X(旧ツイッター)、(予想通り)商標権侵害で訴えられる
イーロンマスク氏がツイッターからXへのブランド変更を行ったことによる商標登録上の課題については既に書きました(関連過去記事:「イーロンマスクは X を商標登録できるのか?」「MetaそしてMicrosoftが既に米国でXを商標登録済」)。Xというありがちな名前を選んでしまったことが、他社の類似先登録の存在により自社の商標登録が困難になるという課題に加えて、他社から商標権侵害訴訟を起こされるリスクが増すという課題ももたらすことは容易に予測されていたことでした。
その予想通り、フロリダの広告代理店X Social Media社が商標権侵害でX Corp(旧Twitter Inc.)を訴えました(参照記事)。問題の商標登録は、2018年9月4日に登録されている登録番号5554203号の”X SOCIALMEDIA”です。”SOCIALMEDIA”部分は権利放棄しており、実質的には”X”と同じです。指定役務は"Advertising service"です。訴状によると、X Social Media社は、2018年より、Facebook(Meta)上で法律事務所向けの広告代理店サービスを提供しており、X部分が目立つ形で商標として使用してきたとのことです(米国商標制度では権利行使の前提として権利者が実業で使用していることが求められるのでこの点は重要です)。この連邦商標法に基づく主張に加えてフロリダ州法の不正競争防止法に基づく主張等も行われています。請求内容は、X Corp.によるX商標の使用差止めと損害賠償ですが、損害賠償の具体的金額は訴状には記載されていません(米国の訴訟ではこれでもOKです)。
10月2日に訴状が提出されたばかりなので、この訴訟の行方がどうなるかは現時点では何とも言えません。X Social Media社が提供するサービスはソーシャルメディアそのものではなくソーシャルメディア上の広告代理店サービスであり、かつ、商標登録の指定役務も"Advertising service"なので、X Corp.側は、消費者の混同は生じていないことを主張するのかもしれません。もちろん、早期に金の力でカタを付ける可能性も十分あるでしょう。
同じくありがちな名前を選んでしまったMeta(Facebook)については、リブランディングの1年近く前からダミー会社を通じて類似商標登録を買いまくるという(強引ではあるものの)周到な準備をしていたことが明らかになっています(関連過去記事:「META Platforms(旧Facebook)、米国でMETA関連商標権を買いまくりか」「FacebookがMETA関連商標の買い取りに使ったダミー会社について調べてみた」「Meta Platforms(旧Facebook)による商標権大人買いの条件が一部明らかに」)。類似商標登録を買い取れば、自社の商標登録可能性および他社からの侵害訴訟回避の両面で意味があります。X(旧ツイッター)の場合は、あまりそういうことは考えずに行き当たりばったりでリブランディングしたのではないかと思えます(もし、類似商標登録買い取りを行っていたのであれば、X Social Media社の商標登録は買い取りの最優先候補になっていたであろうからです)。