教員いじめ問題から観る「組織内いじめ」を防ぐ360度評価とフォロー方法
こんにちは。Axxis inc. 代表・転職エージェントの末永です。
中途の人材採用支援をしつつ、月20万人以上の読者を持つ転職エージェントが語る「すべらない転職」という転職メディアを運営している中で、Yahoo!ニュース上では2013年から「働き方3.0」というテーマでキャリアや雇用分野について発信させてもらっています。
最近、神戸市立東須磨小学校の教員4名による後輩の教員いじめが、学校論や組織論、法律的観点など、様々な切り口から問題提起されていますね。
今回は、「教員」という「いじめを止めるべき立場」にもかかわらずいじめを行っていたことが炎上の根幹であると言われています。しかし、以前もYahoo!ニュースで語ったように、教育現場に留まらずどの業界・企業であっても「いじめ」は起こりうる問題ではないでしょうか。企業で働くビジネスパーソンにとっても、他人事ではありません。
今回は、教員いじめが露呈された東須磨小学校の教員いじめの構造を分析・考察することで、組織内いじめを防ぐために有効な「360度評価とフォロー方法」についてお話ししていきたいと思います。
今回のいじめ構造と評価の危険性
今回の教員いじめの構造は、様々な議論がありますが、私自身は学校教育問題に対しての専門家ではないため、今回の問題を企業や組織に置き換えたときに、「いじめの主犯格である教員が校長から高く評価されていた人物である」という点に着目しました。
今回、いじめの早期発覚・早期解決に繋がらず、深刻化してしまった理由として、いじめの主犯格が上司から気に入られているということがあると思います。
自分が傍観者だった場合、評価されている人のいじめを報告することで
- 自分の言うことが上司から信じてもらえるのだろうか
- 信じてもらえないどころか自分自身の評価が下がってしまうのではないか
という疑問が生じ、上司へのいじめ報告への動機付けを低下させてしまうからです。
今回の校長のように、人をマネジメントする立場にいる組織の管理職の方は、一定期間ごとにメンバーを評価する役割を担っていると思います。
しかし、それゆえに注意が必要です。なぜなら、マネージャーは評価者という役割以前に1人の人間です。
人は感情の生き物なので色眼鏡で見てしまい、現実を完全に客観的に把握することはできません。
マネージャーが評価を誤ってしまった場合、他のメンバーの意欲低下や精神的健康の悪化にも繋がり兼ねません。これは個人だけでなく、チームや組織全体の環境悪化にも繋がるのではないでしょうか。
評価の妥当性に気づく360度評価の導入
それでは、自分自身の評価方法の穴や不十分な点に気づくためにはどうしたらいいのでしょうか?
方法はたくさんあると思いますが、その一つに360度評価があると思います。360度評価とは、一度は聞いた事があると思うのですが、上司・同僚・部下など立場や関係性が異なる複数の視点を通して、対象者の日常行動を評価する仕組みです。
自分自身と違う立場、例えば部下に対する態度を把握することは、外側から見ているだけでは、分かっているようで全く異なる解釈をしてしまっているということもよくあります。
例えば、社長がその指導力や仕事ぶりを評価していた部長が、360度評価をしてみると部下からは全く評価されていなかったということはよくあります。
360度評価を導入することは、自分自身の評価の罠に気づく手掛かりになるのではないでしょうか。
360度評価実施後のフォロー方法
それでは、評価の違いがわかった時、どうフォローしたら良いのでしょうか?
「評価の内容を率直にマネージャーに伝え改善を促す」これがやはりシンプルな一例ですよね。
確かにこれで改善が促されたら、とてもスムーズで合理的かもしれません。しかし、率直に改善を促すということのデメリットも考えられます。
例えば、フィードバックされたマネージャーが以下のように感じてしまうこともあるのではないでしょうか。
・自分の人格否定されたように感じてしまう
・自身のマネジメントのせいではなく評価者であるメンバーの未熟さの責任だと反発してしまう
部下をマネジメントすることが仕事であるマネージャーであってもやはり人ですから、このような感情が湧いてしまうことももちろんありますよね。
そこで私がオススメするフォロー方法は2つあります。
直接フォローせず行動を提案する
1つ目は、「内容を直接フィードバックせずに行動を提案する」ということです。
この場合、マネージャーに360度評価の結果を伝えるということをしません。
把握できた問題に対して、タイミングを見計らい「こんな風に言ってみたら?」と解決の動きに向かわせるように具体的な行動を提案するという方法です。
具体的には、
- 部下を指導するときに前置きを置くことを大切にしてみたら?
- 「こうしなさい」ではなく提案して意思決定は部下に任せるようなコミュニケーションをとってみたら?
などの言葉がけが考えられます。
しかし、この場合、評価を受けたマネージャーの、ジョハリの窓的に言えば「盲点の窓」である「自分では気づき得ないが他人は知っている自分」を知る機会の損失に繋がってしまうというデメリットはあります。
感情を受け止めた上でのファクトの提示
この際の解決策となるのが、二つ目の「感情を受け止めた上でのファクトの提示」です。この場合というのは、先ほど述べた率直に改善を促した場合に想定されるマネージャーの、「人格否定されているかもしれない」や「メンバーにも未熟なところがある」などの反発や不安感情を事前に述べて「あなたを理解しているよ」ということを前置きに提示することが重要になります。
その上で「事実としてメンバーからはこう思われてしまっている現実があること」「未熟なメンバーの目線に合わせて引き上げていくこともマネージャーの仕事であること」を客観的事実として感情と切り分けて説明することが重要であると思います。
また、フィードバック内容そのものを単体・点で評価をせず、定期的に360度評価を継続していく前提で、フィードバック後のその後の改善行動の実行の有無や改善結果を評価していくという点も重要と思います。
フォロー方法の選び方
2つ目の方法は、会社のカルチャーや風土によっても相性があると感じます。
例えば、私が代表を務めるAxxis inc.のカルチャーは、
「向き合い文化=相手の課題や欠点に対して感じた点を、相手のためである事を前提であれば、お互いに指摘し合い妥当性があれば改善に向かう文化」です。
このようなカルチャーの組織であれば2点目のフォローリング方法がマッチするかもしれませんが、異なる文化の組織ではあまり向いていないかもしれません。
さらに、マネージャー自身の度量や成熟度、性格によっても向いているフォロー方法は異なってくると思います。
そのため、ご自身の所属されている組織の文化や人に合わせてフォロー方法を考え実行できるようになることが重要です。
しかし、そのようなフォロー方法を選んだとしても、「点でなく線で見る」ことは共通して重要であると思います。
360度評価を行った時点での評価が悪かったとしても、その後の改善に向かう努力を見守り続けることで、自分自身も長い目でのマネジメントを心がけていきたいですね。