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食用は1%のおから パウダーで1ヶ月摂取 腸内環境と肌への影響は?

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
一般社団法人日本乾燥おから協会のプレスリリースより

4月8日はおからの日。一般社団法人日本乾燥おから協会(東京都渋谷区)によれば、おからの別名である「卯の花」と縁の深い、お釈迦さまの誕生日である4月8日を「おからの日」に制定したそうだ(1)。

おからは、かつては豆腐屋さんで販売されていた。豆腐店が少なくなった今でも、スーパーの豆腐売り場には置いてあるし、惣菜コーナーには卯の花が売られていることも多い。とはいえ、水分量が多く、日持ちしないデメリットもある。おからの生産量、年間およそ70万トンのうち、食用として食べられているのは、わずか1%というデータもある(2)。横山勉氏の記事(3)によれば、飼料用が65%、肥料用が25%、産業廃棄物として捨てられているのが9%、残り1%が食用という現状だ。

おからの利用形態(横山勉氏の記事を基に宗高美恵子氏がグラフ制作し、筆者が改編)
おからの利用形態(横山勉氏の記事を基に宗高美恵子氏がグラフ制作し、筆者が改編)

そこで、水分量を少なくして日持ちするようにし、汎用性を高めたのが「おからパウダー」だ(4)。複数のメーカーが商品化しており、おおむね賞味期限は6ヶ月以上に設定してあり、生のおからに比べて断然、日持ちする。また、お惣菜にする以外にも、ヨーグルトやスムージーに入れたり、ハンバーグに入れるパン粉の代わりやポテトサラダのポテトの代わりにしたりするなど、さまざまな料理に使うことができる。おからパウダーの重量のうち、40%は不溶性食物繊維だ。摂取して水分を吸収すると、便のかさを増して腸壁を刺激し、排便を促してくれる効果がある。同じ重量の小麦粉と比べると、糖質の量は8分の1以下だ(5)。

おからパウダー1ヶ月摂取で腸内環境を表す数値が改善

日本乾燥おから協会は、このおからパウダーの健康効果を検証するため、30代〜60代(平均年齢49歳)女性26名を対象に、4週間(2022年1月16日〜2月13日)、1日15g以上(大さじ3杯以上)摂取する調査を行なった。株式会社ヘルスケアシステムズ(愛知県名古屋市)が協力した。

腸内環境は、インドキシル硫酸の尿中の量を調査した。インドキシル硫酸は、腸内細菌由来の腐敗物質で、インドキシル硫酸が多いほど腸内環境が悪く、少ないほど良いとされる。

摂取前、被験者の尿中インドキシル硫酸(mg/gCr)の平均値は74.2だったが、4週間の摂取後には46.5となり、統計的に有意に減少した。

尿中インドキシル硫酸量の変化(日本乾燥おから協会プレスリリースより)
尿中インドキシル硫酸量の変化(日本乾燥おから協会プレスリリースより)

排便回数が摂取後に有意に増加し、肌の調子が改善される可能性

摂取前に1週間あたりの排便回数2.13回だったのが、摂取後には2.58回と、統計的に有意に増加した。

排便回数の変化(日本乾燥おから協会プレスリリースより)
排便回数の変化(日本乾燥おから協会プレスリリースより)

また、摂取前と比べて、摂取後には、肌の調子を被験者に聞いた結果は統計的に有意に改善する可能性が示唆された。

肌の調子の変化(日本乾燥おから協会プレスリリースより)
肌の調子の変化(日本乾燥おから協会プレスリリースより)

腹囲が統計的に有意に減少

腹囲は、平均85.92cmから、摂取後には84.10cmと、有意に減少した。

腹囲の変化(日本乾燥おから協会プレスリリースより)
腹囲の変化(日本乾燥おから協会プレスリリースより)

参加者の95%が「今後も続けたい」

参加者の評価もおおむね好評で、日々の食生活に取り入れられそうかという質問に対しては、摂取前の「とてもそう思う」「そう思う」87.5%から、摂取後には両者の合計が91.7%に増加した。

また、参加者の95%が、摂取後に「今後も続けたい」と回答した。

参加者アンケート(日本乾燥おから協会プレスリリースより)
参加者アンケート(日本乾燥おから協会プレスリリースより)

おからをケーキやクッキー、エナジーバー、ドレッシングに

以上、おからパウダーの1ヶ月摂取の結果を見てきた。

おからパウダーは、スーパーの豆腐売り場の商品棚に置かれているケースが多い。家庭でヨーグルトやスムージーに入れたり、ハンバーグやサラダに入れたりすることができる。

そのほか、食品事業者が食品加工の原材料として使うこともできる。株式会社Ocalan(おからん)は、小麦粉をいっさい使わず、おからと豆乳でケーキを開発した(7)。血糖値の高い方や、小麦アレルギーの方に好評を得ており、クッキーも開発している。

また、おからを用いたドレッシング(8)や、おからを活用したエナジーバー「OKARADA」(9)も開発されている。

おからケーキ(株式会社Ocalan提供)
おからケーキ(株式会社Ocalan提供)

おからの無排出化技術も開発

三重県四日市市にあるミナミ産業株式会社は、そもそも、おからの食品ロスを出さない、おからの排出を無くす豆腐・豆乳の製造技術を開発し、農林水産省の第5回食品産業もったいない大賞、食料産業局長賞を受賞した(10)。この時の発表は筆者も聴いており、1998年~2017年のおよそ20年間で、推定約7,000トンから7,500トンの産業廃棄物を削減したという成果を発表しており、発表資料(11)も詳細で多くの学びがあった。

おからを貴重な食資源として活用しよう

おからは、かつて「食品」か「廃棄物」かで裁判に問われたことがあった(12)。おからを乾燥させたおからパウダーは、豊富な不溶性食物繊維を含み、満腹感をもたらす一方で糖質は小麦粉の8分の1と低く抑えられるメリットがある。その優れた栄養価から考えれば、廃棄物として捨ててしまうのではなく、できる限り食資源として活用したい。

参考情報

1)4月8日はおからの日(一般社団法人 日本乾燥おから協会)

2)食用はわずか1%! 栄養豊富な「おから」が食べられずに捨てられてしまう本当の理由(井出留美、集英社よみタイ、2021/4/28)

3)おからは食品か産廃か(横山勉、FoodWatchJapan、2013/8/27)

4)乾燥おからとは(一般社団法人 日本乾燥おから協会)

5)『おからのおかず』(日本乾燥おから協会、今泉久美、学習研究社)

6)おからパウダーに腸活効果あり! 「腹囲減少」「便通改善」「肌の改善効果」のダイエット効果の可能性も! 1 カ月の継続摂取による効果を女性対象の研究にて確認(日本乾燥おから協会、2022/4/7)

7)「捨てる」を「活かす」 おからケーキ(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2017/4/11)

8)食用はたったの1%!?おからをおいしく食べる秘訣は愛知の醸造文化にあり(中村智彦、Yahoo!ニュース個人、2018/6/18)

9)「OKARADA」(有限会社ラパン)「OKARADA」には登録商標を示すまるアールがつく(入力規定でここでは表記できず)

10)おから無排出化による資源の有効活用(ミナミ産業株式会社、農林水産省 第5回 食品産業もったいない大賞 食料産業局長賞)

11)おから無排出化による資源の有効活用 農林水産省 第5回食品産業もったいない大賞 発表資料(ミナミ産業株式会社)

12)4月8日はおからの日 で、おからは廃棄物? スーパーフード?(井出留美、朝日新聞SDGsACTION!、2022/4/8)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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