アイドルに金品捧げるK-POP「朝貢ジョゴン」。人気ガールズグループが拒否した背景
K-POP新人ガールズグループaespa(エスパ)がちょっとした問題提起をした。
少女時代などを輩出したSMエンターテインメントの新しいガールズグループとして昨年11月にデビューしたaespaは4人組のグループ。
KARINA(カリナ)、WINTER(ウィンター)など韓国人だけではなく、日本出身のGISELLE(ジゼル)、中国出身のNINGNING(ニンニン)の4人で構成された多国籍グループでもあり、まだデビューから1年も経たないうちに「世界で最も美しい顔100人」にも選ばれるなど、世界的にも注目を集めている。
(参考記事: 「世界で最も美しい顔100人」2020年版、韓国芸能界から選ばれた美女たち【PHOTO】 )
そんなaespaが最近、ファンからのプレゼントやサポートを一切受けないと宣言し、ちょっとした問題提起となっている。昨年末にデビューしたばかりの新人グループにしては異例の決断だ。
そもそもK-POP界には一風変わったサポート文化、いわゆる「ジョゴン」が根付いている。ジョゴンを漢字で書くと「朝貢」。文字通り、貢物を意味し、芸能人とファンの関係に比喩した隠語だ。
このジョゴンが韓国では、個人ではなく集団で行われることが多い。オンラインコミュニティで知り合ったファンたちが、アイドルが喜びそうなプレゼントを選び募金を募って購入したあと、所属事務所宛へ発送などをするのだが、プレゼントが高価なものほど「人気のあるアイドル」の証になるらしく、高級ブランドの商品を贈るケースも少なくないという。
そして、その過程でファン同士のいざこざや金銭トラブルが起きるも多いらしい。
実際、今年4月にはaespaのメンバーの誕生日を記念するジョゴンが進む途中でプレゼントの保管と伝達を任されたはずのファンが消息不明になり、横領の疑い騒ぎまで起こった。
おそらくaespaがプレゼントを断ることにした背景には、ファンの間でこうしたトラブルが絶えず、見かねたからだろう。
ただ、昨今はジョゴンのレベルがエスカレートしているため、一筋縄では行きそうにもない。
応援や祝いのための駅広告や屋外ビジョン広告、市営バスなど公共交通機関を使ったラッピング広告、撮影現場への差し入れ(主にフードトラック)などもジョゴンのひとつのやり方であり、特に駅広告、屋外ビジョン広告はK-POPならではのジョゴン文化だが、最近はその規模も大企業並みに大きくなり、世界で最も高い広告価格で知られるNYタイムズスクエアの電光掲示板にファンたちによるK-POPアイドルの広告が流れることも珍しくなくなった。
2018年の情報ではNYタイムズスクエアのNasdaqとReutersの電光掲示板で1時間ごとに15秒の広告を1週間送出した場合、約3万ドル(約330万円)の費用がかかるそうだが、そういった高価な広告出稿をBTS(防弾少年団)のJIMINとV、TWICEのツウィ、NCTのジェヒョン、Wanna One出身のカン・ダニエルらのファンたちが自腹を切って掲出したのだから驚きだ。
こうしたエスカレート気味のジョゴン文化に対し、懸念の声も上がっている。
ファンの中には借金をしてまでジョゴンに参加する人もいるので、ジョゴンがもはやアイドルを応援したい気持ちの表れではなく、忠誠心を見せつけるための義務に変質したという批判も多いのだ。
K-POP界隈ではしばしば“サセン・ファン”たちの度を過ぎた行動が社会問題として物議を呼ぶが、このままではジョゴンも度が過ぎた行為として受け止められかねない。
だからこそ、前出したasepaのように公式・非公式を問わず、ジョゴンを断るアイドルも出てきている。
すると今度はプレゼントや広告の代わりにアイドル名義で寄付したり、ボランティア活動、森の造成など、公益活動をする新たなジョゴン文化も誕生した。
実際にソウルには「少女時代の森」「東方神起の森」「SHINeeの森」「RM(BTS)の森」「JUNG KOOK(BTS)の森」など、K-POPアイドルの名前が付いた森が多く造成されている。
さらには、立場が変わった「逆ジョゴン」も存在する。代表的なアーティストはソロ歌手のIU(アイユー)だ。
彼女は数年前から「私のほうがファンのみなさんたちよりも稼いでいる」「欲しいモノを自分で買う喜びを許して」という発言を通じてジョゴンを丁重に断り、音楽番組の収録やイベントに来てくれたファンたちに食べ物やアクセサリーなどをプレゼントする「逆ジョゴン」をしている。BTS、BLACKPINK、ヒョナ、ペ・スジらもさまざまなプレゼントをファンに贈っていることも、付け加えておこう。
K-POPのグローバル化によってジョゴン文化も広がっている今、アーティストとファンの両方が負担なく楽しみ喜べるようなジョゴン文化の成熟が求められているのかもしれない。