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関東は真冬から一転して「春一番」のような気温上昇と強い南風、その後再び真冬

饒村曜気象予報士
日本海西部の低気圧に伴う雲(1月16日15時)

昨年の冬とは一変

 冬になって、北極付近に太陽が全く当たらなくなると、非常に冷たい空気の塊(極渦)ができます。

 昨年の冬も、北極付近には非常に冷たい空気の塊ができましたが、ジェット気流があまり蛇行しなかったために、北極付近にとどまっていました。

 その結果として、日本付近には強い寒気が南下することがなかったために、記録的な暖冬となりました。

 今冬、令和2から3年(2020から2021年)の冬は、前年の暖冬から一変し、厳冬となっています。

 令和3年(2021年)の冬は、日本付近のジェット気流が大きく蛇行し、この蛇行にのって北極付近の強い寒気が、周期的に日本付近へ南下しています(図1)。

図1 大気の流れに関する模式図(左は昨冬で、右は今冬)
図1 大気の流れに関する模式図(左は昨冬で、右は今冬)

 例年であれば、北極付近にある極渦も南下して、カナダ北東部とオホーツク海北部にきています。

 日本付近には、これまで3回強い寒気が南下しています。

 1回目は昨年12月14日頃から南下したもので、日本海側を中心に記録的な大雪となり、新潟・群馬県境の関越自動車道では、16日夜からの交通障害で2000台以上の車が立ち往生しました。

 2回目は年末年始の強い寒気の南下で、西日本にも寒気がおりてきましたので、北日本の日本海側や北陸だけでなく、山陰地方まで大雪となりました。

 3回目の強い寒気の南下は、1月7日から8日で、東北の日本海側から北陸地方、西日本の日本海側のみならず、普段は雪の少ない九州でも雪が降りました。

 特に、北陸地方では短時間に強い雪が降り、初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されました。

 この「顕著な大雪に関する気象情報」は、正式運用は令和元年(2019年)11月13日からで、新潟県、富山県、石川県、福井県、山形県、福島県会津地方の6県が対象です。

 過去6時間に顕著な降雪が観測され、その後も大雪警報の発表基準を一定量上回ると思われる時に発表されます。

 「顕著な大雪に関する気象情報」発表のきっかけとなったのは、平成30年(2018年)2月に発生した福井県を中心とする北陸の大雪で、数年に一度の記録的な大雪への注意を速やかに呼びかけるものです。

 記録的短時間大雨情報の雪版ともいえるでしょう

 そして、「春一番もどき」の天気をはさみ、今度の日曜から週明けには、4回目の強い寒気が南下してくる予想です。

 図2は、全国の冬日(最低気温が0度未満)と真冬日(最高気温が0度未満)の観測地点数をグラフ化したものです。

図2 各地の冬日と真冬日の観測地点数
図2 各地の冬日と真冬日の観測地点数

 強い寒気が南下した1回目、2回目、3回目に対応して、冬日、真冬日が増えています。

 そして、1月8日は、冬日、真冬日とも、今冬最多を観測しています。

 冬日は気温を観測している919地点のうち862地点(全体の約94パーセント)、真冬日は509地点(約55パーセント)にも達しています。

 そして、「春一番もどき」をはさみ、4回目の強い寒気が南下してくる予想です。

「春一番もどき」の天気

 北日本(北海道・東北)と沖縄を除く全国で、立春から春分の間に、その年に初めて吹く南寄りの強い風を春一番と言い、気温が上昇して春近しを感じさせます。

 今年の立春は2月3日ですから、まだまだ先の話ですが、令和3年(2021年)1月16日(土)は、日本海北部を低気圧が発達しながら東進し、春一番のときと似た気象状況になる見込みです(図3)。

図3 予想天気図(左は1月16日9時、右は1月17日9時の予想)
図3 予想天気図(左は1月16日9時、右は1月17日9時の予想)

 気象庁が発表する「春一番」の定義は、地方によって多少の違いがありますが、関東地方の春一番は、次の事項を基本として総合的に判断して発表しています。

1)立春から春分までの期間に限る。

2)日本海に低気圧がある。低気圧が発達すればより理想的である。

3)関東地方に強い南風が吹き昇温する(具体的には東京の最大風速が毎秒8メートル以上、風向は南寄りの風で前日より気温が高い)。

 東京の1月16日の天気予報をみると、南西の風が毎秒6から9メートル、最高気温の予想は前日より11度も高く、4月中旬並みの19度です(図4)。

図4 東京の地域時系列予報(1月15日17時発表)
図4 東京の地域時系列予報(1月15日17時発表)

 つまり、立春からという条件以外は、「春一番」の基準をみたします。

 「春一番もどき」の天気です。

再び西高東低の冬型

 「春一番もどき」の天気は長続きしません。

 1月17日(日)からは、大陸からの高気圧が西日本に張り出し、日本付近は再び西高東低の気圧配置となって、強い寒気が南下してきます。

 日本に南下してくる寒気の目安として、上空約5500mの気温が使われます。

 上空約5500mの気温が氷点下30度なら強い寒気です。

 また、氷点下36度なら非常に強い寒気で、日本海側では大雪の可能性がある非常に強い寒気で、これが東北南部まで南下してきます(図5)。

図5 上空約5500mの気温分布予想(1月17日夜の予想)
図5 上空約5500mの気温分布予想(1月17日夜の予想)

 そして、北海道では氷点下42度以下の猛烈な寒気に覆われます。

 4回目の強い寒気は、3回目の強い寒気よりは南下しない見込みですが、3回目の寒気より長続きする可能性があります。

 各地とも、最新の気象情報の入手につとめ、警戒してください。

東京の冬日

 東京の最高気温と最低気温の推移をみると、1月16日の最高気温が突出して高いのですが、その後は平年より低くなる予報です(図6)。

図6 東京の最高気温と最低気温(1月16日から22日は気象庁、1月23日から31日はウェザーマップの予報)
図6 東京の最高気温と最低気温(1月16日から22日は気象庁、1月23日から31日はウェザーマップの予報)

 今冬は、すでに冬日が10日ありますが、1月20日頃には最低気温が氷点下を予報しており、一年で一番気温が低い2月もありますので、令和3年冬の冬日日数は、10日よりも多くなる見込みです。

 東京の冬日は、70年くらい前は一冬で50日位はありました。

 しかし、30年位前から一桁、しかも0日もあるなど、激減していました(図7)。

図7 東京の冬日日数の推移
図7 東京の冬日日数の推移

 近年で多かった3年前の冬の22日を抜くかもしれません。

タイトル画像、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図3、図4の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに著者作成。

図6の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに著者作成。

図7の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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