日本海側は冬の嵐に警戒 暴風雨警報はないが暴風雪警報がある理由
台風のような雲
令和3年(2021年)1月29日は、日本海北部に強い寒気が南下したことで台風のような雲の渦巻きができました(タイトル画像参照)。
低気圧が日本海北部で急発達したためで、低気圧周辺で等圧線の間隔が非常に狭くなり、全国的に風が強くなりました(図1)。
このため、北日本と北陸地方では暴風雪警報が発表となり、東日本の
太平洋側から西日本でも風雪注意報や強風注意報が発表となっています(図2)。
この低気圧は、千島近海でさらに発達するため、北日本を中心に、1月30日にも等圧線の間隔が狭くなって強い風が吹く見込みです。
気象庁では、5日先までに警報を発表する可能性を「高」「中」の2段階で示した早期注意情報を発表しています(図3)。
これによると、1月30日は北日本の沿岸部を中心に暴風雪警報または暴風警報の可能性「高」となっていますが、今回は、暴風雪警報の可能性が「高」です。
また、大雪警報を発表する可能性は栃木県北部で「高」、山形県と福島県会津地方、長野県北部で「中」となっています。
最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。
暴風雪警報はあるが暴風雨警報はない
警報とは、重大な災害が起こるおそれのあるときに警戒を呼びかけて行う予報です。
また、注意報は、災害が起こるおそれのあるときに注意を呼びかけて行う予報です。
このため、暴風雪警報は、「雪を伴う暴風(暴風雪)」により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表し、「雪や雨を伴わない暴風」や「雨を伴う暴風」に対しては発表しません。
「雪や雨を伴わない暴風」のときは暴風警報の発表ですが、「雨を伴う暴風」のときも暴風警報の発表です。
暴風雨警報の発表はありません。
同様に、風雪注意報はありますが、風雨注意報はありません。
風雪と風雨は、災害という観点では全く違ったものであるからです。
このように、暴風警報や強風注意報に加え、暴風雪警報や風雪注意報があるのは、降雪による「ふぶき」だけでなく、風によって地面に積もっていた雪が舞いあがって視界が遮られる「地ふぶき」により、大きな災害が発生するからです。
なお、暴風雪警報が発表中に、雪によって大きな災害が発生するときは、暴風雪警報に加え、大雪警報が発表となります。
また、暴風雪警報が発表中に、雪によって災害が発生するときは、暴風雪警報に加え、大雪注意報が発表となります。
怖い地ふぶき
令和3年(2021年)1月19日11時50分頃、宮城県大崎市の東北道古川インターチェンジ付近で、大型トラックや乗用車などによる多重事故が発生しています。
1人が死亡、10人以上が負傷し、最大130台以上の車が立ち往生しました。
事故現場近くの大崎市古川では、1時間に1センチ以上という降雪があったのは6時までで、積雪は11センチに達していました。
そして、11時56分には最大瞬間風速が27.8メートルを観測しています(最大風速は19.2メートル)。
事故現場でも、似た状況と考えられます。
降雪はわずかでも、暴風にあおられた積雪が巻き上げられて地ふぶきが発生し、周囲が見えなくなるホワイトアウトが発生したとみられます。
暴風雪警報が発表されているときは、暴風だけでなく、地ふぶきにも警戒が必要です。
5回目の強い寒気の通過後
令和2年から3年(2020年から2021年)の冬は、前年の暖冬から一変し、寒冬となっています。
日本付近のジェット気流が大きく蛇行し、この蛇行にのって北極付近の強い寒気が、周期的に日本付近へ南下しているからで、これまで5回強い寒気が南下しています。
1回目は12月14日頃から、2回目は年末年始頃、3回目は1月7日頃から、4回目は1月16日頃からで、5回目が今回、1月29日頃からのものです。
そして、強い寒気が南下するたびに、各地の冬日(最低気温が0度未満)と真冬日(最高気温が0度未満)の観測地点数が増加しています(図4)。
冬日と真冬日の観測地点数からみると、3回目の強い寒気南下が今冬最強の寒気南下になるかもしれません。
5回目の強い寒気が通過したあと、しばらくは強い寒気の大きな南下はなさそうです。
東京の最高気温と最低気温の予報をみても、ともに平年値より高い日が続く予報です(図5)。
北日本や東日本の日本海側ではもう少し先になりそうですが、東日本の太平洋側から西日本では、着実に春の訪れが近づいています。
そして、2月2日は節分、2月3日は立春です。
タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。
図1、図2の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。
図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ資料をもとに著者作成。