Yahoo!ニュース

「気球に乗って、どこででも」GoogleとFacebookがこだわる「地球全体からのインターネット」

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Photo: Google+ - Project Loon

サービスをいかに届けるか。この点に着目すると、企業のチャレンジの違いを理解しやすくなります。

AppleとGoogle・Facebookの違いは、自社の体験を届ける手段が、デバイスなのか、インターネットなのかという点。後者に分類されるネットの巨人2社が、地球全体、人類全員からのネット接続にこだわる理由がそこにあります。

Appleの体験はデバイスに宿る。だからたくさん売らないと!

Apple Watch Photo by @taromatsumura
Apple Watch Photo by @taromatsumura

もちろんAppleのiPhoneも、モバイルでのインターネット接続を前提としていますが、現状では、Appleのデバイスを売ることが、自社の体験を拡げる唯一の方法になります。そのため、Windows PCでも、Androidデバイスでも、Chromebookでもダメなんです。

その点で、iPhone 6/iPhone 6 Plusの発売は、Appleにとっての1つの成功といえる状況になってきました。ホリデーシーズンとなる10月から12月の3ヶ月で7000万台ともいわれる強力な予測となっていて、特に欧州の各国のセールスデータを見ると、Androidユーザーの取り込みを着実に実現しています。

しかも、2015年にリリースするiPhoneと組み合わせて使うApple Watchは、Fortuneによると10%が購入意向を示しており、17%は買うかもしれないと答えています。こうした調査は、UBSが予測する2015年のApple Watch販売の2400万台という数字も頷けます。

新デバイスは、iPhoneを使っている人を便利にするだけでは力不足で、iPhoneの魅力を高める役割を担わなければなりません。

2400万台という数字は「そこそこ売れた」というには大きすぎますが、iPhoneユーザーに持ってもらうだけではなく、新規ユーザー開拓とロイヤリティ向上という重要なミッションが課せられています。その役割を担えるか、注目です。

「気球に乗って、どこででも」

ユーザーに体験を届けるというテーマで考えると、GoogleとFacebookは「空」に目を向けつつあります。

この一文だけで、Appleの取り組みと直面する課題が、なんだか急に夢のない話に聞こえてくるのは、空を眺めるのが好きな私だけでしょうか。Googleは「Project Loon」を立ち上げ、LTE通信ができる風船を使って、地球上のあらゆるところでブロードバンド接続を実現しようというプロジェクトです。

上のビデオでは、「みんな」はみんなではない、というフレーズで、ネット接続のない地域にネットがもたらされることの社会的なメリットを紹介しています。もちろん、ビデオでアピールしていることも事実でしょう。一方で、Googleは、ネットが通っていない場所では無力であることも知っています。

ネット接続の平等性については、10月末に参加したW3Cの20周年カンファレンスでも指摘されましたが、インターネットによってサービスを届けている企業にとって、デバイスの価格が極端に下がってきた昨今においては、いかにネットを手元に届けるか、というラストワンマイルの手段が重要になっています。

Mark Zuckerberg氏「ネット接続は人々の権利」

Mark Zuckerberg氏 photo by @taromatsumura
Mark Zuckerberg氏 photo by @taromatsumura

Facebookの創業者、Mark Zuckerberg氏は、プレゼンテーションの折、自身の非営利団体であるInternet.orgを紹介しています。

現在インターネット接続がない世界の残り2/3をどうするか、というプロジェクト。こちらも、衛星やドローンを使った空からのネット接続を狙っており、無人飛行機の企業買収なども気になる動きも見せています。

賛同している企業はエリクソン、クアルコム、そしてサムスン。この顔ぶれを見れば、Facebookを含み、残り2/3の世界にネットが普及した際に利することを見越しての取り組みであることが分かります。ただ、社会活動と自社のビジネスを結びつけることは、社会活動をドライブする可能性が高く、批判に値しないと思います。

Googleにしても、Facebookにしても、インターネットが残りの世界の空から降ってくる際、同時に降らせるべきは教育だと考えています。そのための仕組み作りについては、また別の機会に。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

松村太郎の「情報通信文化論」

税込330円/月初月無料投稿頻度:月4回程度(不定期)

米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

松村太郎の最近の記事