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【7/20更新版】新型コロナウイルスワクチンによる妊娠への影響はある? 最新情報まとめ

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスのワクチン接種が世界中で進んでいます

世界中で感染が拡大する新型コロナウイルス。

ウイルスの変異による感染拡大も増えてきていますが、重要な対処法としてワクチンの接種が世界中で進んでいます。

2021年7月19日時点で、ワクチンの接種回数は、世界200カ国・地域で累計36億回を超えたとされています。(文献1)

日本だけでも2021年7月18日時点で時点累計接種回数は7000万回を超えています。(文献2)

ワクチンの有効性について

(1) 変異のないウイルスへの効果

なお、ワクチンの有効性については、ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社のワクチン(mRNAワクチン)において、発症予防効果が約95%と非常に高いことがわかっています。(文献3,4)

また、重症予防効果もそれぞれ89%、100%と非常に高いというデータが報告されています。(文献3,4)

感染予防効果についてもデータがわかってきており、米国CDCの研究によれば、2回目のmRNAワクチン接種から14日以降では無症状感染を含む90%の感染を防ぐことができるとされています。(文献5)

(2) 変異ウイルスへの効果

変異したウイルスに対する効果も徐々にデータが集まってきています。

英国で見つかった「アルファ」、南アフリカで見つかった「ベータ」という2種類の変異ウイルスに対して、ファイザー・ビオンテック社のワクチンは2回目接種から14日以降ではそれぞれ約90%、75%の感染予防効果が報告されています。(文献6)

インドで見つかった「デルタ」に対しては、同ワクチンの予防効果は1回接種後で33%、2回接種後で88%と推定されています。(文献7)

ワクチンの一般的な安全性について

なお、安全性についても非常に多くのデータが蓄積されてきており、現時点では「接種するメリットを考慮すれば十分に安全だと考えられる」とされています(だからこそ世界各国で接種が進んでいます)。

安全性や副反応に関しては「こびナビ」のウェブサイトもご参照ください。科学的根拠に基づく最新の情報が非常にわかりやすくまとめられています。

ワクチンによる現在・将来の妊娠への影響は?

ワクチンの有効性と安全性を検証したワクチン開発時の臨床試験には、基本的に妊娠している人が含まれていませんでしたので、「妊婦への影響」に関する厳密なデータは得られていません(通常、倫理的配慮からこのようにして臨床試験は実施されることがほとんどです)。

また、「将来の妊娠への影響」に関しても、接種して数年から十数年経過しなければ厳密なデータはわからないと言えるでしょう。

しかし、今現在でも妊娠している人や、すぐに妊娠を希望している人、将来は妊娠したいと思っている人などが世界中に存在します。

このため、現状で得られる情報を総合的に考慮し、なるべく客観的にメリットとデメリットを踏まえて接種するかどうかの判断をすることが必要になります。

(1) 日本の関連学会からの最新の見解

日本からも、妊産婦さんへの新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン)について、三学会(日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会)から合同で一般の方向けに通知が出されました。(2021年7月19日)

「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン) Q & A」

多くの疑問・不安に対して非常にわかりやすい回答を示してくれています。

ぜひご覧になってみてください。

(2) 妊娠している人への影響

各国政府や専門機関の見解は?

妊婦さんに関しては、各国政府や専門機関がそれぞれ公的な見解や提言等を出しています。それぞれの表現にやや違いはありますが、日本、米国、英国、オーストラリアなどの見解をまとめると以下の通りです。(文献8-12)

・妊娠や胎児へ悪影響を与える可能性は非常に小さいと考えられる(基礎研究や過去のワクチンに関する知見などから)

・妊娠していることを理由に接種対象から除外するべきではなく、むしろ推奨される(ただし最終的な接種は個人の選択によるべきである)

・妊娠中の感染は重症化や早産のリスクを高めるため、感染を回避することは重要である

なお、2021年4月23日に、米国CDCは妊婦への接種を「推奨する」と明確に発表しました。

これは、現状得られる最大規模のデータからは、妊娠中のワクチン接種によって流産、胎児死亡、先天異常などの発生頻度が増えることはない、と判断されたためです。

詳細はこちらの記事(「妊婦への新型コロナワクチンを米国疾病対策予防センター(CDC)が「推奨」とした理由とは?」)もご覧ください。

なお、米国CDCでは、2021年7月12日時点で、コロナワクチン接種時に妊娠していた13万人以上の女性が登録されており、その副反応や妊娠関連合併症などを分析しています。

出産後までの経過を追うレジストリにも5100人以上の妊婦が含まれてます。

その上で、妊婦への接種が推奨されているのです。(文献13)

大事なこととして、妊娠中の接種をするか判断する際には、「妊婦は感染した場合の重症化・死亡リスクや、早産となるリスクが高まる」「使用できる治療薬に制限があり選択肢が少ない」といったことを踏まえ、「接種しないことのリスク」も併せて考えるべきだろうと思います。

流産への影響は?

