トルコ占領下のシリア北西部で、所属不明のドローンが爆撃を行い、大金を運ぶイスラーム国の司令官を殺害
所属不明のドローンによる爆撃
英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団や反体制系サイトのEldorarなどによると、トルコの占領下にあるアレッポ県北西部のいわゆる「オリーブの枝」地域で5月21日、所属不明の無人航空機(ドローン)が走行中の車を狙って爆撃を行った。
爆撃が行われたのは、「オリーブの枝」地域の中心都市であるアフリーン市の南に位置するイスカーン(イースカー)村とガザーウィーヤ村を結ぶ街道で、狙われたのは軍用車輌。
これに関して、ホワイト・ヘルメットは、フェイスブックとツイッターで、謎の爆発で2人が死亡し、1人が負傷したと発表した。
またメディア活動家のムハンマド・ウマル氏は、ツイッターで炎上する車の映像を公開した。
なお、Eldorarによると、爆撃を受けて、トルコの支援を受ける国民軍が厳戒態勢を敷き、住民らが事件現場に近づくことを禁止したという。
誰が狙い、誰が狙われたのか
Eldorarは、複数の活動家らの話として、爆撃が米主導の有志連合所属のドローンによるものだとしたうえで、狙われた車には20万米ドル(約2,100万円相当)が積まれており、爆撃でその一部が焼失したと伝えた。
Eldorarはまた、死亡した2人のうちの1人の身元が判明したと伝え、身分証明書の画像を公開した。
同サイトによると、死亡したのは、イスラーム国ハマー州の司令官を務めるアブー・ザーキー・ティーバーニーなる男性。
イスラーム国ハマー州は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握るイドリブ県やハマー県北西部の「解放区」で活動を続けてきた組織。
ティーバーニーは2019年、当時シャーム解放機構の支配下にあったイドリブ県サルミーン市での住民殺害などに関与していたという(写真は殺害に関与するティーバーニー)。
だがその後、シャーム解放機構の捜索活動を逃れ、「オリーブの枝」地域で潜伏していたという。
公開された身分証明書は「ブルブル市地元評議会」が発行したもので、トルコ語とアラビア語でアブドゥッラッザーク・ファーリス、1993年8月2日生まれ、などと書かれている。
不穏な動きを見せるイスラーム国
シリア人権監視団によると、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるラッカ県タブカ市で5月21日、刑務所に収監されているイスラーム国のメンバーが暴動を起こした。
また、市内のアラム交差点にある北・東シリア自治局の内務治安部隊(アサーイシュ)の検問所が、イスラーム国のメンバーによって襲撃を受け、激しい戦闘となった。
北・東シリア自治局は、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体。
一方、ダイル・ザウル県では、北・東シリア自治局の統治下にあるブサイラ市の市場で、2度にわたって爆発が発生し、子供1人が死亡、住民15人が負傷した。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)