台風10号による猛烈残暑 いわゆる「台風一過」は秋の台風
台風10号の通過と上陸
令和元年(2019年)の台風10号は、8月6日15時にマリアナ諸島で発生し、発達しながら小笠原近海で停滞しました。
10日になるとゆっくり北西へ移動をはじめ、14日から15日に西日本へ接近・上陸する可能性がでてきました(図1)。
台風10号は、ほぼ予報通りの進路、ほぼ予報通りの強度で15日未明に宮崎県に最接近し、沖合を北上して豊後水道に入りました。そして、11時頃に愛媛県佐多岬を通過、15時頃に広島県呉市付近に上陸しました。
広島県への台風上陸は、平成2年(1990年)の台風14号以来、29年ぶりのことです(図2)。
気象庁では、主要四島(九州、四国、本州、北海道)の陸地に、台風中心が達した時を「台風の上陸」とし、主要四島以外の島の上に達したときは「台風の通過」としています。
ただ、主要四島でも、岬などに台風の中心が達した場合で、すぐに海上に抜ける場合は「通過」として扱っています。
従って、台風10号の中心が、四国の佐多岬に達しても「通過」であり、上陸は本州の広島県呉市です。
台風が豊後水道の真ん中を北上するということは、東日本を中心に太平洋高気圧が張り出しているときであり、日本海側ではフェーン現象で気温が上昇します。
北陸地方の記録的な日最低気温
平成2年(1990年)の台風14号により、新潟県・糸魚川では、日最低気温が30.8度までしか下がらず、日最低気温の高いほうの日本記録を作りました。
日最低気温が25度以上の日を熱帯夜といいますが、熱帯夜どころではなく、日最低気温が30度以上の「超熱帯夜」です。
なお、めったに出現しない現象なので、超熱帯夜は一般的に使われている言葉ではありません。
29年ぶりに広島県に上陸した台風10号も、北陸地方に記録的な暑さをもたらしました。
新潟県では14日に高田で40.3度と初めて40度超えをしましたが、夜になっても、気温がさがらず、新潟県・糸魚川では15日の最低気温が31.3℃と、自身が持つ日最低気温の全国最高の記録を更新しました(表)。
新潟県では、佐渡の相川が30.8度と全国2位、高田が30.3度と全国5位にランクインです。
日最低気温の高いほうの記録は、最近の記録で、都市化によって最低気温が下がらなくなったためと考えられていますが、北陸地方の台風がらみのフェーン現象は強力です。
猛烈残暑は今日まで
台風10号は、16日21時に北海道の西海上で温帯低気圧に変わりました。
しかし、台風が通過した東日本では台風が持ち込んだ暖気に、太平洋高気圧が強まった影響で、前橋や東京・練馬で36.9度など、17日は今夏一番の暑さとなりました。
気象庁は「命の危険も高まるので水分や塩分の補給をこまめにし、外出時はもちろん室内でも十分注意してほしい」としています。
この猛烈残暑は18日も続き、東北から近畿にかけて最高気温が35℃以上の猛暑日の予想が相次いでいます。
騒動がおさまって晴れ晴れとすることを「台風一過」ということがあります。
もともとは、台風が通り過ぎたあと、空が晴れ渡りよい天気になる意味ですので、「台風通過後に猛暑という次の騒動がくる」という、今回の台風10号とはイメージとは違います。
「台風一過」という言葉は、秋の台風の話で、真夏の台風の話ではないのです。
しかし、週明けの8月19日以降は天気が大きく変わります。
各地とも雨の日が多くなり、猛暑日が出現しなくなります。
北日本以外でも最高気温が30度に達しない日もでてきます。
台風一過の晴天にはなりませんでしたが、そろそろ秋雨前線が出現し、秋の気配となります。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:気象庁ホームページに著者作成。
図3の出典:ウェザーマップ提供。
表の出典:気象庁資料をもとに著者作成