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依然として残るホモフォビー

プラド夏樹パリ在住ライター
同性婚賛成デモ(写真:ロイター/アフロ)

今から5年前

2013年4月23日、フランスでは同性結婚が法的に認められるようになった。それまで、同性カップルが共同生活を公的に証明することができるのは、1999年以来実施されているパクスと呼ばれる民事連帯契約しかなかった。しかし、民事連帯契約では、パートナーが亡くなった場合、残された人は、遺書がなければ遺産を継ぐ権利はなく、また、遺族年金を受け取ることもできない。そのため、同性カップルも、異性カップルと同じ権利を持つことができる結婚の法制化を望んでいた。

以来、inseeの統計によれば40万の同性カップルが結婚し、全体の3.5%を占めている。民事連帯契約を結ぶカップルが減少したわけではないから、結婚とPacsは明らかに別物と考えられているようである。

この5年間、同性カップルはどのように生きてきたのだろうか?

「異性カップルと同じ権利を取得したことでやっと、社会の一員になったような気持ちがする。それ以来、人前で『うちの夫』と、パートナーのことを堂々と呼べるようになった」という人。

反対に、これまでプライヴァシーだった性的指向が、公的な場で議論されるようになったことで「傷ついた」と言う人もいる。「何もわかってない部外者に意見を言われるのはイヤ」と。

差別は依然として残る

2013年の春、同性結婚の法制化に先立ち、反対派の運動は熾烈を極めた。この国のいったいどこに、これだけ反動的な人々がいたのかと、私は驚いた。反対派は、特にキリスト教信者、イスラム教信者、そして右派の人々に多く、教会では、吐き出すかのように「胸糞悪い!」と言う人までいて、びっくりしたものだった。欧州でのホモフォビーの根元には、キリスト教では、生殖に結びつかないセックスは禁止されていたことがあり、意外に根深い。

時には、精神病といった扱いを受け、路上ですれ違いざまに「死ね!」と言われたりした人もいる。ホモフォビー発言や行為は、法制化された2013年、前年に比べて78%上昇したということだ。

昨年5月に発表された政府の人権保護局が出版した『性的指向とジェンダー差別に反対する』という小冊子によると、自分のホモセクシャリティーを職場で表現するとキャリアに響くと考えている人が1/3。51%の公務員と46%の民間で働く人々が、自分のホモセクシャリティーを職場で表明すると同僚に不愉快な思いをさせるだろうと考えている。

また、この1年で1/5が求職活動の際に差別されていると感じたことがあり、1/8が面接の際に性的指向に関する質問を受けている。ちなみに、就職面接に際して宗教や健康、性的指向について質問することは禁止されているのだが。

また、39%が職場で嫌がらせの言葉を言われたことがあり、50%が仕事場で差別されたと感じている。2/3が自分の性的指向を隠している。こういった心理状況では、十分に能力を発揮できないことから、ホモセクシャルの人々は、民間では6.5%公務員は5.6%給料が低いという報告もある。権利は上昇しても、差別は依然として残っている。

パリ在住ライター

慶応大学文学部卒業後、渡仏。在仏30年。共同通信デジタルEYE、駐日欧州連合代表部公式マガジンEUMAGなどに寄稿。単著に「フランス人の性 なぜ#MeTooへの反対が起きたのか」(光文社新書)、共著に「コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿」(光文社新書)、「夫婦別姓 家族と多様性の各国事情」(ちくま新書)など。仕事依頼はnatsuki.prado@gmail.comへお願いします。

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