Yahoo!ニュース

「オンライン授業9割」早大の秋学期も…学生の本音・願い・おカネのこと

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
「小中高は対面授業なのに…」という声も聞く(写真:Paylessimages/イメージマート)

新型コロナウィルスの影響で、対面式の講義ができず、オンライン授業になった大学は多い。「小中高は再開したのに、なぜ」という声も上がる。早稲田大は、春学期はすべてオンライン授業で、9月からの秋学期も9割はオンラインだという。授業や生活について、早稲田大4年の女子学生に聞いた。

〇動画視聴、理解度は高まる

春学期は、ずっとオンライン授業ですか?どんなやり方か、詳しく教えてください。

「4月~8月は、すべてオンライン授業でした。1日平均3コマ、週に12コマ取っていました。テストは9割がレポートでした。課題に必要な本も図書館が利用できなくて探せず、自分で買ったので、大変な出費です。他はオンラインの論文を活用しています。2月末から、図書館にも大学にも一歩も足を踏み入れていないですね。

オンライン授業は、3タイプあります。中でも動画視聴が一番多いです。合計60分ぐらいで、何本かに分けてあり、好きな時間に受けられるし、何度も見られるので、正直なところ、対面授業よりも理解度は高かったです。

他は、資料を読んでレポート提出とか、簡単な問題に答えるといった課題を、毎週出す先生もいます。あとは、双方向のZoom授業が講義全体の2割ぐらいです。100~200人が一斉に参加していて、聞いてメモをとって、レポートを提出しました。出席を取ったものは、なかったように思います」

〇質問・発言はハードル高く

オンライン授業で、コミュニケーションは取れましたか?

「連絡する手段はあるのですが、先生とのやりとりはないですね。Zoomでチャットもできますが…。参加しやすい雰囲気にしてくれた先生の授業では、チャットをしたこともありました。私はチャットの文面や名前が残るのが嫌で、心理的なハードルが高く、先生とのメールもやりとりが繰り返しになって大変なので、授業中にラフな形ならやりとりしたいと思っています。

学生同士のコミュニケーションは、ゼミ形式の授業以外は全くなかったです。ただ、対面授業の時も友達以外とはコミュニケーションは取らないので、そこまで気にならなかったです。

フィールドワークの講義では、4人ずつのグループに分かれて、Zoomで話し合いしました。別途時間を設けて、訪れるはずだった被災地の方に参加してもらって話を聞き、報告書を提出するという授業は楽しかったです」

「オンライン授業を受けて気づいたのは、先生たちとの雑談の時間が、全くなくなってしまったことです。私は、授業が始まる前に先生たちの小言や豆知識を聞くことや、授業後にたわいないことを話しかけにいくのが好きだったので。それができなくなってしまって、悲しかったです。先生によっては、オンライン授業の冒頭に学生のコメントを取り上げながら、面白いことを話してくれる人もいたので、そういう授業がもっと増えればいいなと思います」

〇リモートでインターン続ける

春学期の生活はどうでしたか。

「都内で一人暮らしをしていたのですが、オンライン授業が続いたため、実家に帰ろうと6月に決めて、夏に引っ越ししました。オンライン授業を受けるのに、一人暮らしの部屋のWi-Fiのスピードが遅くて、必要な時は実家に帰っていましたし。

4月〜6月は、実家に閉じ込められてしんどかったです。家族や犬と一緒に過ごしました。それ以外は、東京で中高の友達と会ったこともあり、普通に過ごしていました。

会社でのインターンは、続けています。リモートに対応している勤務先で、コロナ前と変わらず仕事はできました」

〇「なぜ対面はダメなの?」

周囲の学生の様子は?大学生は、サークルや飲み会など、行動範囲が広いですよね。

「飲食店などでアルバイトしている人は、バイトが全くなくなってしまって、お金の面が大変そうでした。大学からの給付金をもらっている人もいました。

課外活動をしないで、と注意を呼びかけるメールは、大学からよく来ていました。サークル活動をしている人は、活動できないのはもちろんのこと、新入生の勧誘もできなかったので大変そうでした。オンラインでサークルの勧誘や、Zoom合宿、オンライン飲み会をする人もいます。

個人的には、『なぜ、対面授業はだめなの?』と思います。大学の帰りに、飲み会をしてクラスターになったら…という心配ですか?飲み会をしたい学生は、すでにこっそりやっているのではないでしょうか。

実家に帰れない人もいます。こういう状況が長くなってきて、家賃や生活費はどうしているのか…。私は大学からそれほど遠くない実家があってよかったです。もともと友達が多いタイプでもなく、孤独でどうしようもないということもありません」

〇少人数・大教室で対面授業も

秋学期は、どのように過ごしますか。

「ゼミ形式の授業は、オフラインでやるとの説明がありました。どうしてオフラインとオンラインの授業を織り交ぜながら実施するのか、という説明もありました。9割はオンライン授業です。対面のものは、少人数にして大教室で実施するとのことです。秋学期の授業は、5~6コマをとっています。

インターンは、週4回続けていてリモートで仕事しています。4年生は、就職が決まっている人が多くて、このままほとんど大学に来ないで、卒業なんだろうなという気もします。新しい友達を作るチャンスは、ないです。卒業式もオンラインになるかもしれないですね」

「学費を返して」という意見もあります。

「学費に関しては、私は仕方ないと思っています。でも、親は『返還してほしいし、何に使われたか明細が知りたい』と言っています。私は4年生なので、授業やレポートとの向き合い加減がわかりますし、相談できる先生もいます。けれど、1年生は何もわからなくて大変でしょう。

来年は、大学院に進む予定です。この状況が続くと、大学院までオンラインになってしまうのでしょうか。対面で、気軽に先生と話せる日が来てほしいです」

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

なかのかおりの最近の記事