好投の岩田投手が5勝目、江越選手と坂本選手の2人で7安打5打点!《6/21 阪神ファーム》
きのう22日からリーグ戦が再開した阪神タイガースの1軍は、まず甲子園に広島を迎えての3連戦です。一方のファームは23日と24日に新潟県三条市の『三条野球まつり』で、ファーム交流試合・ヤクルト2連戦が行われます。その荷物出しが行われた21日、三条で先発すると見られていた福永春吾投手のバッグもあったのですが、あとで降ろされたのでしょう。きのう1軍に今季初昇格、さっそく投げましたね。ともに昇格の北條史也選手も先発出場でした。
さて、きょうは21日のウエスタン・オリックス戦の結果をご紹介します。19日から鳴尾浜で予定されていたオリックス3連戦は20日が中止。そして21日は、先発の岩田稔投手が素晴らしいピッチングを披露!13日の広島戦では7回を投げ、3本塁打など10安打5失点(自責4)と打ち込まれたのが不思議なくらいの安定感です。2点を返されたものの、9回に登板した石井将希投手が最速147キロをマークする速球勝負で無失点。8対2で快勝しました。
3回までに10安打で7点を奪い、計13安打を放った打線は、久しぶりにフル出場の坂本誠志郎選手が三塁打1本と二塁打2本を含む4打数4安打3打点。しかも2回に単打、3回に三塁打、5回に二塁打ときて、8回はホームラン…ならサイクル安打というところ、結果は二塁打でした。残念。
試合後のヒーロースピーチで坂本選手は、二塁打2本など4打数3安打2打点だった江越大賀選手が自身の前で打っていたので「負けないように頑張った」けれど、サイクル安打を逃がして「僕は持っていない」と語り、最後に前日までの雨でグランドが柔らかくて、あまり速く走れなかったので「次はしっかり走るところを見せる」とも宣言しています。
《ウエスタン公式戦》6月21日
阪神-オリックス 15回戦 (鳴尾浜)
オリ 000 000 200 = 2
阪神 304 010 00X = 8
◆バッテリー
【阪神】○岩田(5勝1敗)‐石井 / 坂本
【オリ】●小林(3敗)(3回)-赤間(2回)-鈴木優(1回)-大山(1回)-榊原(1回) / 西村‐稲富(7回~)
◆三塁打 神:坂本 オ:山足
◆二塁打 神:江越2、坂本2 オ:西村
◆盗塁 神:荒木(10)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]指:荒木 (4-2-1 / 0-0 / 1 / 0) .216
〃打指:今成 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .219
2]左:緒方 (4-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .278
3]遊二:北條 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .254
4]一:ロサリ (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .324
〃遊:森越 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .210
5]二一:板山 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .257
6]三:西田 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .236
7]右:江越 (4-3-2 / 0-0 / 0 / 0) .231
8]中:島田 (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .227
9]捕:坂本 (4-4-3 / 0-0 / 0 / 0) .340
※ロサリ=ロサリオ
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
岩田 8回 92球 (5-3-0 / 2-2 / 2.09) 144
石井 1回 26球 (0-0-1 / 0-0 /13.50) 147
《試合経過》※敬称略
打線は1回、先頭の荒木が右前打して投手の牽制悪送球により三塁へ進み、1死後に北條が四球で一、三塁となってロサリオが中前タイムリー!さらに板山の中前打で1死満塁。西田は三振に倒れますが、続く江越のレフトへタイムリー二塁打で2人が還り(板山は本塁でアウト)、この回3点を先取。
3回には2死から5連打で4点を追加しました。西田の中前打、江越の右前打で一、三塁として島田が左前タイムリー!なおも2死一、二塁で坂本がレフト左へ大きな当たりを放ち、レフトの根本が芝生に足を取られたのか転倒、2点タイムリー三塁打となっています。続く荒木は左前タイムリー。
