「鎌田大地は見事な宝石」。元イングランド代表戦士から見た日本代表MFの強み、怖さとは?
日本代表MF鎌田大地が2日に行われたパラグアイ代表との強化試合で先発し、1ゴールを奪って4−1の勝利に貢献した。ゴール場面以外にもドリブル突破からチャンスを作るなど大きな存在感を示した。
筆者の住むイングランドで、その鎌田に熱視線が注がれた試合があった。欧州リーグ準決勝のウェストハム対アイントラハト・フランクフルト戦だ。ウェストハムのホームで行われた第1戦(4月28日)で、日本代表MFは1ゴールを挙げて勝利の立役者となった。
そして、フランクフルトの本拠地に移った第2戦(5月5日)で、英テレビ局が注目選手として取り上げていたのが鎌田だった。試合前に元イングランド代表MFのオーウェン・ハーグリーブス氏とジョー・コール氏が、日本代表MFの特性について語り合う場面があった。
司会者が「鎌田には怖さがあります。ウェストハムは彼をどのように抑えればよいでしょうか」と問いかけると、現役時代は守備的MFとしてバイエルン・ミュンヘンやマンチェスター・ユナイテッドでプレーしたハーグリーブス氏は次のように話した。
「ウェストハムとの第1戦で、鎌田は見事な宝石だった。鎌田は、スペースに入る動きが非常にうまい。すべての優れた選手に言えることだが、鎌田も攻撃を仕掛ける際にスペースを見つけるのが上手だ。スペースを見つけると体をくるっと半転し、(相手の守備陣にできる隙間の)ポケットに侵入して、決定的な仕事をする。相手からすれば捕まえるのが難しい。スペースに入れば良い走りで突破していた。第1戦は、鎌田がこの試合のベストプレーヤーだった。彼を抑えるには、ウェストハムに特別なプランが必要だ」
この意見に同調したのが、現役時代にチェルシーやウェストハムでプレーしたJ・コール氏である。元イングランド代表MFは次のように言葉を続けた。
「鎌田はゴール前のスペースに侵入する動きを頻繁に見せていたが、それがフランクフルトで求められている役割だ。ウェストハム側から考えれば、鎌田のような選手はスペースを必要としている。だから、スペースを事前に潰すことが必要だ。ウェストハムのセンターバックと守備的MFは距離を縮め、この日本代表MFの動きに注意しなければならない。ゴール付近では鎌田に5ヤード以上(約4.5メートル)のスペースを与えてはならない。彼はドリブル突破もできるし、ゴールにつながる危険なパスも出せるからだ」
チャンピオンズリーグや欧州リーグの舞台で、日本人選手が英メディアからこれほど大きな注目を集めるのも珍しい。欧州リーグで栄冠を掴んだフランクフルトで、鎌田はそれほどまで眩しい輝きを放っていたということだ。
鎌田はボールテクニックや視野の広さ、スペースの使い方などストロングポイントが多い選手だが、フランクフルトのオリヴァー・グラスナー監督が日本代表MFの持ち味を存分に引き出していることも大きい。
フランクフルトは3−4−2−1の両ウィングバックが高い位置にせり出し、チームとしてサイド幅を目一杯広く使っている。おかげで、鎌田のいる中盤中央にスペースができやすくなり、「ポジショニングの巧さ」や「スペースの使い方」といった日本代表の強みが大いに発揮されている。
グラスナー監督が鎌田を戦術にうまく組み込むことで、クラブでの活躍につながっている。
今回、日本代表の対戦相手だったパラグアイはコンディションが悪く、寄せも甘かったため、真剣勝負の場であるW杯に向けては参考にしにくいだろう。それだけに、日本代表では異質な存在である鎌田の特性を、森保一監督が今後どのように代表に組み込み、発展させていくか。監督として手腕が問われるところだろう。