福岡の人気ラーメン店が結集して挑む「新たなラーメン文化」とは?
博多で半世紀以上愛される「かしわおにぎり」
福岡・博多といえば「豚骨ラーメンの街」として全国に知られているが、実は「うどんの街」でもある。街中には多くのうどん店がひしめきあい、博多っ子の多くは自分の好きなうどん店がある。一説には博多祇園山笠の生みの親とされる、臨済宗の僧侶『円爾(えんに)』が1241年、宋から帰国した際に持ち帰った中国文化の中に、小麦粉文化である饂飩(うどん)や饅頭があり、そこから博多は「うどん伝来の地」とされて多くのうどん店が出来たと言われている。
商人の街である博多では、時間のない商人たちのためにうどんを茹で置きにして提供していた。そこから博多うどんは麺が柔くてふにゃふにゃであることが特徴になっている。また、ゴボウの天ぷらである「ごぼ天」や、薩摩揚げのような「丸天」などの独特な具材があり、自分の好みのものを注文して乗せる。さらに、鶏肉や野菜などの炊き込みご飯をおにぎりにした「かしわおにぎり」を一緒に食べるのも一般的になっており、博多のうどん店の多くに置かれている。
「チャーシューおにぎり」でラーメンに新たな文化を
その一方で、博多ラーメンや長浜ラーメンをはじめとするラーメン店では、麺のお替わりである「替玉(かえだま)」という文化は定着しているものの、ラーメンと共に食べるご飯ものとしては、焼き飯(チャーハン)や白飯、さらにはチャーシュー丼など店ごとにまちまちで、博多うどんにおけるかしわおにぎりのように定着したものはなかった。
そこで福岡のラーメンでも、うどんと同じように定番のお供は作れないか、と福岡のラーメン店が連携し合い、ラーメンには欠かせない具材であるチャーシューを使った「チャーシューおにぎり」を考案。3月1日より「福岡チャーシューおにぎり化計画」を始動させている。
全国や世界にも店舗を多数展開する『一風堂』や『博多一幸舎』をはじめ、『博多だるま』『長浜ナンバーワン』『名島亭』『ShinShin』『博多新風』『ラーメン海鳴』などの人気店、実力店の数々が今回の計画に参加。新たに開発したチャーシューおにぎりを各店のメニューに置くことによって、福岡での新たなラーメン文化の定着を目論んでいる。
店ごとに違う魅力がある「チャーシューおにぎり」
各店のチャーシューおにぎりには共通した味やレシピはない。それぞれのラーメンに合った味やスタイルのチャーシューおにぎりを提供している。
『博多一幸舎』(総本店、東京丸の内店で提供中)は2004年の創業当初、すでに一度チャーシューおにぎりを出していた先駆的存在。その後メニューから外していたが、今回レシピなどを見直して新たなチャーシューおにぎりを作り上げた。
店主の吉村幸助さんは「15年前にうちがチャーシューおにぎりを出した時は、他のお店では見かけなかったと思います。今回は福岡の多くのラーメン店が出すことで文化として定着すれば嬉しいです」と語る。
長浜の屋台が発祥の『長浜ナンバーワン』(祇園店、天神店で提供予定)は、店舗ごとに味が異なる。祇園店ではチャーハン風味のチャーシューおにぎりを開発。天神店では醤油味と塩味の二種類を開発し、日によって異なる味を提供する予定だ。
店主の種村剛生さんは「あくまでもラーメンが主役なので、ラーメンの味を邪魔せずに美味しく楽しめるものを目指しました。そして、売れる売れないではなく、提供し続けることが大事。そうすることでかしわおにぎりと同じように、福岡のラーメン店での定番メニューとして根付くと思います」と話す。
全国に目を向けると、東京などではラーメンと共に半チャーハンを楽しむ「半ちゃんラーメン」の文化や、和歌山ではラーメンを待っている間に棒寿司を食べる「早寿司」という文化がある。福岡でもチャーシューおにぎりを食べる文化は定着するのか、今後も注目していきたい。
※写真は筆者の撮影によるものです。