3回までに10安打で7得点の打線は、5回1死から江越が左中間二塁打、2死後にまた坂本が今度はセンターへのタイムリー二塁打!これで12安打8得点。しかし6回、7回と三者凡退に抑えられ、8回は坂本が左中間へ二塁打を放ちながら追加点なく終わっています。
投手陣は先発の岩田が、1回は2死から西村に中前打されるも、自身の牽制から二盗を阻止!3任で片付けました。2回は2死から山足の左前打のみで問題なし。3回、4回、5回、6回と三者凡退。ここまでで61球とスイスイです。7回は先頭の坂本に左前打され、続く西村が三塁線を破るタイムリー二塁打。宮崎の右飛で1死三塁として、武田の左犠飛。山足にも右中間へ三塁打を浴びましたが、2失点でとどめています。8回も続投した岩田は内野ゴロと最後は空振り三振で三者凡退。ここで交代しました。
9回は石井が登板。いきなり145キロの真っすぐで空振り、次が147キロでファウル、さらに146キロのボールと続いたもんでビックリ!いや、驚くってのも失礼な話ですけど、プロ入り最速連発だったもので。こんなに速い球をまだ見たことがありませんでした。坂本には四球を与えたものの、佐野と代打・園部は遊飛、最後は稲富を右飛に打ち取って試合終了です。
安定した球の強さを高く評価
では試合後の談話を、矢野燿大監督からご紹介しましょう。岩田投手について「1軍に行っても勝てる抑え方ができている。この前はちょっと点を取られたんだけど、ボール1つ1つの強さがある。バロメーターのゴロアウトももちろんだけど、まず球の強さが安定しているから。今、上のローテーション的には数が結構いるので岩田になかなかチャンスが回ってこず、そこは本人ももどかしい、難しいところだけど。この状態を続けてくれたら、すごくチームにとっても戦力になるし。素晴らしい内容やったと思う」と話しています。
ずっと好調を持続させていることには「岩田には経験もあるし。去年もそうやったんかな。後半に岩田が来て助けてもらったというか、あいつ自身も存在をしっかりアピールするような登板をした。その経験があるというのは大きい。あとは、せっかくいいだけに俺らもみんなで何とかしていけたら」と監督自身からも、もどかしさが感じ取れました。
8回までは予定通り?「どうしょうかなと思った。2点取られたから、悪いまま終わらせてしまうとよくないかなというのも福原(投手コーチ)からあって、じゃあもう1回いこうかと。最後きっちり締めてくれたから、本当にいい終わり方ができた。石井もこの前やられたから、ちょっと投げされたいなと思って。石井も素晴らしかった!可能性を感じたね、きょうは。どうしたんや?って」
矢野監督も急な変化にビックリ!
というわけで、そのまま石井投手の話題へ移行します。別人のような球速でしたねと言ったら、矢野監督は「この前打たれた時に『お前がこれから、この世界で通用するにはストレートを強く投げることを意識しないと。まずそこがスタートやで。打たれたらあかん、フォアボール出したらあかんとか、そんなこと考えるんやなくて、フォアボール出してもいいから、まず強さを出していけ』っていう話をしていた」とのこと。
そして「それだけでこんなに変わる?ビックリしたよ」と。吹っ切れたんでしょうか?「躍動感あったしねえ。カーブも、いつも撫でるような感じだけど、きょうはカーブでも腕をしっかり振れていた。カーブは3球くらいかな。あとは全部、真っすぐやと思うけど。ちょっと可能性を感じさせてくれるピッチングだった。今も『メチャクチャよかったよ。これからもバッターが真っすぐ待っているところで真っすぐいけよ。打たれようが、フォアボール出そうが今はいいから。まずはその強さを出していこう』と言った。楽しみが増えたよ」
合わせて7安打5打点の2人
坂本選手は…と言いかけたら「まぐれやね。まぐれで4本。江越(の3本)は実力」と矢野監督が言ったもので、みんな大笑いです。
では実力の江越選手から。「変わったね。練習からメチャクチャよかったもん。その前も結構、際どいのをなんかもうガムシャラというか、タイミングも合っていないとこを振りにいっているだけだった。きょうは際どいコースのボールを、打ちにいって見逃しているんやなというのが見えたし。最後の内容もよかった。もう江越は打てりゃ絶対に出られるんやから!すごい選手になるからアイツは。まあこれを続けていけるように、まずはここで頑張って」
続いて4安打の坂本選手について。「誠志郎もちょっと試合に出られない時があったけど、メンタルが強いからね。しかも初球からガンガンいってのヒット。まぐれって言っちゃったけど中身もしっかりしたものがあったし、内容は全部よかった。しっかりした4本やったと思う。最後はちょっと調子に乗って、ピッチャーゴロでアウトになったけど、あそこは“調子に乗んなよ”ってことで、ちょうどよかったね」。なるほど、あれでよかったんですね。
矢野監督自身も、最後にホームランが出ればサイクル安打と意識したかと聞かれ「俺が?別にどうでもいいけどな、誠志郎のサイクルは」と答えて、また一同爆笑。でも「そういうチャンスはなかなかないからね、本人も嬉しいし、見に来てくれたファンの人も、もし打っていたら喜んでくれるかなって思うと、できれば打てればよかったけど。まあ4本ってのもすごいことやから」と締めくくっています。
