NASA版はやぶさ「OSIRIS-REx」の重要ミッション、小惑星ベンヌからのサンプルリターンとは?
2024年に入ってから、SLIMの月着陸やH3ロケットの打ち上げなど、宇宙イベントが目白押しになっていますね。
本記事では、2023年にアメリカが成功した小惑星ベンヌからのサンプルリターンミッション「OSIRIS-REx」をご紹介します。
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■OSIRIS-RExの成果が生命起源の解明に繋がる?
アメリカ版の「はやぶさ」である「OSIRIS-REx(オシリスレックス)」の目的は、ベンヌのサンプルを分析することで、生命の起源や太陽系の形成についての手がかりを得ることです。1999年に初めて発見されたベンヌは、直径約500メートルと小さいながらも、その表面には太陽系が形成された約46億年前の物質が保存されていると考えられています。ベンヌの有機物や鉱物は、地球上で生命が誕生するための材料となった可能性があるのです。
また、ベンヌのような小惑星には水や貴金属などの天然資源が含まれているとされ、これらは将来的に宇宙探査や資源開発のために利用される可能性があるのです。例えば、小惑星を月の周回軌道まで引っ張っていき、宇宙飛行士が貴金属を採取して地球に持ち帰るなどの計画が提案されています。オシリスレックスは、有人小惑星探査のための重要な準備として位置付けられているのです。もしかすると、将来はベンヌが宇宙飛行の中継基地になるかもしれませんね。
■OSIRIS-RExの機体を紹介!
それでは、OSIRIS-RExの詳しい説明に入ってい行きましょう。OSIRIS-RExは約2トン、太陽電池パドルを開くと約6メートルとなる探査機です。サンプル採取装置をはじめ、カメラや分光計などの観測機器を搭載しています。
OSIRIS-RExの名前の由来は、起源、分光スペクトル解析、資源の特定、セキュリティ、地表探査機の頭文字から構成されています。ちなみに「ベンヌ」 とは、エジプト神話に登場する不死鳥で、オシリスの魂という由来があります。
■OSIRIS-RExの打ち上げとエンジン性能
2016年、OSIRIS-RExはアトラスVロケットにより打ち上げられました。その後、太陽を一周した後に、地球の重力を利用したスイングバイを行い、順調に目標のベンヌへと航行しました。
ちなみに、皆さんも良くご存知のはやぶさはイオンエンジンを搭載していました。このイオンエンジンは力は非常に弱くて1円玉の重さ程度の力しか出せませんが、燃費がものすごく良くて、一般の化学エンジンと比べて燃料を10分の1に減らすことができます。つまり、時間はかかりますが効率良く加速できるエンジンなのです。
一方、OSIRIS-RExが搭載しているのは化学エンジンで、合計28個のスラスターで構成されています。化学エンジンはヒドラジンなどの燃料を使うことで、大きな推力を出すことができます。これにより、早く小惑星へ到着することができるようになります。ただ、イオンエンジンと比べると重量は重くなってしまうんですね。はやぶさ2は約600kgですから、2トンであるOSIRIS-RExは3倍以上の重さということになりますね。
そして、OSIRIS-RExは小惑星ベンヌへ到着・緊張のサンプル採取へと進んでいきます。ベンヌ到着後の詳細については次回の記事の後編にてご説明します、お楽しみに!
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