なお、海外各国の公的機関に加え、日本の厚生労働省も、2021年6月9日に、「海外の調査によれば、接種を受けた方に、流産は増えていません」と明確に情報提供しました。(該当ページ)

ニュースやSNS等で「ワクチン接種した後に流産したという報告がたくさんある!」とするコメントが見受けられますが、一般的に自然流産となってしまう頻度は15%程度あり、自然流産の原因のほぼ全てが「女性の生活や行動に原因はなく、染色体レベルの偶然のもの」です。

仮に100万人の妊婦さんが初期に接種すれば、その後にワクチンと関係なく10-15万人に流産は起こり得る、ということになります。

根拠のない誤情報に惑わされず、各国の政府や公的機関の情報を参考にして下さいね。

胎児への抗体移行の可能性も

なお、「妊娠中に新型コロナウイルスワクチンを接種すると、臍の緒の血管内にも抗体が検出された」と報告されました。(文献14)

これはインフルエンザワクチンと同様で、妊娠中のワクチン接種により、生まれたばかりの赤ちゃんを守ってあげる効果を得られる可能性が期待できます。

妊娠中の方は、接種するべきかどうかについて、ぜひかかりつけの産婦人科で医師と相談してみてくださいね。

(3) 将来の妊娠への影響

それでは、今は妊娠していなくても今後の妊娠に与える影響についてはどうでしょうか。

ワクチンによる「妊娠能力への影響」について、日本、米国、英国の産婦人科専門機関は、過去の知見や作用機序、安全性プロファイルをもとに、「妊娠能力に影響は与えないだろう」としています。(文献10,15)

また、妊活中の方については、

・ワクチンのために妊娠を遅らせる必要はない

・妊娠に気づかず超初期にワクチン接種をした場合でも影響が起こるとは考えにくい

・ワクチン接種前に妊娠検査をする必要性はない

としています。(文献9,10)

感染した場合の重症化・早産リスクも併せて検討を

新型コロナウイルスに罹患した31,016人の妊婦を分析した最近の報告では、以下のように重症化したり合併症が増えることが示されています。(文献16)

こういった「妊娠中に感染した場合のリスク」も併せて考えなければなりません。

・6人に1人が重症化

・約7%が集中治療室に入室、8%が人工呼吸、2%が死亡

・1/4で早産

・重症だった妊婦は軽症妊婦に比べて平均4歳ほど年上で、35歳以上の女性では重症化リスクが1.5倍

・重症化は、肥満、喫煙歴、糖尿病、妊娠高血圧腎症の女性で有意に高かった

・早産のリスクは重症化した女性で2.4倍

ぜひ、本記事や公的機関の情報を参考に、接種をご検討ください。

*本記事の内容は7/20時点で得られた情報に基づいています。日々更新される可能性があるため、なるべく下記リンク等から最新情報をご参照ください。

参考文献:

1. 日本経済新聞.

2. 日本経済新聞.

3. N Engl J Med. 2020;383:2603-261.

4. N Engl J Med. 2021;384:403-416.

5. CDC. Interim Estimates of Vaccine Effectiveness of BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 Vaccines in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Health Care Personnel, First Responders, and Other Essential and Frontline Workers — Eight U.S. Locations, December 2020–March 2021

6. N Engl J Med. 2021 Jul 8;385(2):187-189.

7. bioRxiv. Serum Neutralizing Activity of mRNA-1273 against SARS-CoV-2 Variants.

8. 厚生労働省.

9. 米国CDC.

10. 米国ACOG.

11. 英国NHS.

12. Joint statement between RANZCOG and ATAGI about COVID-19 vaccination for pregnant women.

13. CDC. V-safe and Registry Monitoring People Who Report Pregnancy.

14. Am J Obstet Gynecol. 2021 Mar 24:S0002-9378(21)00187-3.

15. 英国 British Fertility Society and Association of Reproductive and Clinical Scientists.

16. J Glob Health. 2021 Jun 30;11:05018.

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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