旧NHK党の代表分裂騒動の背景にうごめく年3億円超の政党交付金とは何だ。同党がふさわしいか材料を提供
旧NHK党(現在は政治家女子48党)の代表が誰かというもめごとが起きています。背景にあるのはやはりカネ。大津綾香氏側は過去の党資金運営に不透明な利用の可能性があるとして第三者委員会を作って調査するとし、大津氏に党首を譲った後に代表変更を訴える創設者の立花孝志氏は「瑕疵はない」と反発しています。
一連のゴタゴタに呆れ返った方々の多くから「こんな政党に税金がつぎ込まれているのはおかしい」との声が多数ネット上などで見受けられるのです。最大の収入が政党交付金。旧NHK党には今年度3億3443万円が支払われる予定。
本稿ではそもそも政党交付金とは何で、いかなる正当性があるか、ないかなどを掘り下げてみます。その上で旧NHK党が受け取る団体としてふさわしいか読者の皆様への判断材料としていただければ幸いです。
総額315億円で目的は「民主政治の健全な発展に寄与」
政党交付金の根拠法は政党助成法。1994年に制定されました。総額315億3600万円(国民1人あたり250円)。
受け取れるのは「政党」(国政政党)。公職選挙法や政党助成法が定める「政党要件」を満たした政治団体を指す用語で①国会議員が5人以上所属②国会議員が1人以上所属し、かつ一番近い国政選挙(衆議院もしくは参議院選挙)で全国を通して2%以上の票(選挙区・比例区いずれか)を得た、のいずれか。旧NHK党は②の条件を満たすのです。
政党助成法は1990年代、盛んに議論された政治改革の一環として誕生しました。その頃の永田町は相次ぐ金権腐敗スキャンダルにまみれていて、原因として政治にカネがかかりすぎるからだ。弊害を除くため国民の浄財で党を運営しよう。そうすればクリーンになるという論法で始まりました。
正確を期すために法の一部を引用します。1条には「政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とする」と目的を明記。「健全」とはカネまみれでないという含意が濃厚です。
組織及び運営については民主的かつ公正なものとする
具体的な項目へと踏み込んでいきます。
同法が作られた際の主な問題点として「公金での運営となると自由な政治活動が阻害される」という意見がありました。そこで4条で「政党の政治活動の自由を尊重し」交付金は「条件を付し、又はその使途について制限してはならない」と担保。
もっともそれだけだと何に使っても構わないウハウハだともなりかねないので「貴重な財源で賄われるものであることに特に留意し、その責任を自覚し、その組織及び運営については民主的かつ公正なものとするとともに、国民の信頼にもとることのないように」「適切に使用しなければならない」と釘を刺しているのです。
政党交付金使途等報告書の抜け道が2つ
さらにブラックボックス化を防ぐため「政党の会計責任者」は「一件当たりの金額」が「五万円以上」「については」「受けた者の氏名及び住所並びにその目的、金額及び年月日」を政党交付金使途等報告書として総務大臣に提出する義務があります。閲覧も可。
ただし抜け道が2つ。1つは5万円未満は不要という点。もう1つは支出から人件費が除外されている(総額のみ記載)点です。支出先の記載や領収書の添付が不要なので人件費名目で何をしたか調べようがありません。
「政党交付金による支出」から「借入金の返済及び貸付金の貸付けを除く」と貸借金を禁じている条文も紹介しておきます。例えば党が誰かしらにカネを借りて返済に交付金は回せません。ただカネに色はついておらず人件費のように明細不要の科目もあるため自分や家族の政治団体(総務省に届け出ればいいだけで簡単に作れる)や法人を経由すれば充てられてしまいます。合法です。
抱える議員の給料などは別途支払い
あるいは交付金3億円超を「割と少ないな」と感じるかもしれません。いや、なかなかです。先述のように使途が自由で抜け道がある上に法人税などもかかりませんし。
しかも抱えている国会議員(旧NHK党は2人)の「歳費」(基本給に近い)1人月額約130万円と年2回の期末手当(ボーナスに近い)の約630万円は別途(所得税は源泉徴収される)。そこに例の旧「文書通信交通滞在費」(今は「調査研究広報滞在費」)が1人月額100万円(年間1200万円)入ります。こちらは非課税で領収書も要りません。歳費を党に寄附しても構いません。
立法事務費も加わる
さらに議員1人で政策担当秘書、公設第一秘書、第二秘書の3人を雇えます。給料は国費。つまり政党交付金は「別腹」なのです。
かてて加えて議員個人でも党でもなく「会派」に1人月額65万円が支給される立法事務費もあります。旧NHK党の国会議員は2人で会派を組んでいるので会派=政党となるのです。
「交付金は徐々に減らす」条項をお手盛りで骨抜き
以上のように政党交付金は「国政政党たるものは真面目に頑張る」という性善説に立っています。それでも発足当初「国民からカネを吸い上げる」との批判を恐れてはいて徐々に減らしていこうとの趣旨で導入されました、金額を前年の実質収入の3分の2に抑えて自助努力していこうとの条項を設置していたのです。これが生きていたら旧NHK党が3億円受け取るために前年は4.5億円の収入実績が必要となったはず。
ところがこの条項は95年末に撤廃されてしまいました。小政党は元来不利な条件だから建て前はともかく本音は廃止賛成。「血税は畏れ多い。自助努力だ」と上限を訴えていた自民党も比較第1党ゆえ得られる額も最大で、一度手にしてみると悪くないと感じたのか廃止へ方向転換。いわばお手盛りで骨抜きが進んだのです。
いかがでしょうか。旧NHK党に限らず各政党もまた法の趣旨を踏まえて浄財をいただいているか本来は自身で検証すべきでしょう。