台風11号が北海道上陸か 台風9号と10号は日本の南海上で相互作用(藤原の効果)
北海道へ接近の台風11号
台風11号は、東北太平洋沿岸部をかなり接近して北上し、北海道に上陸する可能性があります。北海道上陸となりますと、襟裳岬付近に上陸した台風7号に次ぐ、今年2回目ということになります。
北海道を襲う台風には、日本海大回りコース、日本海北上コース、道東接近コースという3つのコースがあります(図1)。このうち、道東接近コースと日本海大回りコースは雨台風、日本海北上コースは風台風になりやすい傾向があります。
北海道に停滞している前線にむかって、台風11号周辺の暖かく湿った空気が流れ込んでいるため、北海道ではすでに多量の雨が降っており、台風11号の接近・上陸でさらなる大雨の可能性があります。
台風9号と台風10号の相互作用(藤原の効果)
日本の南海上の台風9号と10号は、「藤原の効果」と呼ばれる相互作用をおこして複雑な動きをし、その後、上陸の可能性があります。
2つの渦の相互作用についての研究は、明治20代の北尾次郎の理論研究から始まっているとされていますが、これを岡田武松が発展させ、大正10年には藤原咲平が一般性を持った法則にまで拡大させています。のちに岡田武松は中央気象台長(現在の気象庁長官)となり、昭和16年の夏に、藤原咲平が岡田武松のあとを継いで中央気象台長になっています。
しかし、台風の動きに関して、“藤原の効果”が言われだしたのは、戦後、米軍の飛行機観測によって台風の位置をかなり正確に求めることができるようになってからです。
藤原咲平は、昭和22年4月20日の第一回参議院議員選挙に立候補し、全国的に「お天気博士」として著名なことから当選確実と見られていましたが、太平洋戦争時に中央気象台長として戦争協力をしていたということで投票日直前に公職追放となっています。
中央気象台職員は、藤原咲平の公職追放後もアメリカ軍(進駐軍)の指揮下で仕事をしていましたが、このようなことがあっても、たびたび「Fujiwhara Effect」という言葉を聞き、きちんと良い技術を認めているアメリカの姿勢に感銘をうけたと言われています。
藤原の効果は6つに分類されています(図2)。
1 相寄り型:一方の台風が極めて弱い場合、弱い台風は強い台風にまきこまれ急速に衰弱し、一つに融合する。
2 指向型:一方の台風の循環流が指向流と重なって、他の台風の動きを支配して自らは衰弱する。
3 追従型:初めは東西にならんだ2個の台風のうち、まず1個が先行し、その後を同じような経路を通って他の台風が追従する。
4 時間待ち型:発達しながら北西進している東側の台風が、北に位置するのを待って西側の台風も北上する。
5 同行型:2個の台風が並列して同じ方向に進む。
6 離反型:台風が同じ位の強さの場合に起き、一方は加速し北東へ、一方は減速して西へ進みます。
昭和60年の台風12号は、8月28日に台風14号と、8月30日には台風13号と「藤原の効果」を起こし、相手の台風との中間にある点のまわりを反時計回りに回転しています(図3)。
台風が複数あると予報誤差が大きくなる
台風が複数あるときは、藤原の効果により複雑な動きをします。
予報が非常に難しく、予報誤差が大きくなりがちです。台風が1個の場合に比べ2個ある場合の誤差は1割増し、3個ある場合は2割増しという調査も、過去にありました。
北海道を中心とした北日本では、台風11号の接近による大雨等に厳重な警戒が必要です。
また、東日本から西日本では、台風9号と10号の相互作用により複雑な動きをしたのち、上陸してくる可能性があります。常に最新の台風情報を入手し、早めに行動をするなどの対策が必要です。