、中盤まで下がってボールを受け、素早くはたいてもう一度前線に走り込む工夫も見せたが、状況は変わらなかった。
「中盤に下りてきて、(ボールを)簡単にはたいて、というのを繰り返していた。それでもサイドの選手が下がっていて…。前の人数というか、勢いが少なかったです。あれだと、得点の入るチャンスっていうのは、だいぶ少なくなるんじゃないかなって思います」(武藤)
国内リーグ戦に比べるとリーグ杯は優先順位が落ちるため、出場機会の少ない若手や、チームに慣れていない新加入選手が出場することは少なくない。今回のニューカッスルでも、20歳MFショーン・ロングスタフや、22歳DFジェイミー・ステリーといった若手が先発メンバーに名を連ねた。即席チームの印象はどうしても強く、そうなるとチームとして連携面に問題が生じてくる。
武藤は前半に左サイドをスピードで突破したが、マーカーに倒されて転倒。後半にシュートを1本打ったが、大きなインパクトを残すことなく77分に交代を命じられた。そして、チームも1−3で敗戦。難しさを抱えながらの出場だったが、日本代表FWは反省の言葉を口にした。
「今日みたいな試合で一人輝いたり、結果を出さないと、主力組に入っていけないので、今日はもったいなかった。FWの一角として出ていたので、得点とアシストのどちらかは必ず取らなきゃいけなかったです。だから、今は悔しい気持ちです」
それでも、今回の先発出場の中で新たな発見もあったという。DFの守備対応と審判の判定基準にドイツとの違いがあると、武藤は説明する。
「ディフェンダーがしつこいというのを試合で感じられた。抜き切ったと思ったらまだまだついてきて、最後に足を引っかけられるみたいな。やっぱり、ああいうのはプレミアらしいというか、2部のチームらしいというか。
(イングランドは)ファウルを取らない。今日は特にひどかったと思うが、そういうことを感じられたのは非常に良かった。どこまでがファウルで、どこまでがファウルじゃないか。ドイツだったら、むしろ『頑張りすぎず、すぐ倒れろ』と言われていた。こっちでは、それが間違っているというか、絶対にしないほうがいい。ファウルがあっても流されるシーンが何回もあったので。だから、しっかり体を張る。とにかく、ファウルをもらいにいかないことを徹底しなきゃいけない」
現地時間の9月1日には、昨シーズンのリーグ覇者であるマンチェスター・シティーとプレミアリーグ第4節を戦う。武藤は強豪との一戦を「楽しみ」と語り、次のように言葉をつないだ。
「プレミアで一番強いチームとやれる。今日の試合で少し長く出て、自分の体がどういう状態にあるか分かった。体はむっちゃいい感じです。あとはこの空気に慣れるじゃないですけど、またレベルの違う相手になるので。むしろ、そういう相手の方が、自分は好きなので楽しみにしています。ポジションも取りにいかないといけないので、とにかく自分の全てをぶつけていきたい」
はたして、武藤に先発の機会は巡ってくるか。そして、マンチェスターCを相手に輝けるか──。試合は、マンチェスターCの本拠地エティハド・スタジアムで現地時間の午後5時30分にキックオフだ。