「惨敗。敗因はもっと根本的なところ」。三笘薫がプレミアリーグ首位のアーセナル戦で痛感した力の差とは?
「惨敗です」。0−2で敗れたアーセナル対ブライトン戦後、三笘薫は素直に完敗を認めた。
アーセナルの枠内シュート9本に対し、ブライトンはたったの1本──。アーセナルに圧倒された90分間だった。
三笘薫が所属するブライトンは、首位争いを演じるアーセナルと敵地で対戦。序盤からアーセナルにチャンスの山を築かれた。ブライトンは、ボールポゼッションこそ51%で互角の数字を叩き出したが、序盤から攻め込まれる展開が続いた。アーセナルのシュート数26本に対し、ブライトンの6本というスタッツからも、0−2のスコア以上に力の差が見えた。昨年9月に就任したロベルト・デゼルビ政権では、最も苦戦した一戦となった。
三笘のいる左サイドも例外ではなかった。アーセナルの右サイド、つまり三笘のいる左サイドではイングランド代表FWブカヨ・サカがプレー。ここまでアーセナル最多の公式戦8ゴールを挙げているサカに厳重なマークが必要だったことに加え、右SBのベン・ホワイトも攻撃に参加したことから、三笘は自陣深い位置まで守備に走った。特に前半はほとんど攻撃に加わることなく、自陣でディフェンスを続けた。
試合後、三笘は次のように振り返った。
「特に、前半はボールを握れなかった。まあ(失点)ゼロでしたけど、主導権を握れなかった。僕のプレー位置も全然違いました。そのためボールを奪っても、前に誰もいない状態になってしまった」
「(記者:アーセナルの印象は?)彼らは、守備のところで勇気を持って前に来ていました。それに対し、自分たちが相手のプレスを裏返せば(=剥がせば)よかったですけど、ちょっとつなぐ意識が強すぎて、何度もプレスに捕まってしまった。そこで自分たちがやりたいことに固執してしまったというか。もっと(プレス回避で相手DFラインの裏に)ロングボールを蹴れば良かったですけど、ちょっと難しかったです」
それでも三笘は、後半にチャンスを2度作った。ひとつは、CBルイス・ダンクのスルーパスを受けた三笘が、左サイドをドリブルで崩そうとした後半27分の場面。鋭い切り返しから縦に抜けようとしたが、マーカーのホワイトにペナルティエリア内で押され、転倒。シュートを打ち切れず、主審もノーファウルの判定で流した。
もうひとつは、後半37分のチャンス。ジョアン・ペドロからパスをもらい、日本代表MFは右足のアウトサイドでクロスボールを入れた。ドンピシャのタイミングでMFパスカル・グロスにあわせたが、シュートは惜しくもゴール左にそれた。
三笘はチーム全体の問題が敗因につながったと分析する。
「僕にも決定機があった。シュートを打ち切れなかった。チームとしてチャンスを作れない中で、その一つのチャンスを悔やむというより、自分たちがチャンスを作れなかったところが敗因だと思う。ミスを悔やむというより、もっと根本的なところ。デュエルに負けるとか、そういうところも多かった。もっと押し込んで、自分たちが自信を持ってやらないといけない。
コンディションの問題ではないんで。惨敗です。(記者:どのあたりに1番力の差を感じたか?) チャンスの多さですね。アーセナルは決定的なチャンスが何度もありました。 決まっていれば0−3、0−4のスコアでもおかしくなかった」
一方、ブライトンはアーセナル戦の3日前に欧州リーグの一次リーグ最終節でマルセイユと対戦した。1−0の勝利を収め、1次リーグ首位突破を決めている。欧州カップ戦初出場のブライトンにとって、またひとつクラブ史に残る偉業を成し遂げた。三笘はしみじみと語る。
「1歩1歩、大きなクラブになっているのは事実です。ここで欧州リーグのタイトルを取れたら、もっと大きな存在感というか、もっともっと大きなクラブになれると思います。(決勝トーナメントが始まる)ここからが勝負だと思います。(記者:目標は欧州リーグの頂点?) もちろんです」
なお三笘は試合後、アーセナルに所属する日本代表DF冨安健洋と言葉を交わしたという。冨安は12月2日に行われたウォルバーハンプトン戦で左ふくらはぎを負傷。ブライトン戦をベンチ裏で観戦し、試合後は取材エリアを立ち止まることなく通過した。1月12日から始まるアジア杯への参加が危ぶまれているが、三笘は冨安本人にエールを送ったという。
「まずゆっくり治してほしい。アジアカップには来て欲しいとは言いましたけど。彼もプレミアリーグで戦いたいと思いますし、急がずにしっかりと治して欲しいです」