その左腕が必要とされる時に
続いて選手のコメント。岩田投手は「いい感じでした。7回にもたついたのは単調にいきすぎた結果です。ランナーが出た時に、もうちょっと慎重にいけたら」と振り返りました。好調を維持しながら、その時を待つという日々ですが「自分が今できることをしっかりやり続けることが大事だと思う」と冷静です。
視察に訪れた金本知憲監督の「低めに集めていてよかった」という言葉には「ゴロを打たせていくピッチャーとしてそれを試合で出せ、いい状態が続いている。でも、継続していかないと意味がないですね」と岩田投手。8回で92球という球数、いいテンポでしたね?「そうですね。なかなかないレアケース」。自らレアケースという表現をしました。
真っすぐで押せているから、変化球も生きているのでは?「ベースになるのは真っすぐだと思うし、しっかり低めに投げ込むことができている。そこはこれからもやっていかないと」
「監督のひとこと」は効果てきめん
石井投手は1イニングを投げ1四球のみの無失点。26球のうち変化球は110キロ台のものが3球だけ。他はすべてストレートでした。しかも145キロ以上が8球。ここまでの登板とあまりにも違っていたので驚いた人も多いと思います。きっかけは何ですか?「試合前から矢野監督に『小さくまとまらず、打たれても荒れてもいいから、しっかり腕を振ってバッターに向かっていくように』と言われました」
その言葉で「きょうは技術やフォームより、まず初球から思いきって腕を振ることを意識して」投げたと言います。「打たれちゃいけないとか、荒れないようにという思いから、どんどん小さくまとまって投げるようになっていたかなと。監督のひとことで、きょうは思いきっていけたのでよかったです」
自分自身で手応えは?「前回が前回なので…きょうは収穫の多い1イニングでした」。前回とは17日の中日戦(甲子園)のこと。7対1と6点リードで迎えた8回に登板した石井投手はいきなり3連打され、1死は取ったものの連続タイムリーで2失点。なおも1死満塁で降板しました。この日は最速も138キロ止まりだったんですよね。
「大学でも、結果にこだわるようになってから縮こまって、思うようなピッチングができない時がありました」と石井投手。2年生の春、最優秀新人賞を獲得した頃は?「1、2年の時は怖いもの知らずで、上の人や監督から思いきって投げろと言われて、バンバン投げていました」。その当時を思い出して、矢野監督の助言を胸に力強く投げましょう!その先に見えてくるものが、きっとあるはずです。
最後にHRが出ず、でも二塁打!
続いて、4打数4安打で打率が.340と跳ね上がった坂本選手です。1試合4安打は?「初めてですね」。サイクル安打を意識したのはどのあたり?「最後の打席だけです」。ホームランを狙った?「いえ、と言いたいけど内心はメチャクチャ狙っていました」と正直な答え。打球があまり上がらなかった?「打った瞬間、低い!って思いました。なんでー?って(笑)」
久しぶりのスタメンマスク、いい結果が出ました。「岩田さんがすごくテンポよくて、攻撃のリズムを作っていけたかなと。いい結果といっても、きょうだけなので…。結果も内容も必要かなと思います。センターに打球が飛んでいったのはよかった。最後はホームランを狙ったけど、その中で強くスイングして強い打球が出た。どれも、その点でマッチしていたのでよかったです」
次は走るんですよね?と振ったら、少し苦笑いをして「いっぱい塁に出て、いっぱい走ったけど、下が緩かったから遅かったことにしておいてください」と坂本選手。わかりました。この土日も注目させていただきます。
江越選手らしい“えぐい打球”でした
最後は江越選手。二塁打2本と右前打、最後の遊直も含めて、いい内容だったと矢野監督が話しています。「練習からいい形で振れていました。試合でも練習通りのバッティングができたと思います」。ファームに来て意識してやっていることは?「真っすぐをきれいに打とうとしすぎていたので、詰まってもいいやという感じで打つように」
詰まってもいいけど、しっかり振る?「真っすぐをきれいに打とうとしすぎたらポイントが前になって、変化球で打ち取られてしまうことが多い。相手のピッチャーが配球的にも変化球が多いので、真っすぐを意識しすぎるよりタイミングをしっかり取って、センター方向へというのを考えました。全体的にはよかったと思う」
あとは、その確率を上げていくことですね。「確率は自分の中でも課題です。それと守備、走塁は誰にも負けないってくらい、しっかりやりたいと思います」。スイングの速さ、強さ、そして守備の際に打球へ向かうスピードも江越選手の魅力。早く1軍へ戻れるようアピールしてください。そうそう、東京ドームの都市対抗野球で弟・海地選手(三菱日立パワーシステムズ)の試合を見るためにも。
<掲載写真は筆者撮影>