独立リーグチャンピオンシップ開幕、「力の群馬」が「技の香川」に辛勝
独立リーグが日本に発足して早13年。後発のルートインBCリーグがスタートした2007年から四国アイランドリーグplusとのチャンピオンシップが毎年行われている。当初は、先発のアイランドリーグがレベルの差を見せつけ、4連覇。2011年にBCリーグチャンピオン・石川ミリオンスターズがアイランドリーグチャンピオン・徳島インディゴソックスを3連勝で下し、初めて四国からチャンピオンフラッグを奪うと、今度はBCリーグ勢が3連覇を果たしリベンジ。ここ2年は両者1勝1敗で、ここまで11回のこのシリーズは、アイランドリーグの7勝4敗となっている。
今年のチャンピオンシップは、アイランドリーグ最多の5回の優勝を誇る香川オリーブガイナーズと独立リーグ随一の強力打線を誇る群馬ダイヤモンドペガサスの対戦となった。
記録的な長距離バス移動
チャンピオンシップ第1戦の会場となったのは、香川の本拠地、高松のレクザムスタジアム。群馬からは実に700キロの距離だ。しかし、独立リーグではいくら距離があっても新幹線や飛行機など使わない。この距離を延々、バス移動となる。ここまでのバス移動はアメリカのマイナーリーグでもなかなかない。「日本一」を決めるシリーズとあって、さすがに夜行バスで当日入りということはせず、群馬一行は、前日朝に敵地へ向けて出発、夕方には到着して宿舎で英気を養った。
いよいよシリーズ開幕
3連休の中日ということもあって、球場前には試合開始2時間前にはすでに熱心なファンが列を作っていた。群馬球団はこのシリーズのためにバスを借りきって応援ツアーを組んだという。試合前に到着、明日の第2戦まで応援し、夜行で帰るというまさに「弾丸ツアー」だが、20人ほどのダイヤモンドペガサス・フリークがアウェイゲームのスタンドから声援を送っていた。
試合前のベンチ裏では、群馬ナインが疲れも見せず試合の準備をしていた。
なんと言ってもこのチームの売りは打線だ。とくに3番井野口祐介(平成国際大)、4番カラバイヨ(元オリックス)の「ツインバズーカー」は今シーズンもそれぞれ23本、27本のホームランを放っている。BCリーグのレギュラーシーズン試合数は72。試合数が倍あるNPBに換算すれば、46本と54本。投手のレベルが違うと言えども、正直独立リーグのレベルをはるかに超えている。
その片方、カラバイヨに試合前再会した。
今年のホームラン数にも昨年の32本に及ばないということで、少々不満な様子。近年はフロリダに邸宅を構えているらしいが、家族の待つアメリカに帰る前に、あと数発打ってくれることを約束してくれた。
もう一方の井野口。BCリーグ創設から在籍するベテランだ。33歳になる今シーズンも打率.324をマークしている。「相手がわからないから」と、このシリーズに関しては控えめなコメントしか残さないが、近年言われている両リーグのレベルの差の縮小や逆転については、「そうですね。BCは球団数が増えた分、若干低くなったかもしれません。シーズン終わってみるとそうでもありませんでしたが」と、相変わらずBCリーグにとってアイランドリーグは超えるべき壁であることを語ってくれた。
午後6時半。10月ともなれば、すっかり夕闇に包まれている。両チームのメンバー紹介が終わると、試合は開始された。
==白熱の試合==
試合は、早速強打の群馬打線がチャンスをつかむ。初回いきなり先頭打者・青木颯(鶴見大)がツーベースで出塁すると、2番藤井一輝(平成国際大)が四球を選ぶ。香川は初回からいきなりノーアウト1、2塁で「ツインバズーカー」を迎えたのだが、3番井野口がこのチャンスで外角球を空振り三振。続くカラバイヨのセンターへの弾丸ライナーはあわやと思わせたが、センターのグラブに吸い込まれた。幸い5番富田光孝(立教大)がセンター前にはじき返し1点を先制したが、結局、群馬はこの回この1点に終わり、その後も、外野へのライナーゲッツーが2つなど、走塁のまずさもあってなかなか得点を積み上げることができなかった。
対する香川は、群馬に比べ打線の小粒感は否めなかったが、2回に四球を足掛かりに1点を挙げると、4回にはこの回先頭の4番加藤次郎(九産大)の四球の後、5番中村道太郎(日体大)がこの日、チーム初安打となるツーベースで逆転のランナーを迎え入れた。ここで群馬・平野監督は、先発の柿田兼章(拓殖大)を諦め、センテノにスイッチした。被安打はこのツーベース1本だけだったものの、4回ノーアウトまでで4四球とボールが高めに浮いていた柿田に試合後、平野監督も苦言を呈していた。
2番手のセンテノだが、150キロのストレートでグイグイ押すピッチングで香川打線をねじ伏せる。この日は、平野監督が驚くほど低めにボールが集まっていた。セットアッパーの頑張りに打線も応え、3、4番がだめなら俺たちがと、下位打線がこの夜は爆発。7回にラストバッター鹿沼のこの日チーム2本目のスリーベースで出塁すると、2番藤井のこの日2本目のヒットで勝ち越すと、次の8回には、途中出場の李福健(リ・ボッコン、國學院久我山高)が、本人曰く「入ってくれた」というレフトへのホームランでダメを押した。
試合は、結局4対2で群馬の先勝。「力の群馬、技の香川」の対戦で、香川が2点を追う8回、連続ヒットの後、3番松井聖(中部大)に代えて出した打席に立った岡村瑞希(クラーク記念国際高)のバントが、サードで封殺されるなど、「技」を見せることができなかったのが、敗因となった。
主砲が、ブレーキとなりながらも辛勝した群馬・平野監督だったが、意外にもこの試合を「ウチらしい」と表現した。
「ウチも走塁ミスやエラーが出た中、しのいでなんとか勝った。そういう意味では自分が目指す野球ができたと思う。香川もウチと似たチームという印象です。今日はそういう意味では、手探りの状態でやったんだけど、結果、勝ったことは大きい。とにかくミスをした方が負け」
この日は、3、4番、とくに井野口が4三振と大ブレーキになったが、香川に事前に研究されていたのでは、という質問をあっさりいなした。
「研究も何も、誰だってああいうバッターには外角低め投げるでしょう。僕だって投げますよ。それをポンポン手出すんだから。3、4番にはミーティングで厳しいこと言ったけど、僕は相手がベテランだろうが遠慮しない。まあ彼らもわかってくれるでしょう」
と、ツインバズーカーの奮起を促した。勝つには勝ったが、この2人がそろって無安打だったのは、第2戦の不安材料だろう。
最後にその二人の声を記しておく。
カラバイヨ
「まあ、結果が悪かったけど、初回のセンターへの打球も、8回の(センターライナーゲッツー)も当たりは良かったからね。知らないピッチャーだったんで、そういう中では悪くはなかったんじゃないかな。もう僕は、9シーズンも日本でやってるんだよ。大丈夫」
井野口
「最近は調子は悪くなかったんですけど、結果がすべてです。外角の球を手を出した。それだけ。内つかれて外というのはシーズンと同じ。気持ちを切り替えるだけです」
独立リーグチャンピオンシップ第2戦は、今日8日18時半より、レクザムボールパーク丸亀で行われる。
(写真は全て筆者撮影)