イドリブ県に侵攻中のトルコ軍兵士30人以上が爆撃で死亡、1日の死者としては過去最高
ザーウィヤ山地方での爆撃でトルコ軍兵士30人以上死亡
イドリブ県では、英国に拠点を置く反体制系NGOのシリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機が27日、ザーウィヤ山地方のバーラ村とバイルーン村の一帯に配置されているトルコ軍の拠点を爆撃した。これによち、トルコ軍兵士少なくとも34人が死亡、多数が負傷した。
これに関して、反体制系サイトのEldorar.comは、爆撃を行ったのがシリア軍ではなく、ロシア軍だとしたうえで、トルコ軍兵士34人が死亡、数十人が負傷者したと伝えた。
トルコ政府の対応
トルコ国防省は27日、ツイッターの公式アカウントを通じて声明を出し、イドリブ県内に展開するトルコ軍部隊が爆撃を受けて、兵士2人が死亡、2人が負傷したとしたうえで、ただちに報復を行い、シリア軍兵士114人戦車3輌を無力化したと発表した。
しかし、トルコのハタイ県知事は報道向け声明で、トルコ軍兵士9人が死亡したと発表した。
トルコのエルドアン大統領は緊急国家安全保障会議を招集
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、イドリブ県ザーウィヤ山での爆撃を受けて、緊急国家安全保障会議を招集した。
会議にはフルシ・アカル国防大臣、メヴリュト・チャヴシュオール外務大臣、ハカーン・フィダン国家諜報機構(MIT)長官、ヤシャル・ギュレル参謀総長が出席した。
トルコ大統領府は会議後に声明を出し、「我が軍に対して武器を向けたシリアの政権に対しては同様の報復を行う。我が軍兵士の血は無に帰することはなく、シリア領内での我々の軍事活動は継続される…。イドリブ県で起きていることを我々はこれまでも、そしてこれからも傍観はしない。それはルワンダ、ボスニア・ヘルツェゴビナで起きていることと何ら変わらない」と発表した。
なお、トルコの首都アンカラで26日から行われていたロシア・トルコの軍・治安・外交関係高官会合は再び物別れに終わった。
アル=カーイダ主導の反体制派がトルコ軍拠点4カ所を解囲
イドリブ県ではまた、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構やトルコの庇護を受ける国民解放戦線(国民軍)などからなる「決戦」作戦司令室が、トルコ軍の砲撃支援を受けてM4高速道路沿線で東進を続け、サラーキブ市近郊のダーディーフ村、カフルバッティーフ村、ジャウバース村を新たに奪還した。
これにより「決戦」作戦司令室は、サラーキブ市近郊に設置されていたトルコ軍の拠点4カ所を解囲するとともに、同市を三方から包囲することに成功した。
これに対して、国営のシリア・アラブ通信は、シリア軍が同地でトルコから直接支援を受ける「テロリスト」との戦闘を続けているとしたうえで、シリア軍消息筋の話として、この「テロリスト」がシリア・ロシア軍航空機に対して米国製の携帯式ミサイル(shoulder-fired missile)を使用していると伝えた。
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シリア・ロシア軍の攻撃で民間人11人死亡
シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がイドリブ市一帯を爆撃し、カフルナブル市から避難してきた国内避難民(IDPs)の子ども1人が死亡、またシリア軍戦闘機もシャラフ村を爆撃し、女性3人と子ども1人が死亡した。
さらに、イドリブ市、ビンニシュ市ではシリア軍地上部隊の砲撃で、女性1人と子ども2人を含む6人が死亡した。
シリア軍はトルキスタン・イスラーム党の本拠地ジスル・シュグール市に迫る
SANAによると、シリア軍は「決戦」作戦司令室との戦闘の末、ハマー県北西部のハウワーシュ村、フワイジャ村、タンジャラ村、アンカーウィー村、アムキーヤ町、シール・マガール村、アリーマ村、イドリブ県のシャフシャブー山を制圧した。
シリア人権監視団によると、シリア軍はまた、ハマー県のザクーム村、イドリブ県ザーウィヤ山地方のハルーバ村、クーフイーン村を制圧した。
これにより、シリア軍は中国新疆ウィグル自治区出身者を主体とするトルキスタン・イスラーム党の本拠地であるM4高速道路沿線のジスル・シュグール市まで17キロの距離に到達した。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)